デジタルな時代だからこそ、生身の人間による「実演販売」は、最大の効果を生む最強スキル!? 実演販売士が語る独立ノウハウ

比江嶋亮/1975年宮崎県生まれ。
大手宅配便会社のコールセンターでクレーム処理の仕事に10年間携わり、管理職を経験。2008年に独立し、フリーランスの司会業、講師業、実演販売士として活動。2016年に株式会社モサクロを設立。2017年に地域の特産品のセレクトショップ「モサクロ市場」をオープンした。

――独立DATA――
33歳で独立
【開業資金/ゼロ円】

司会業も講師業も実演販売士も身体ひとつあればできる仕事であるため、開業資金はゼロ。ちなみに2016年に法人化した際にかかった費用は、行政書士に依頼した法人化費用20数万円と資本金の200万円となっている。

――事業内容――
株式会社モサクロ
集客や実演販売の企画立案・コンサルティングをはじめ、企画に応じて実演販売士やパフォーマーの派遣を請け負う。実演販売士のほかにマジシャン・似顔絵師・バルーンアート・獅子舞・狂言師など様々なパフォーマーと提携し、「マジック集客」といった独自の集客を展開。実演販売士でもある代表による「話し方講座」や「クレーム処理講座」といった各種講座も開催している。

なんでも手軽にモノが買える時代ですが、そのぶん競争が激化し、売り手は「集客」に頭を悩ませています。街頭キャンペーンもネット広告も効果が出ない……。そんなとき強みを発揮するのが、人に足を止めてもらい、巧みな話術とコミュニケーション術で「購買意欲」を高める「実演販売」です。今後、多くの仕事がAIに奪われるとされていますが、「実演販売」はずっと残っていきそう。それは、人間にしかできない“最強スキル”かもしれない。

「話す仕事」の原点は、10年間の「クレーム処理」。精神的にハードな仕事を楽しむことで、自分のベースが培われた

 子どもの頃は将来プロレスラーになろうと思ってました。その道に進むために高校の空手部に入ったんですけど、そこではじめて自分に根性がないことに気づきまして(笑)。スクワット千回なんてとてもできないですから、プロレス団体に入門できるわけがない。それからは特に夢も目標もなかったですね。

 高校卒業後すぐに上京したんですけど、夢や野望があったわけではなくて、このまま宮崎の田舎にいてはダメだという気持ちでした。地元にいるとずっと親元に居続けることになってしまうと思ったんです。上京後は職を転々としながら5年ほどフリーター生活をしてましたね。

 23歳のときに大手宅配便会社のクレーム処理の仕事に就いたんです。新人が入っても1カ月も持たず精神か肉体を病んで辞めていくという大変な仕事でしたね。僕も最初の半年は「なんで自分のミスでもないのに怒られるのか……」という葛藤を抱えていたんですけど、途中で「クレーム処理をいかに早くこなすか」というモードに切り替えたんです。そうすると「こんな面白い仕事はない」と思えるようになった。

 一番忙しかった時期は、朝6時15分の朝礼後、深夜2時、3時までひたすらクレーム処理の仕事をしてましたね。当然、日中に取る電話はすべてクレームで、朝っぱら怒られるわけです(苦笑)。自分なりに仕事を楽しむようにしないと、「辞めていった仲間たちみたいにメンタルがやられてしまう」と自衛の気持ちが働いていたのかもしれない。

 怒られたくないので、早く受話器を置きたいですよね。僕も最初の頃は「はい、わかりました。以後、気をつけます」といった平謝りの対応をしていたんですけど、途中から「私にすべて話してください。すべて解決してあげますから」というスタンスに変えたんです。そうすると、気持ちがすごく楽になった。クレームになってもそこから転がせる技術があって、「ちゃんと対応してくれた」と思ってもらえると、むしろ評価は上がるものなんです。

 入社8年目に管理職に昇進して、それからはヘビークレームを中心に対応するようになりました。部下が初期対応を誤って「上司を出せ」となることもザラにあったし、反社会的勢力や運送詐欺の疑いのあるクレームをジャッジして対応するわけです。だけど、管理職になってから「このままでは仕事で人生が終わってしまう……」と思うようになっていきました。

副業で司会の仕事をはじめ、独立後は司会業・講師業・実演販売士で活動。いずれも人からの誘いがきっかけだった

 会社員時代の後半から、副業で司会の仕事をするようになったんです。土日を使って結婚式や街のイベントの司会をするわけですが、平日は会社勤めなので休みもなく、睡眠時間も短いとなると頭が回らなくなってくるんですよね。しんどくなってぼーっとしてたら、妻が「もう辞めたら?」と言うんです。てっきり司会業を辞めることだと思ったら、会社のほうでした。「半年くらいなら私が食わせてあげるから」と妻が言ってくれたこともあって、退職することにしました。妻が背中を押してくれたから決断できたんです。

 もともと司会業のきっかけは、「結婚式の司会できるんじゃない?」と人から誘われたからなんです。同じように知り合いから講座を開くことを提案されて、試しにやってみたら意外とウケがよかった。それから司会業と並行して「話し方教室」や「クレーム処理講座」を開くようになりました。この頃から「自分のキャリアは全部お金にしよう」と思うようになりましたね。

 実演販売士の仕事もきっかけは知り合いの相談でした。急遽、実演販売士に欠員が出たことで代役を頼まれて、これもやってみたら意外とできたんです。クレーム処理も実演販売も相手の不満、もしくはニーズを引き出すという意味でつながる部分がある。司会業にしてもクレーム処理の経験が活きていて、もし自分がミスっても「謝ればなんとなかなる」と思えるから心に余裕があるんですよね。間違いなくクレーム処理の10年間が自分のベースになっていますね。

 司会業と実演販売は「人前で話す仕事」という点で一見似ていますが、最初は少し戸惑いましたね。司会の場合、自分自身が商品でもあるので、新郎新婦といった主役さえ立てれば僕が目立ってもいいわけです。一方、実演販売はあくまで商品が主役なので僕が目立ちすぎてはいけない。あくまで商品を買っていただくための実演販売士ですから。

 途中から実演販売に仕事の軸足が移っていきました。司会業は「これは僕じゃなくてもいい」と思うことがたびたびあったんですけど、実演販売は僕でなければ売れなかったものや、僕だからこそ数字を伸ばせたものがあって、そっちの喜びのほうが大きくなっていったんです。

実演販売は、最初の一人に足を止めてもらうために様々な工夫をする。そのテクニックは、実際にやりながら自分で身につけていった

 実演販売は人との距離の詰め方が大事です。物理的な距離とメンタルな距離があるんですけど、まず足を止めてもらうための工夫をします。業界用語で「空打ち」というんですけど、たとえお客さんが一人もいなくても商品紹介を始める。そうすると「何をやってるんだろう?」と気になりますよね。そして人が通りかかったら、商品が飲み物なら「飲んでみません?」と話しかける。そうするとコップを受けとろうとするので物理的な距離が縮まるんです。

 そして飲み物を注ぎながら、いろいろ話しかけるわけです。そのときは商品と関係なく話題はなんでもいい。たとえば「プロレスが好きなんですか?」「僕も大好きなんですよ」というふうに会話をすることでメンタルの距離を詰めていくわけです。

 最初の一人に足を止めてもらうことが重要です。本来は5分の商品説明で済むところを、最初の一人には10分くらいかけて説明します。そうすると、その人が呼び水になってどんどん人が集まってきます。誰しも「買わされるんじゃないか?」と警戒して最初の一人にはなりたがらないものですよね。だから味見や試飲のイベントという入口にして、最初に「買わなくてもいいです」と伝えます。こうしたテクニックは誰かに教えてもらったわけではなく、やりながら身につけていきましたね。

 実演販売や司会の仕事は土日に集中します。ギャラがいいので収入的にも余裕で、シャレでよく「週休5日制」と言ってましたね(笑)。もともと夢や野望があるタイプでもなく、「週休5日制の暮らしをずっと続けられたらいいな」と思っていた自分が、なぜ法人化してお正月休みもないくらい忙しくしているのか? 自分でも疑問に思いますよ(笑)。

 その経緯としては、現場でいいパフォーマンスをしていると、他のメーカーさんから「うちでもお願いできませんか?」と声がかかるわけです。だけど、急に依頼されても1カ月先までスケジュールが埋まっているので請けられない。そこで「仕事が流れてしまうのももったいない」と思って、筋が良さそうな友人に実演販売の研修をして、その案件に行ってもらうようにしました。

 こうして僕と友人の2ラインになり、そこから3ライン、4ラインと実演販売を頼める人を少しずつ増やしていきました。それが20ラインくらいになったとき、さすがに一人でマネジメントするのが限界になってきた。マネジメント料で収入が増えたこともあって法人化することにしました。こうして2016年に株式会社モサクロを立ち上げたんです。

マジックや似顔絵による、これまでにない集客法を考案。独立後は自分でアイデアを考えて企画を実行する働き方に変わった

 モサクロの事業は、集客から販売につなげるお手伝いになります。フリーランスのときは依頼された現場に直接行くだけでしたが、今は企画会議の段階から参加してコンサルティングにも近い仕事になってきていますね。たとえば「今度、こういう商品(サービス)を売りたい」と広告代理店やメーカーで企画会議があると、「アイデアを出してほしい」ということで僕に声がかかるわけです。

 実演販売だけでなく、マジシャンによる「マジック集客」という新しい集客法を考案したりもしていて、他には似顔絵師、バルーンアート、獅子舞、狂言師といったさまざまなパフォーマーと提携しています。逆に実演販売士にマジックやバルーンアートを覚えてもらったりもしますね。実演販売士の中には普段は芸人やラッパーという人もいて、仕事を通して対人スキルが鍛えられて、「ライブパフォーマンスが良くなった」と喜んでくれています。

 お客さんが座った状態で接客することを業界用語で「着座」といいます。この状態で話を聞いてもらうと購買意欲が高まるんです。福引の街頭キャンペーンを開催したりして、いかに「着座」してもらうかを多くの企業が頭を悩ませているものですが、それも限界になってきている。モサクロの場合、マジシャンや似顔絵師といったパフォーマーの力によって、最初から「着座」の状態が作れるので、重宝されていますね。

 会社員のときは労働の対価として給料をもらっているだけで、自分で何かを企てて実行するという発想がまったくなかった。独立したことで働き方が変わりましたね。たとえば司会の仕事で1日5万円のギャラでは物足りなかったとします。いかに単価を上げるかというと、そこには付加価値を付けるアイデアが必要です。

 だけど、最初はまったくアイデアが思い浮かばなかった。なぜなら考えたことがなかったからです。アイデアを出すためには、情報収集をしてインプットしながら、常に考え続けることが必要です。そうすると自ずとアイデアが生まれてきて、周辺にある他のお仕事にまで範囲を広げられるようになってきた。まさにこれの繰り返しで、パフォーマーによる集客という今の事業形態ができてきたように思いますね。

 夢や野望があるわけでもないのに、なぜこんなに忙しくしてるんだろう?とたまに考えるんですよね。今のところ僕の中の答えは「生きる/働く」ということが同義で、仕事以上に快楽を得られるものがない。よく芸人さんが「お金や名誉より、お客さんの拍手が何より」ということを言いますけど、実演販売も似たところがある。僕がオススメした商品がどんどん売れて、売切れたりすると本当に快感で、中毒性がある仕事なんですよね。

実演販売士 独立ノウハウ集

独立前

「ネガティブ」な評価を「ポジティブ」な評価に変えるべし

10年間に渡ってクレーム処理の仕事をしてきた経験を活かし、比江嶋さんは「クレーム処理講座」を開催している。今の時代はネットの口コミ評価や炎上リスクがあるため、クレームを恐れて企業が二の足を踏んでいることが多いという。しかし、長年クレーム処理に携わってきた比江嶋さんからすると、たとえクレームになっても、逆に評価を上げる技術があるという。クレームの初期対応を怠ると評価がガタ落ちになるものだが、しっかり対応して「気持ちをくんでくれた」となるとむしろ評価は上がるものなのだ。

人からの仕事の誘いには、乗っかってみるべし

司会業も講師業も実演販売の仕事も、「できるんじゃない?」と人から誘われたことがきっかけだった。そこには、「この人は向いていそうだ」という客観的な判断がある。未経験だからと自分で「できる/できない」を判断するのではなく、ときには人の判断に身を委ねてみてもいいだろう。比江嶋さんはいずれも「できます」と即答し、実際にやってみると「意外とできる」ということが多かった。こうして司会業や実演販売士の道が拓けたこともあり、比江嶋さんはたとえ未経験者でも筋が良さそうな人には実演販売士の仕事を誘うようにしている。

会社勤めを経験して、「組織論」を学ぶべし

大企業で組織論を学べたことが比江嶋さんの財産になっている。個人であれ法人であれ、独立後は組織を相手に仕事をすることが増えてくる。そのとき組織の論理を知っていることが活きてくるのだ。たとえば決定権を持つのは組織の上層部の人間になるので、組織の誰を立てるべきなのか、部下は上司にどのように報告したいと考えているのか。比江嶋さんはそこまで考えて企画を提案するという。そうすると仕事が受注できる確率は一気に上がるそうだ。

独立後

単価は「下げる」のではなく、「上げる」べし

独立後に仕事を軌道に乗せていくために、より多くの仕事を取りたいと誰しも考える。そうすると、単価を下げてでも仕事を得ようとしがちだが、比江嶋さんは逆に「単価アップ」を念頭に置いて頭をひねった。たとえば結婚式の司会の場合、新郎新婦との事前打ち合わせがある。そこで「何か困ったことはないですか?」と聞くようにし、「映像の作り方がわからない」という話が出れば自分が請け負うようにし、「保険を見直したい」という話が出れば知人を紹介してマージンと得る。こうして仕事の範囲を広げることで、単価を上げていったのだ。

販売実績を作り、業界内のランクを上げるべし

実演販売士の仕事は販売実績のランクによって収入もピンキリだそうだ。1日のギャラが決まっている契約もあれば、売れた分だけ収入が上がる歩合制もある。テレビショッピングの実演販売の場合、売上の数%という契約もあるそうだ。億単位で売れる世界なので、数%といっても相当な金額になる。ただし、これはテレビ特有のレアな仕事であり、一般的には家電量販店、デパート、ショッピングモールなどで実演販売を行うことが多い。それでも普通の仕事に比べてかなりギャラは高いようだ。

実演販売は「オススメのモノを売る」最強スキル

基本的に実演販売の仕事は、企業や広告代理店の依頼を受けて商品を売る。必ずしも自分がいいと思っていなくても「売る」のが仕事だ。2017年に比江嶋さんは「モサクロ市場」という地方の特産品を販売するセレクトショップを代々木にオープンした。これは「日本全国を回る実演販売士が本当に惚れ込んだ商品を売る」というコンセプトで、いわば販売のスペシャリストと売りたい商品が合致した最強の組み合わせだ。店頭やネットで販売するだけでなく、デパートの特産品フェアで実演販売をしている。

取材・文●大寺 明

実演販売界に革命児現る!
株式会社モサクロ

商品やサービスを大々的に売り出したいけれど、
「数字が伸びない……」
「企画が浮かばない……」
そんなお悩みをお持ちのご担当者様は、
ぜひ一度、モサクロにご相談ください。

モサクロは通信業界を中心に多くの実績を重ね、
実際に業界初となる数字を何度も叩き出しております!
その評判が評判を呼び、現在では多方面からのご依頼・ご相談をいただいております。

「実演販売」と言っても、そのスタイルは実演販売士によってさまざま。
モサクロでは企画段階からご相談いただくことで、
案件ごとに販売方法を模索・考察し、最適なご提案をいたします。

実演販売のみならず、マジシャンを使った「マジック集客」や
似顔絵師、バルーンアート、狂言師、獅子舞による集客など、
ユニークな集客のアイデアをご提案いたします!