ファーストフード感覚で入れる地域密着型ネイルサロンが語る独立ノウハウ

家村真由美(いえむら・まゆみ)
1988年茨城県石岡市生まれ。神田外語学院卒業。横浜市の貿易会社の事務職として5年間勤務した後、2014年4月に地元の石岡市にネイルサロン「爪家SOUYA」をオープン

IMAG0942_1_1_125歳で独立
【独立資金】計35万円
・ジェルネイル用LEDライト 2万円
・ネイル商材 10万円
・マッサージチェア 20万円
・マッサージチェア加工代 2万円
・内装用資材代 1万円

【資格】
・ネイリスト検定1級
・JNAジェルネイル検定上級
・衛生管理者

爪家SOUYA
開業:2014年4月
個人事業主
地域密着型のネイルサロンとして、働く女性、主婦、学生が通いやすい
格安のネイルメニューを提供。送迎と出張ネイルにも応じている。

女性が独立しやすい仕事として、「ネイリスト」に関する広告をよく目にする。その多くはネイルの資格取得スクールや開業支援業者によるものだが、今回取材したネイリストの家村さんは、スクールには通わず独学で資格を取得し、開業資金もかなりミニマムに抑えたという。東京でネイルサロン経営もいいけれど、地元で地域密着型のネイルサロンを開くのもいいかも。

ネイルの資格はスクールに通わなくても取得できる。あとは、とにかく練習あるのみです

去年の夏まで5年ほど貿易会社の事務をしていたんです。でも、元々やりたかった仕事ではなかったので、「このまま続けたとしても何が残るのかな……」と思いはじめた。もし突然リストラされるようなことがあっても、手に職があるわけでもないので、私には何も残らない。「先が見えてきた」という感じでしたね。そう考えたとき、「やっぱり自分で何かしないと」と思いはじめた。だから、「ネイルが好き」という理由で独立したわけではないんです。

なぜネイリストを選んだかというと、ずっと続けられる仕事だと思ったから。もし結婚して子どもが出来ても、旦那さんが転職・転勤することになっても、ネイリストなら場所を選ばずに出来る。手が動かなくなるまで何歳になっても続けられる仕事だと考えたんです。エステサロンだと沢山の設備が必要なので相当な開業費用がかかりますけど、ネイルサロンなら初期費用がそれほどかからないというのもありました。

一般的には、ネイリスト養成スクールに3年くらい通い、その間に資格を取得して、ネイルサロンに就職してから独立することが多いんですが、私の場合は完全に独学です。資格はスクールに通わなくても取得できるものなんですよ。ただし、情報を集めるのが難しかった。「ネイリスト検定 合格方法」と検索をかけて過去問を探したり、ネイリスト協会が出している本を買って勉強しましたね。セミナーに出たり、ネイルサロンに客として行って実際に技術を見て勉強したりもしました。後はとにかく練習あるのみです。練習では男の人の手も借りましたね(笑)。

ネイルサロンは資格がなくても開業できます。実際、通信講座で勉強しただけでネイリストになる人も沢山いるんですが、クレームや爪の病気といった問題が起きたとき、それだと対処できないんですね。資格が絶対に必要なわけではないですけど、私はお客様に安心していただきたいので、「ネイリスト検定1級」「ジェルネイル検定上級」「衛生管理士」の資格をとりました。中でもジェルネイル検定上級は難しかったですね。爪の病気や指の骨についても勉強しなければいけなくて、会社を辞めると決めてからは仕事中に隠れて勉強をしてました。ほとんどネイルのことしか考えてなかったです(笑)。

ファーストフード感覚で気軽に行けて、しかも安い庶民的なネイルサロンを地元に作りたかった

RIMG0072会社勤めをしながら土日は都内のネイルサロンで2年間ほどアルバイトをしていました。でも、ネイリストとして都内で就職しようとは思わなかったです。なぜかというと、自分が働きたいと思えるサロンが都内にはなかった。ネイルサロンというと、ちょっと敷居が高いイメージがありますよね。予約が必要だったりして入りづらい。私は「ちょっとマックへ行ってくる」みたいなファーストフード感覚で行けるサロンで働きたかったんです、そうしたサロンが見当たらないので、「自分で作ろう」と思ったとき、生まれ育った故郷への恩返しじゃないですけど、やっぱり地元の石岡市で開業しようと思いました。

「失敗するなら若いうちがいい」と父から教えられてきたんです。うちの父は若いうちに独立して会社を営んでいて、兄も地元でカーショップを営んでいます。兄のお店の一角を無料で貸してもらえることになって、開業資金のリスクが少ないこともあって踏ん切りがつきましたね。

与えられた環境で働く従業員とは違って、内装からメニュー料金の設定まで、とにかくやることが沢山あって、最初はどこから手をつけていいのかわからない状態でした。でも、兄の友人に内装業の人がいて無償で手伝ってくれたり、周りの人に助けられましたね。内装費は資材代の1万円くらいで済んで、正規で5万円くらいするジェルネイル用のLEDライトを問屋で2万円くらいで購入したり、開業資金はかなり抑えられました。そのかわり、マッサージチェアに奮発しましたね。

メニューをわかりやすくして、他店よりもかなり安くしたいと考えました。具体的には「一色塗り」「グラデーション」「フレンチ」など5つのコースだけにして、アートやストーンなど100円、210円、500円という3種類のサイドメニューを選んでもらうかたちです。コース料金とサイドメニュー料金を合計するだけなので、ファーストフード感覚でパッと見てすぐに値段がわかりますよね。私の地元はせっかちな人が多いので、とにかくわかりやすくして、お客さんを待たせたくなかったんです。

都心とは客層が違い、「人生初ネイル」という人も。地元ならではの「口コミ」で広げていきたい

私が知る限り、石岡市内にあるネイルサロンは3軒くらいです。やはり都内とはネイルへの関心も違っていて、あまり需要がないというのが実際のところです。生まれ育った地元ということもあって、大々的に宣伝することは控えているんですが、地元だからこその口コミで広がっていけばいいな、と思っています。

たとえば、兄のカーショップのお客さんが、奥さんや彼女に紹介してくれたり、私のお客さんが兄のカーショップのお客さんになったり、相乗効果があればいいですよね。実際、オイル交換をしている間に、「彼女のネイルをしてほしい」といったことがあったりして、自分でもビックリしています。自分が言うのもおかしいですけど、ネイルに興味がある人が田舎にいることが意外でした。それこそ、「人生初ネイル」という方もいらっしゃいます。今はその動向を見ながら、手探りで合わせていこうとしているところですね。

お客さんはほとんどがリピーターです。この辺りは、若くして子どもがいる主婦の方や、仕事を持っているOLさんが多いので、静かな時間を過ごしてもらえるように、お店には一人だけしかお客さんを入れないようにしていますね。ジェルネイルをしに来てくれたお客さんには無料のマッサージもしています。

お店の場所が駅チカでないのがデメリットですが、この辺りは車社会なので、国道6号線近くに立地しているのがメリットです。お子さんがまだ小さくて外出できないといったお客さんや、時間がなくて来られないといったお客さんに対しては、出張ネイルもやっています。都心だと駐車スペースがなくて車で行くことが難しいですけど、ここら辺だと駐車スペースに余裕があるんですよね。

独立してあらためて思ったことは、やっぱりすべての面でモチベーションが違います。やったらやった分だけ自分に返ってきますし、やらなければやらなかった分だけ、その結果も明らかですよね。なにしろ一人だし、まだまだ経験も浅いのでプレッシャーや不安もありますけど、「やんなきゃいけない」という気持ちの方が今は強いですね。

「ネイルが好き」だけでは務まらない。癒しを求めるお客様の“心のケア”が大切になってくる

RIMG0069 独立して良かったことは、自分がやりたいデザインが出来るようになったことです。私はアート(※ネイルに様々な装飾や模様を施すこと)をするのが好きなんですが、以前にネイルサロンでバイトをしていた頃は、あまり冒険しない客層ということもあって、デザインがだいたい決まっていたんです。地元の石岡ではアートをするサロンが少ないので、今は細かいアートが出来ることを売りにしていますね。

自分がアートに凝りはじめていることについて、あらためて「なんでだろう?」と考えてみると、やっぱりお父さんの影響が大きいと思う。父は昔、絵描きだったんですね。さすがに需要が少ないので今は趣味程度ですけど、一時期はケータイの裏にペイントしたり、エアブラシでデコトラに女優さんの似顔絵を描いたり、画力を活かした仕事を請けていました。お父さんの知り合いが見たら、自分がアートをしている姿と父の姿が重なって見えるかもしれない。

でも、「ネイルが好き」という理由で独立を考えている人がいたら、「やめておいた方がいい」と言うと思います(笑)。なぜかというと、ただネイルをすればいいというものでもなくて、オフ(ネイルを除去すること)やアフターケアなど全て自分がやらなくてはいけないので、けっこう責任重大な仕事だと思うからです。

お客さんは癒されに来ているという面もあるので、お母さんになったような大らかな気持ちで、どんな話も受け止めてあげなくちゃいけない。単に「ネイルが好き」というだけでは務まらない面もあるので、逆にネイルが嫌いになりかねないと思います。それだったらお客さんとしてネイルを楽しんでいた方がいいと思いますね。

初対面でいきなり手に触れる仕事って他にないですよね。男女でも付き合わないと手なんて握らないですし、手と手ってすごく敏感な部分じゃないですか。お客さんに安心してもらうためにも、会話でリラックスさせてあげることが大切なんです。だから、ある程度は社会を経験して、会話の引き出しが豊富になってからネイリストの仕事に就いた方がいいと思いますね。

ネイリストが語るノウハウ集

独立前にするべきこと

スキル以外の部分が実は重要

家村さんがアルバイトをしていた都内のネイルサロンは、オーナーと家村さんの二人だけだったため、技術面以外にも広告の集客法やサロンの経営面を学べたことが大きい。一方、接客面では貿易会社勤務の経験が役立っている。先輩から敬語の使い方や仕事の心がまえといった年功序列の礼儀を厳しく指導され、今では接客のコミュニケーションに活かされている。

Excel、Word、HTMLを習得すべし

前職の事務職でExcelやWordの使い方をマスターしていたことが、独立後、収支計算など様々な面で役に立っている。また、家村さんは時間がかかるものの自分でホームページを作れるくらいのHTMLの知識も持っている。こうしたスキルを持っていると、外注に出さずに済んでコストカットになるばかりか、いざとなれば、副業で収入を得ることも可能だ。

資格でお客の安心を得るべし

資格がなくても開業できる商売だからこそ、むしろ資格取得が大切。世間には技術が未熟だったり、衛生管理の知識もないまま営業しているネイリストも多く、トラブルが頻発しているのだ。資格という一定の基準を満たすことで、お客の安心を買っているのだと考えよう。スクールに通うのが順当だが、家村さんのように独学であっても、きちんと勉強すれば問題はない。

独立後にするべきこと

東京の流行をチェックすべし

ネイルサロンは流行に敏感であることが求められる業種だ。家村さんは都内のネイルサロンで働いていた頃から付き合いがあるネイリストと連絡をとり合って話を聞いたり、ネイルのイベントに出るなどして、常に流行りのデザインや人気筋のネイルの最新情報を取り入れている。東京で流行っているものは、間を置いて必ず地方にも流れてくるからだ。

自営業は「自己管理」が大切

会社勤めは「9時5時」といった生活リズムが自然と出来てくるが、自営業になると、定時といったものがないため、生活リズムを自己管理しなければいけない。また、平日と休日でお客の入りも変わってくるので、うまく調整してお客を取りこぼさないようにするスケジューリングも大切。時間配分も体調管理も「自分がしっかりしないといけない」のだ。

衛生面に気をつけるべし

ネイルサロンについて、国民生活センターや消費生活センターにもっとも多く寄せられる苦情が、施術後、爪にカビ(※正確には緑色をしている緑膿菌という菌の繁殖による爪の変色)が生えるといった衛生面のトラブルだ。こうした経験をしたお客がネイルから離れてしまうと、業界的にも大打撃。そのため、家村さんは衛生管理者の資格を取得し、爪の病気について説明したり、使い捨てのヤスリを使うなど、最大限の注意を払っている。

取材・文●大寺 明

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指先のセラピーサロン茨城 爪家 SOUYA
安心の純国産ジェルを使用し、たしかなネイル知識を持つサロン衛生管理士が担当。リクライニングマッサージチェアでネイル中も癒され、さらにハンドマッサージ付き。新規のお客様は、次回ジェル除去無料。痛ネイル、ゆるキャラ、ご当地もの、アニメキャラなどアートも多彩。送迎、出張あり。
茨城県かすみがうら市市川425-3
営業時間10:00~(当日最終受付12:00まで)
不定休