「勉強嫌いの子ども」を成績アップさせる女性プロ家庭教師が語る独立ノウハウ

佐々木 恵(ささき・めぐみ)
1987年神奈川県生まれ。大学時代は経営学部で会計を学び、卒業後、コンサルティング会社に入社。広報宣伝に携わった後、2013年に横浜市唯一の女性プロ家庭教師として独立。著書に『うちの子なんとかなりませんか? 勉強嫌いを克服して30点上げる7つの方法』がある。

puro_02<独立データ>
25歳で独立
【独立資金】10万円
・パソコン5万円
・タブレット端末3万円
・会計ソフト2万円

【事業内容】
家庭教師のさくら
開業:2013年4月
個人事業主
二俣川(横浜市旭区)を中心に横浜市、川崎市にて、中学生女子の数学と英語の家庭教師を行う

大学生アルバイトの定番である家庭教師。その後、家庭教師や塾講師の大手業者に就職してから独立する人は多い。しかし、横浜を中心としたプロ家庭教師の佐々木恵さんは、コンサルティング会社から独立した異色の経歴の持ち主だ。ビジネスの世界で培った経験が、家庭教師の仕事に活かされていることはあるだろうか? 勉強嫌いの子を持つすべての親御さん必見です!

手に職をつけ、自分の看板で勝負したい。コンサルティング会社からプロ家庭教師に異色の独立

元々、大学時代の4年間に大手の塾講師をしていたんです。補習塾だったので、先生の目の前で寝てしまったり、平気で宿題をやってこない勉強嫌いの子が多かったんですね。そういう子たちを持ち上げて、やる気を引き出すコツをそこで学びました。人の成長が目の前で見えて仕事のやりがいもあったので、一時は大手塾への就職も考えたんですが、せっかくの機会なのでしっかり就活をして、会社で社会人として研さんしたいと思い直したんです。

裕福な家庭ではなかったので、私を私立大学まで卒業させることに対して、親は非常に苦労してきたと思います。「手に職をつけなさい」と母がたびたび言っていたので、私もそれを目標にしていました。そう考えたとき、意識の高い方が多い会社に入りたいと考えるようになって、思い浮かんだのがコンサルティング会社だったんです。入社後は広報宣伝に配属され、社会人としての礼儀作法からHPの管理や集客法といった多くのことを学びましたね。

実はコンサルティング会社を辞める1年ほど前から、休日に近所の子どもたちに勉強を教えていました。そのときの親御さんが地元で顔の広い方で、お客様をどんどん紹介してくれたんです。広報も好きな仕事だったので、どちらも全力投球で取り組んでいるうちに体調を崩してしまって……。どちらか一つを選択して頑張らないと、どちらも中途半端で「手に職」どころではなくなってしまう。そこで自分に問いかけたところ、私にはやはり生徒さんの方が大事だったんです。

会社の看板で勝負するのではなく、「いつかは独立して自分の看板で何かをやりたい」という気持ちが以前から強くあったことも後押ししましたね。実際に会社を辞めたときは、友だちにビックリされました(笑)。大手の家庭教師業者や学習塾に勤めている方が独立することは多いですけど、異業種からの独立はあまり聞いたことがない。自分でもかなり異色だと思います。でも、だからこそ業界の常識にとらわれていない。それが自分の強味だと思っていますね。

退職後の半年間は独立するための準備期間にあてました。家庭教師の宣伝と窓口となるブログの立ち上げをしていたんですが、ブログをHPっぽくカスタマイズする作業にすごく労力がかかりましたね。その他はひたすら記事作成です。家庭教師は事務所も必要なく、特に大きく投資するような事業でもないので、小さく生んで大きく育てたいと思いました。独立費用はパソコンとタブレット端末の購入代くらいで、あとは生徒さんに合わせて教材をその都度、購入する程度です。今はネットに無料の教材が沢山あるので、それも有効活用していますね。

勉強嫌い専門の家庭教師とは!? 「やればできる」という経験が、大人になったときに自信を作る

puro_3今の時代は、家庭教師を頼む方が二極化しています。まず「子どもを難関の有名大学に入れたい」という親御さんですよね。もう一方は、「子どもがまったく勉強しなくて困っている」という親御さんです。私が専門としているのは後者です。多くのプロ家庭教師が有名大学の進学実績を提示していますが、私の場合はまた別の話になってくる。当然、前者が家庭教師の世界では花形で、「難関校に入れるためならいくらでも払う」といった親御さんも多いんです。収入を求めるなら前者を目指した方がいいと思います。でも、私はそちらの道は絶対に選びたくなかった。

私は勉強が苦手な中学生女子に数学をメインに教えているんですが、5段階評価で1や2が付いてしまう子どもでも、教え方次第で必ず伸びるものなんです。子どもの頃に勉強ができないと、大人になってから消極的な性格になってしまいがちです。そうした理由から、将来の職業の可能性が狭められてしまったり、昇進テストを諦めてしまうことが実際に多いと思うんです。

今の時代は、女性であっても仕事をしていくための自信が必要だと考えています。その自信がどこから来るかというと、やはり子どもの頃に「やればできる」という経験があることだと思うんですね。勉強は自信をつけるための格好のツールなんです。だからこそ中学生のうちに勉強嫌いを克服して、自信と夢を与えることを教育理念にしています。

というのも、私自身が子どもの頃に勉強がすごく苦手だったからなんです。中3のときに塾で良い先生に出会うことができたおかげで、勉強が得意になったという経験があるんですね。だからこそ「この子はここで躓いているんだろうな」というのが自身の経験を通して見えるので、説明を工夫することができるんです。勉強が嫌いな子の気持ちを理解することにかけては、誰にも負けない自信があります。

実際、私に依頼される方は、「他の家庭教師に頼んだものの上手くいかなかった」というケースが多いんです。多くの家庭教師業者が、高学歴の学生アルバイトを派遣しているわけですが、そうした学生さんは、勉強がすぐにできてしまう人たちですよね。だから、勉強ができない子の気持ちがわからないものなんです。そのため「なんでできないんだ!?」となってしまう。そうした指導をされることで、もっと勉強嫌いになってしまうこともあるんです。

宣伝はブログとメルマガのみ。会社広報の経験が、信頼の獲得や集客法に活かされている

puro_4家庭教師の仕事は資格が必要なわけでもなく、なろうと思えば誰でもなれるものです。だから、中にはいい加減な人や、頭は良いけど人間的に問題がある人もいるかもしれない。家に招き入れるわけですから、そうした家庭教師にあたってしまうと悲劇ですよね。だから、私は家庭教師として信頼できる仕事をしていることをブログの文章でアピールすることにしています。

家庭教師の多くの方がブログをやられていますが、プライベートの日記帳のようになっていたりして、それではお客様は集まらないと思ってしまうんです。それでいて顔出しもしていなかったりする。私の場合は、ブログは集客用と決めているので、パーソナルなことは一切書かず、コンセプトを明確にして教育理念を提示することにしています。

ブログが窓口となっているので、そこからメールで依頼されるんですが、その後は親御さんと30分ほど面談をし、さらに1時間の体験授業(無料)をしています。そこで判断していただいて、「断っていただいてもかまいません」というかたちをとっているんですが、ほとんどの方はメールと電話のやりとりで信頼してくださっているようで、今のところ成約率100%です。前職のコンサルティング会社でビジネス文書の書き方や立ち居振る舞いのマナーをしっかり学んできた経験があるからだと思います。

私が受け持つことができる生徒さんは15人くらいがマックスなんですが、今のところ常に満席です。宣伝はブログのみなんですが、集客ではまったく困っていません。家庭教師業界ではスーパーやクリーニング店にチラシを置いたり、一軒一軒ポスティングをして集客することが常識になっています。個人事業主の家庭教師や塾経営だと、朝から授業が始まるまで、ひたすらポスティングされているという方が多いんですね。でも私は、そうした業界の常識に捕らわれず、HPやブログで集客する方が、今の時代に合っていると思うんです。

家庭教師業者から独立された方は、結局、集客で苦労することが多いようです。教える技術があり、そこに仕事の喜びを感じていらっしゃるわけですが、集客のための事務作業をしたくないという方が多いんです。集客のためにお金と時間はかけたくないけど、お客様は欲しい。そうなると、「指導する腕をもっと上げようと」となりがちです。でも、それは違うと思う。腕を上げれば人が集まるわけではありませんよね。これも前職の広報の仕事を通して学んだことです。質はもちろん大事ですが、集客はまた別の問題になってくるんです。

「なんでできないの!」は禁句。コミュニケーションをとりながら楽しく勉強を教えることが秘訣

実際に独立して良かったことは、自由が得られたことですね。疲れていると感じたら、自分で時間配分をして休みをとることもできる。逆に良くないことというと、世間体ですかね(笑)。プロ家庭教師というとアルバイトだと勘違いされがちなんです。個人事業主だと説明しても、みなさんイメージがつかないみたいですね。それを考えると、「会社ってありがたい存在だったんだな」とあらためて思ったりもします。

一日のスケジュールは、平日が16時~18時と19時30分~21時30分の指導で一日に2回です。土曜日は学校が休みなので、朝から晩までフルで指導しています。平日はだいたい15時くらいに家を出るんですが、それまでの時間はブログを書いたり、事務作業をしていますね。指導が始まるまでの時間は、あまり動き回らないようにしているんです。なぜかというと、1日に2件も回っていると、どうしても途中でイライラしてしまいがちだからなんです。

勉強嫌いな子の中には、発達障害や学習障害のために何度教えても理解できない子がいるものなんですね。そういうときにイラッとして「なんでできないの!」と絶対に言ってはいけない。あまり刺激を与えずにゆっくり教えていくことが大切なんです。そのためのメンタルコントロールとして、指導以外の時間はゆったりした気持ちで過ごすように心がけているんです。

私の指導の仕方は、最初は雑談をしながらコミュニケーションをとっていきます。子どもの警戒心を解いてから勉強に移っていくかたちですね。親御さんに対してはきちんとした丁寧語で話していますけど、生徒さんに対しては、私がお笑いをすごく好きなこともあって、「なんでやねん!」とお笑いムードで接してます。とにかく「私と話しながら勉強すると楽しい」という方向に導いていく。そうなれば、自ずと勉強も好きになっていくはずです。

puro_01この仕事をやっていて喜びを感じるのは、やはり生徒さんがテストで「できたよ」と自慢してくれたとき。いい点をとったり成績が上がると、写メや手紙を送ってくれたりするんです。私が喜ぶと彼女たちもすごい嬉しそうな表情になる。それがすごく可愛くて(笑)。逆になかなか成績が上がらなかったり、合格発表の前日はお腹が痛くて……。本当に辛くなったときは、生徒さんの手紙を読み返してます。生徒さんの言葉にはかなり救われているかもしれない。

先日も小学校の頃から教えている生徒さんが、以前は18点だった算数のテストで81点をとって成績が一気に「4」になったんですよ。同級生からも「賢いんだな」と言われて自信が持てるようになったんです。今では学級委員や部活のリーダーになって学校の中でも優等生扱いされているくらいです。子どもの成長していく姿を見られることが、この仕事の一番のやりがいですよね。

プロ家庭教師が語るノウハウ集

独立前にするべきこと

SEO対策をすべし

佐々木さんはコンサルティング会社時代に広報としてHP管理を担当していた。そのためSEO対策の知識が備わり、業者に依頼しなくとも、自分で検索エンジンの上位に来るようにすることができる。その具体的なノウハウについては、残念ながら企業秘密。いくらHPやブログを公開しても、SEO対策をして人に知ってもらわなければ片手落ちとなりかねない。

アンケートを募るべし

開業前の準備として、佐々木さんは生徒からアンケートと手紙を募った。こうした生の声をブログに載せることで、どういった指導をしてきたかのイメージがつかめるようになる。ネット経由で依頼を考えているお客に対し、少しでも判断材料となる情報を提供しようとする姿勢が大切。また、こうした教え子の手紙は自身の励みにもなる。

ビジネス文書を身につけるべし

前職が広報だったことから、佐々木さんはかなり厳しく社会人マナーを教育されてきた。ビジネス文書を書く機会も多く、それが今、ブログ執筆に役立っているのだ。具体的には、受け手がどう思うかを意識した文章を書き、こちらが伝えたいことを発信する意識を明確に持つこと。メールのやりとりの際にも、きちんとしたビジネス文書だとお客の安心感も違ってくる。

独立後にするべきこと

屋号を付けるべし

個人事業主は屋号を付ける必要がないため個人名で営業している人が多いが、佐々木さんは「家庭教師のさくら」という屋号を付けた。「桜咲く」という合格のイメージと桜の花言葉「精神美」を表したものだが、屋号を付けることで目標が明確になり、意識が変わったという。また、ネットで検索する際に、ありがちな個人名よりも検索しやすいという利点もある。

ターゲットを絞るべし

佐々木さんは「中学生女子」に限定し、「勉強嫌いな子の指導」に特化している。これも広報で学んだ「ターゲットを明確にする」というビジネスの鉄則に従ったもの。逆にターゲットを絞らずに難関校受験から勉強嫌いの子まで「なんでも教えられます」としている家庭教師が多い。沢山のお客を得たい気持ちはわかるが、得意とすることが曖昧になり、むしろ逆効果だ。

複数の収入の柱をつくるべし

家庭教師の仕事は活動できる時間帯が限定的。また、収入の柱を一本にすると、それが途絶えたときに廃業どころか生活もままならなくなる可能性がある。そのため佐々木さんは教育系の資格取得に努めたり、教育系ライターの仕事をするなど、現実的に将来を見据えて行動している。そして実際に先頃、教育法の電子書籍を出版した。

取材・文●大寺 明

家庭教師に必要な書式はこちらから

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著書紹介
『うちの子なんとかなりませんか?勉強嫌いを克服して30点上げる7つの方法』

佐々木 恵/著
ごきげんビジネス出版 [Kindle版] 500円
「ちゃんと勉強しなさい」「うるさいな! やっても無駄だよ!」……こんな会話が日常になっていませんか? 将来のために勉強してほしいと望む親心とは裏腹に、何度言っても勉強しない子どもたち。なぜ勉強を嫌いになってしまったのか。どうすれば勉強に前向きになり、自ら勉強するようになるのか。簡単なコツを少しずつ実践するだけで、子どもたちは大きく変わる。個別指導で200人以上を指導し、成績アップを実現したプロ講師が「7つの方法」を教えます。