ネット時代の店舗経営は、立地よりも広告で勝負!美容師が語る独立ノウハウ

美容室「エルドール」代表 林 夏樹
美容室「エルドール」 代表 林 夏樹さん(36歳) 1977年長野県松本市生まれ。高校卒業後、東京の美容専門学校に入学。21歳で美容師免許を取得。渋谷の美容室に5年勤務した後、26歳から青山の美容室で個人事業主として営業。28歳のとき渋谷に共同経営のバーをオープン。2013年に池袋に美容室をオープンした。

ailedore_sab1<独立データ>
35歳で独立
【独立資金】690万円
・敷金礼金160万円
・改装費300万円
・設備費150万円
・ホームページ作成費10万円(管理費 月6000円)
・広告費40万円
・その他雑費30万円
【資格】
美容師免許
管理美容師免許(美容師を雇用するために必要)
【事業内容】
開業:2013年4月
従業員数:2名
深夜2時まで営業する美容室の経営。

美容師の道を進んだ人の最終目標は、やはり自分のお店を出すこと。青山の美容室で働いていた林夏樹さんは、人気スタイリストとして高収入を得ていたが、35歳のときに安定を捨て、自分の夢を選択した。美容師の仕事の他に経営もこなさなくてはならず、やることも考えることも増えたが、従業員の頃のような“時間の拘束感”はないという。自分のお店を持つことの“やりがい”を語っていただいた。

雇われている限り、自分の思うようにできず、時間は拘束される。「独立」をずっと目指していた

高校3年生のときに友だちと専門学校を見て回るというテーマで東京めぐりをしたんです。いろんな専門学校を回るうちに、美容専門学校で見せてもらった技術が面白そうだと思ったのが、この道に進むきっかけでした。マッサージ師か寿司職人になってほしいと言っていた親は大反対。土下座して頼みましたね。

上京して中野の美容専門学校に2年間通い、その後、渋谷の美容室にインターンしました。当時はインターンを1年間経験してようやく美容師免許の試験が受けられる制度だったんです(インターンの義務は1998年に廃止)。インターン先が実質的な就職先で、その美容室に5年勤めました。辞めることになったのは、「他のお店も見てみたい」という気持ちが芽生えたからです。

転職して1年ほど経った頃、渋谷時代の先輩美容師が経営する青山の美容室で「面貸し」(店舗スペースを借りて個人事業主で営業すること)で仕事をさせてもらえることになったんです。美容師の世界では「面貸し」は一般的なもので、自分にお客さんが付くようになると、報酬の半額をお店に入れたとしても、その方が儲かるんです。独立までの準備期間として「面貸し」を選ぶ人は実際に多くて、自分も独立を目標にしていました。

それからお金が貯まったので友人と共同経営で渋谷にバーを出すことになったんです。初期費用が一人頭200万円でしたが、4年間の営業で十分、元は取れましたね。昼間はスタイリストとヘアメイクをやって、夜は明け方までバーに出て寝る時間もないくらいでしたけど、毎日楽しかったですよね。お店で出会った人たちとは今もつながっていて、いい関係が築けています。

その後、安定を求めて「面貸し」で働いていた美容室の正社員になったんです。でも、心の中ではずっと「独立したい」という思いがあった。元々、人と群れるのが苦手というのもあるんですが、雇われている限り、時間の拘束もされますし、自分の思うようにできない。雇われる生き方は大変だと感じていたんです。

ネット時代は、立地よりも広告が大切。家賃ではなく、広告費にお金をかける

ailedore_sab1独立したいという気持ちを伝えたとき、お世話になっていた先輩美容師には、「絶対に失敗する。一年も持たない」と言われました。実際、渋谷・新宿・池袋には美容室なんて腐るほどある。今のお店がある池袋界隈だけでも400店舗くらい美容室があるんです。そんな激戦区で新規出店するなんて、たしかに無謀ですよね。

あらためてそう言われて、正直、気持ちが揺らぎました。どこに出店するかは家賃と検討しながらかなり探しましたね。渋谷に出店した友人の美容師が「渋谷は本当に渋い……」と言っていたので、渋谷は避けることにして、新宿の物件を探したんですが、新宿は雑居ビルがほとんど。2階と1階ではお客さんの入りがまったく違うので、今度は池袋で路面店を探すことにしたんです。

立地はオシャレじゃない場所で、人通りの少ない場所を重視しました。オシャレじゃない場所にオシャレなお店を出したら、逆に目を引くはずだと考えたんです。お客さんは髪を切られる姿をあまり外から見られたくないものです。人通りが多い場所は落ち着かないですよね。そこで、「隠れ家」的なコンセプトのお店にしたいと考えたんです。そうした物件は家賃が安いというのもあった。

新規出店では立地が何より重要だと言われますが、僕はあまり重要ではないという考えです。今はネット社会なので、お客さんはとりあえずネットでサロン情報を見て「ここがいい」と思ったら、とりあえずお店に来てくれる。場所は後から見てるんですね。だから、まずホームページをきちんと作って、「HOT PEPPER Beauty」などの美容専門の広告媒体に40万円ほどの広告費をかけました。大きな出費ですが、気に入ってもらえばリピーターになってもらえますから、結果的にはプラスになる可能性が高い。

「深夜2時まで営業」で仕事帰りに寄れる美容室という隠れ家的なコンセプトに

とはいえ、オープン当初は不安も大きくて、正直、賭けでしたね。最初の2、3カ月でコケたら潰れると思っていました。でも、広告の効果もあって1月目から黒字になった。それまで自分についてくれていたお客さんが来てくれたのも大きかったです。僕のお客さんは神奈川の方が多かったんですが、神奈川から池袋まで来てくれて、本当に嬉しかったですよね。

広告を出しても元が取れないお店もけっこうあるんですが、うちが効果を出せたのは、「深夜2時まで営業」という“売り”があったからです。夜の商売の女性向けの美容室はあるんですが、うちのように普通の美容室として深夜まで営業しているお店は少ない。だから会社帰りに寄られる女性が多いんです。夜はメンズのお客さんも多いので、もっともお客さんが多い時間帯は19時から23時くらいになっています。

雇われていたときは、お客さんの髪を切ったりカラーをするのが仕事だったわけですが、今は“美容師を売る仕事”だと考えています。僕の他にもう一人女性スタイリストがいますが、きちんと彼女を指導して、一刻も早くたくさんの指名をとれる美容師になってほしい。指名がとれる美容師の人数が増えれば、それだけ売上も上がる。そうやっていくうちに、お店のキャパが狭くなってきたら、もう一店舗出したいと考えているんです。

街の美容室として地道にやっていこうという人もいますが、自分は多店舗展開をして、いずれは経営のみに回りたいという気持ちがある。35歳で独立することを一つの目標にして、実際ぴったり35歳でお店を出すことができましたが、今は39歳までにもう一店舗出すことが目標です。そのためにも早く法人化して、人材を確保することが一番の課題。現在も美容師を募集しています。

せっかく育ってくれた美容師が独立を願い出たら、たしかに痛手ですが、その人の人生ですから仕方がないと考えています。むしろ、自分も独立してきた人間なので、そのときは全力で応援してあげたいですよね。

何か一つ、誰にも負けない“売り”を持つこと。そして、“腹をくくること”が大切です

ailedore_sab2もうすぐオープンから1年になりますが、売上は順調です。ただし、最初の4、5カ月は設備投資や経費などの出費が大きいので領収書ばかりが増えて、お金がどんどん減っていくんですよね。通帳を見るたびに「もうこれだけしか残高がない……」と不安になって正直、萎えそうになったこともありました。

だからといって広告費をケチると、おそらく一瞬にして潰れると思うんです。今も6件の広告媒体に毎月60万円くらいの広告費をかけています。広告を出す際に重要になるのが、一つだけでも“売り”になる特化した技術なり、商品なりを持つこと。うちの場合は「深夜2時まで営業」していることと、「髪の艶を出す」ことです。店名の「ailed’ore(エルドール)」は、フランス語で「金色に輝く翼」という意味なんですが、艶のある髪になってお客さんが羽ばたくお手伝いをしたい、という気持ちを込めたものです。

美容室に限らず、お店を出したいと考えている人にアドバイスをするとしたら、とにかく腹をくくること。出店には数百万から1千万円単位のお金がかかりますから、誰でもコケたときのことを考えて不安になるのは当然です。でも、不安にばかり目を向けていると独立なんてできない。「なんとかなる」と思って恐れないことです。

実際、独立してみて、14時間くらいお店にいなくちゃいけないし、年中無休で休みもとれないから、遊ぶ暇もない。でも、最初の1、2年はお店のことだけになるのも仕方がないと腹をくくっていました。

雇われていたときは時間の拘束感を感じていましたが、独立した今は、働いている時間は長くなっているのに、時間の拘束感がないんですよね。数字に追われるストレスもありますが、それよりもシミュレーションゲームをやっているみたいに自分のお店を大きくしていく楽しみの方が大きい。お客さんが二度三度と来てくれると、「気に入ってくれたんだな」と思って本当に嬉しくなるんです。今は独立してすべてが良かったなと思ってます。

成功する美容室の独立ノウハウ集

独立前にするべきこと

指名のとれる美容師になるべし

美容室で独立するには、指名がとれる人気スタイリストになることが最初の一歩。美容師の技術は実のところ大差なく、差がつくのは「センスと丁寧さ」だと林さんは言う。常に女性誌で新しいスタイルをチェックして自分のセンスを磨き、仕事は丁寧さを心がける。女性はやはり雑に扱われることをもっとも嫌うものなのだ。当然、丁寧にやればいい仕事もできる。

相談できる人脈を築くべし

林さんは20代後半から4年間、バーを経営していた。一見、美容師とは関係のない仕事だが、独立後、ここで培われた人脈が役立った。バーに出入りするお客は職種も業種もさまざま。そうした多様な人からアドバイスがもらえるばかりか、カメラマンのお客にお店の写真を撮ってもらったり、親が内装業をやっているお客から、格安で内装をお願いすることができた。

お客のムードを見極めて接客すべし

美容師は技術職であるだけでなく、接客技術も求められる仕事だ。とはいえ、トーク技術を磨けばいいというものではなく、話しかけてほしいお客なのか、話しかけてほしくないお客なのかを見極めることが大切。何千人と髪を切っていくうちに、「視線や話し方でなんとなくわかるようになる」と林さんは言う。むしろ美容師は聞き上手の方がいいそうだ。

独立後にするべきこと

常に最新トレンドを取り入れるべし

美容室は常に最新のトレンドを取り入れていることが大切。林さん暇さえあればネットで最新のトリートメントなどをチェックするように習慣化しているほか、常に新情報を取り入れているディーラーと付き合うようにしている。ディーラーが良くないと、進歩しない時代遅れの美容室となってしまい、流行に敏感なお客はすぐに離れてしまうのだ。

運転資金を確保すべし

店舗経営には季節による波がある。美容室の場合は12月と春頃が忙しく、逆に2月と8月が暇になるという。そこで売上が落ち込むと、このまま下がり続けるのではないかと一瞬不安になるのが人間だ。そうした精神的ストレスを抱えないようにするためにも、赤字が続いたときに耐えられるだけの運転資金を確保するといいだろう。

目標を決めて法人化を検討すべし

現在は個人事業主として美容室を経営する林さんだが、独立当初から法人化を想定している。法人化によって経費で落とせるものが増えるといったメリットがあるだけでなく、もう一店舗出すという目標があるからだ。そのためには、1000~1500万円を用意しなければならず、銀行の融資が必須。銀行との信用関係を築くためにも早めに法人化したいと考えている。

取材・文●大寺 明

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