パソコン1台あれば独学でフリーランスに。WEBデザイナーが語る独立ノウハウ

大森史緒里
大森史緒里(おおもり・しおり) 1982年福岡県生まれ。学生時代からバンド活動をはじめ、音楽系の専門学校進学を機に上京。卒業後、レコード会社、WEBサービス会社、コンテンツ販売会社などの勤務を経て、2009年からフリーランスのWEBデザイナーとなる。

20141204_sab0――独立DATA――
●27歳で独立
【独立資金】計30万5000円
・デスクトップパソコン(Windows) 8万円
・モニター 2万5000円
・Adobeソフトのセット 約20万円

――事業内容――
●WEBデザイナー
Sol-project design team!
開業:2009年
個人事業主
主に企業のWEBサイトのデザインとコーディングを手がける。簡単なイラストも描けるので、遊び心のあるデザインにも対応可能。

パソコン1台あれば独立も可能というWEBデザイナー。しかも場所を選ばず、在宅はもちろん地方や海外に住んでいても仕事ができるとあって、多くの人が希望するフリーランスの働き方だ。しかし、敷居が低く見えるぶん、逆にプロとして安定して仕事をこなしていくのは難しそうにも思える。実際はどうなのだろう? WEBデザイナーの仕事の舞台裏をお聞きした。

内定を取り消され、やむなくWEBデザイナーとして独立。「やっていけるかも」と楽観視していた

20141204_sab310代の頃、バンド活動をしていたので東京の音楽系専門学校に進学することにしたんです。その頃は音楽のことしか考えてなかったんですけど、やはりバンドだけで食べていくというのは難しく、小さなレコード会社に就職しました。会社でサイトの更新をまかされるようになって、WEB制作に興味を持ちはじめました。元もとインターネットと物を作ることが好きだったこともあって、ゆくゆくはWEBデザインの仕事に就きたいと思いました。

技術を習得するのに一番役立ったのは、会社員時代にWEB系の専門学校で週1のアシスタント業務をしたことです。独学や会社の業務を通してある程度は技術を身に着けられていたつもりでしたけど、「もっと他に勉強し足りてないことはないだろうか!?」という心もとない感じもありました。専門学校でアルバイトをしたことで、これまで自分が身につけてきた技術が十分使えそうだと確認できたことが大きかったですね。

ただし、元もと独立しようと考えていたわけではないんです。レコード会社の後、WEBサービス会社とコンテンツ販売会社に勤務したんですが、もっと自分のスキルを高めたくなってIT関連の会社を探して転職活動をしたんです。デザインの技術を活かしつつプログラムを教えてくれるという開発会社に内定が決まったんですが、リーマンショック後の不況の影響で、突然、内定が取り消されてしまったんです。他に志望の会社もなかったし、どうしよう……と落ち込みました。

この頃、前の会社の同僚から簡単なサイト制作の仕事をいくつか請け負っていたんです。その仕事をやりながら転職活動を再開しようと考えていたんですけど、そうこうするうちに少しずつ他の仕事も入ってくるようになったので、「これはフリーランスでやっていけるかもしれない」と思いました。でも、フリーランスになったばかりの頃は楽観視しすぎでした。私もまだ一人での作業に慣れていなかったので、数万円の仕事に1カ月くらいかかったりして効率も悪くて苦労しました。

「仕事はあって当たり前」ではないのがフリーランス。仕事が安定するまで相応の時間がかかる

20141204_sab1会社勤めの頃は、「仕事はあって当たり前」という感覚でしたけど、フリーランスは定期的に仕事が入ってくるとは限りません。4、5カ月目くらいから間が空くようになってきて焦りだしましたね。そこで、今でいうクラウドソーシングのようなサイトで仕事を探すことにしたんです。結果からいうとあまりいい思い出がなく……。HTMLコーディング(プログラムを記述すること)がページ1枚あたり数百円(笑)。「時間がかかる複雑なページじゃないから大丈夫。100枚以上あるからこの価格でお願いします」という話だったわけですけど、実際やってみると複雑なページもけっこう含まれていて、かなり大変でしたね。まだ経験が浅かったので、「フリーランスの相場はこんなもんかな」と思ってました。

私の経験ですが、ネットで募集をかけている単発の仕事は、単価が極端に安いうえに成約できるのが1割程度なんです。これは継続的な仕事にならないと思って、会社員時代に付き合いがあった知人や取引先の会社、同業種の友人たちに独立したことを伝える挨拶メールを積極的に出すことにしました。そうすることでお仕事をいただけることがあって、少しずつ取引先を広げていった感じですね。

本当にフリーランスとして安定して仕事が入るようになったのは2年目の後半からです。それまでは、週に何時間か会社に常駐して作業をするアルバイトのような仕事を請け、収入の少ない月はつないでました。その後、携帯サイトで配信されているコンテンツを定期的に更新する仕事を2年ほど任せていただき、安定した収入を得られるようになりました。その後、取引先が5社を超えたあたりでフリーランスとして安定してきました。A社の仕事がないときはB社から依頼が入ったりして、うまくスケジュールが埋まるようになるんです。

軌道に乗りだしてからは、また会社勤めをしようと思ったことは一度もないです。今の働き方が自分に合っていると思う。それは、新しく人と出会って仕事をすることがけっこう好きだということに気がついたからです。元もと私は面倒くさがりなところがあるので、常に何かしら新しいことがあった方が、新鮮な気持ちで仕事に向かうことができるんです。通勤時間がないこともいいですよね。

仕事が空いたときは勉強にあてる。映画や音楽に触れて感性を磨くことも、仕事に活かされる

WEBデザイナーで独立を考えている人から、「仕事はどうやって取ってくるの?」と質問されることがあるんです。それに関しては、「できるだけいろんなところに顔を出して、自分のやっていることをアピールするしかない」としか言いようがない。他に私がやっていることというと、Facebookやtwitterで「こんな仕事をしました」と書いたりするくらいです。それを見ていた人から仕事の相談を受けたりすることが稀にあるんです。思わぬところから仕事が来たりするものなので、なるべく多くの人に自分の仕事を伝えておいた方がいいと思います。制作会社が受注していて、私が作ったと言えない案件もあるのですが、それ以外は、わりと積極的に載せるようにしてますね。

そうやって仕事で関わった人が増えていくと、私の仕事を評価してくれた人がまた別の方に紹介してくれたりして、次の仕事につながっていったりしています。今は何かしらいつも仕事の依頼が入ってくるようになってきたので、ありがたいことに営業らしい営業をしなくてもすんでます。仕事の依頼が来るようになるコツは……お願いしやすそうな雰囲気を出しておくことですかね。「なんでもご相談ください」みたいな(笑)。そのぶん割の合わない仕事の相談をされたりもするんですが、何でも相談できそうな雰囲気にしておくことがとりあえず大事だと思います。

あとは「ONとOFFの使い分け」もよく聞かれますね。独立したての頃は、土日も仕事をしたりしてONとOFFがはっきりしていなかったんですが、最近は土日に休むようにしています。やっぱりお客さんも土日が休みのことが多いので私も休みやすいんです。ただ、常にメールチェックをするクセがなくならないです。Skypeやチャットワークを仕事の連絡用ツールとして使っているんですけど、それをスマホに入れているので、土日でもついつい確認してしまうんですよね。

自分一人で仕事をしていると、ヒマになるとOFFという感じでもなくて、気持ちが焦ってくるものです。そんなときは勉強にあてるようにしてますね。忙しいときは仕事と納期のことしか考えられなくなるので、他のことを考える時間ができたと思うようにしてるんです。WEBデザイナーで独立を考えている人にアドバイスするとしたら、やっぱり新しモノ好きで、なんでも面白がれる気持ちがあるといいですよね。WEBだけじゃなくて、映画を観たり音楽を聴いたり、なんでもいいので感性を磨くことが、デザインや仕事の面で活かされると思うんです。

たとえ技術的にWEB制作が簡単になったとしても、発注者の希望どおりに形にできるかはプロの領域

20141204_sab2一般的な仕事だと時給や月給が決まっていて自分がいただくお金の話はあまりしないものですけど、フリーランスになると最初にギャランティの交渉をしなければいけなくなります。案件によって製作日数が異なるので、自分の中で目安としている金額と、先方の予算を聞いてすり合せていく感じになります。

私はお金の交渉があまり得意ではないので、見積りを求められるより「この予算内でお願いします」と相談された方が楽だったりします。WEB制作会社の方もエンドクライアントに対して見積りを作っているので、ムチャな金額を言われることは滅多にありません。だいたい「1ページいくら」という感じで金額が決まるんですが、トップページだけちょっと高くて、2ページ目以降はその半額以下が相場のように感じています。ただし、ページ数が多い場合は、ページ単価ではなく、「このくらいの金額で」と予算をあらかじめ相談されることもありますね。

一時期は、技術が発達して簡単にWEBサイトが作れる時代が来ると言われていて、実際にそういったサービスもできてきていますが、今のところ“誰でも簡単にできる仕事”になったという実感はあまりないです。この仕事は、きれいにデザインされたページを作れたらそれでオッケーというものではなく、当然、管理も必要だし、先方の要望をくみとり、ときにはこちらから提案して、より良いものにしていくことが必要です。その点については始めたばかりの人よりは多少自信があります。先方の希望どおりに作ることもあるのですが、必ずしも相手の要望をすべて取り入れるのがベストじゃない場合もあります。さまざまな意見を取捨選択しながら作り上げていくものなんです。

あえて自分の強味を言うなら、お客さんと一緒に作っていけるところだと思ってます。会社勤めをしていたときにサイトの企画作りから携わったりもしていたので、単にきれいなデザインの見せ方を考えるだけでなく、ユーザーに対してどういったアプローチをしていけばいいのかを提案したりもします。そのためにもできるだけトレンドの技術をチェックしておいた方がいいですよね。トレンドの技術だとお客さんに提案しやすかったりすることもあるんです。

そうした新たな技術は、仕事を続けていくうちに勉強させてもらい、身についていくことが多いです。実際、5年この仕事をやってきて、最初の頃と比べるとできることは倍くらいに増えましたし、スピードもかなりアップできたと思います。

WEBデザイナー独立ノウハウ集

【独立前】

とにかくネットで調べて習得すべし

大森さんは最初にhtml辞典などの本を買って基礎を学び、その後、ネット上にある簡単なテンプレートを探してソースを確認しながら勉強した。そして慣れてきたところでhtmlを書いてみることを繰り返したそうだ。その後は仕事の実践をとおして学んでいった。わからないことがあれば、ネットで検索すれば調べられるので、基礎さえあれば独学でもなんとかなる。

役立ちそうなツールは使ってみるべし

PhotoshopやIllustratorなどweb制作で使われる基本的なAdobeソフトをはじめ、フリーで配布されている画像、動画、HTMLを編集・制作できるツールや、web上でファイル共有やブロジェクトを管理できるサービスなど、web制作に使えそうなツールが日々登場している。そういったツールの中から、クライアントが使ってほしいツールを指定することもあるので、話題のツールは抑えておいても損はない。

営業メールは具体的に伝えるべし

大森さんは独立したことを伝える営業メールを前職の関係者に送ったが、ただ挨拶をするだけでは、どんな仕事を頼めるのかわからない。そこで、技術的にできることを具体的に書き、実績としてこれまでに作ったサイトのURLを載せたり、1枚の資料にまとめて添付した。また、メールでは定型文は使わないようにしている。機械的なやりとりを避けたいためだ。

【独立後】

納期と仕事量のバランスをとるべし

打ち合わせで確実に押さえておくべきことは、“金額・納期・誰とやりとりをすればいいのか”の3点。WEBディレクターがいる場合は、要望を資料にまとめてくれるので、それに従って作成すればいい。仕事を請けるにあたって一番怖いのが短納期だ。一人ですべての作業をしなくてはいけないため、時間に追われ身体を壊すことになりかねない。

電話だけでなく、メールに履歴を残すべし

発注者とのトラブルで多いのが、電話での“言った言わない”の行き違い。発注者は要望を一気に口頭で伝えたがるが、いざデザインが出来上がると、自分の言ったことを覚えていないということが意外と多いのだ。逆に受注者が聞き逃している場合も多々ある。そんなとき、大森さんは要望をメールで送ってもらい、履歴に残るようにしている。メールが苦手な人の場合は、直に会って打ち合わせをするそうだ。

2パターン作るべし

発注者には、漠然としたイメージの人と完全にイメージができている人がいる。意外と難しいのが後者だ。それが適した案でなかった場合、別の提案をした方が先方のメリットになる場合もある。しかし、外注の立場は要望どおりに仕事をすることが基本。そんなとき大森さんは先方の要望どおりのデザインと、自分がいいと思うデザインの2パターンを提出することにしている。WEBデザイナー業界では一般的に行われていることだそうだ。

取材・文●大寺 明

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