本を年間300冊以上読むビジネスマンが薦める!青春時代を思い出す小説6選

皆さんは、何のために本を読みますか?
教養を身につけるためでしょうか、スキルを身につけるためでしょうか。

社会人になってから学生時代の友人に会うと、自分が学生に戻ったかのように、懐かしい気持ちになることがあります。今回は、社会人になっても年間300冊以上の本を読んでいる筆者が、あなたの青春時代の記憶」を呼び起こすという、読書の楽しみ方を紹介します。楽しかった記憶、悔しい思いをした記憶、憧れの人に思いを寄せた記憶…。

仕事で疲れている皆さん。
小説を読んで、ちょっと昔の思い出を振り返ってみませんか!

「たすき」によって繋がれていく思い。三浦しをん『風が強く吹いている』


最初に紹介するのは、三浦しをん『風が強く吹いている』です。

大学の近くにある寮「竹青壮」の住人たちが、箱根駅伝を目指す物語。
陸上未経験の者たちが多い竹青壮の住人たちは、果たして他の強豪チームとの戦いに勝利して、箱根駅伝への切符を手にすることができるのか。

この物語を読むと、人に思いを“託した者”、“託された者”それぞれの心情描写が胸に刺さります。部活に入っていた方は、その頃の記憶を思い起こしてみてください。部活動での生活は決して楽しいものばかりではなかったことでしょう。部のメンバーと衝突をしたり、レギュラーに選ばれなかったり、試合に勝てなかったり…。

そんな困難があっても、最後にできるのはメンバーを信じること。相手を信じ、思いを託すという行為が、どれほど美しいことか。1人ひとりの思いが次々に託される「たすき」によって、私達はそれを感じることができます。

大人になるにつれて忘れてしまいがちな「相手を信じる」ことの素晴らしさを、思い出してみてください。

スポーツや恋愛に真摯に向き合う純粋さを思い出す!宮本輝『青が散る』


続いて紹介するのは、宮本輝『青が散る』
新設大学のテニス部員椎名桔平が主人公のこの物語。

大学4年間すべてをテニスに捧げた主人公が、ただひたすら真っすぐにテニスや恋愛にも向かい合う姿にすがすがしさを感じます。

好きな女性ができるという経験は、誰しもがあるもの。
しかし、意中の女性がすぐに自分に振り向いてくれるとは限りません。「相手は自分のことをどう思っているんだろう」「身近にライバルがいるのではないか」…と、主人公が恋愛に悶々とする様子を本作品では見事に描き出しています。

それぞれが心に陰を持った登場人物達が、もがきながらも、どのように前に進んでいくのかという描写にも注目。

テニス好きの方はもちろんのこと、愚直なまでに真っすぐな気持ちを思い出させてくれるこの作品には、多くの方が心打たれるのではないでしょうか。

中学生の多感さをビートルズに寄せて見事に描いた作品!川上健一『翼はいつまでも』


舞台は青森。
中学校の野球部員・神山が主人公の小説、川上健一『翼はいつまでも』を紹介します。

補欠だった彼を変えたのは、米軍放送で聴こえてきた、ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」。その曲に彼は勇気づけられ、見事レギュラーを勝ち取ります。
次第に結束を固め、チームとしてまとまっていく野球部は、果たして、目標に掲げる「県大会優勝」を達成することができか、というところも見どころ。

学生時代、音楽の影響を受けたという人は多いのではないでしょうか。偶然出会った1曲によって、まるで別人のような変貌を遂げる。そうした中学生の多感さを、この作品は見事に描いています。初恋の経験や、教師との衝突など、中学時代に誰もが経験したような出来事を、鮮やかに切り取っていることも、おすすめする理由の一つ。

この物語を読み終わるころには、誰もがきっと、ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」を口ずさんでいることでしょう。

太宰のイメージを覆す、すがすがしい青春小説!太宰治『パンドラの匣』


太宰治『パンドラの匣』を紹介します。
太宰治と聞くと、どうしても『人間失格』のイメージが強く、悲しく重い作品ばかりを書く作家と思われがち。そんな太宰治が、珍しくも、青春時代の明るく希望に満ちた様子をテーマに描いたのが、この作品です。

本には2作品収録されており、表題の『パンドラの匣』と、中学生の内面を日記形式で描いた『正義と微笑』があります。特におすすめするのが、『正義の微笑』です。

中学生という時代は、ちょうど物事について深く考え始めるころ。
「正しさとは何か」ということに考える純粋さを持つ反面で、反抗心や懐疑心などにさいなまれる複雑な年頃でもあります。そんな中学生の難しい心情を、日記形式で、ストレートに表現しています。

中学時代か高校時代かは、人それぞれですが、必ずみんな同じようなことを考えた瞬間があったはず。「そういえば、あの時そんな風に思ってたな」と、読者をどこか懐かしい気持ちにさせてくれる小説です。

自分の考えを深め、ぶつける!庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』


青春文学の傑作とも言われているのが、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』です。

学生運動が盛んになっていた時代、東大の入試が中止されたことがあるのを皆さんはご存知でしょうか。主人公はその影響を受けた、日比谷高校3年の薫君。

彼はさまざまな人との出会いを通じて、考えを深め、日本という国に流れる価値観に疑問を抱いていきます。今でこそ、「思想」という言葉は敬遠されがちな言葉になっていますが、実は皆さん誰しもが「思想」を持っています。

大学を卒業して、社会に出るにあたって、これからどう生きていくべきか。友人と自らの考えを語り明かした経験があるのではないでしょうか。

自分の考えを相手にぶつけ、相手の意見を受け止める。友との心と心の交流があったことを、思い出させてくれる小説です。

少年時代の“負”のリアルを見つめた作品。那須正幹『ぼくらは海へ』


最後に紹介するのは、那須正幹『ぼくらは海へ』です。

同作品は児童書という位置づけでありながら、普通の児童書とは少し違います。
「児童書」といえば、主人公がいて、友達がいて、一緒になって困難を乗り越えて、ハッピーエンドで終わる。これが普通です。

しかしこの作品はというと、どうでしょう。
少年たちを待ち受けているのは、大きな困難。作品が描き出すのは、リアルな少年たちの姿なのです。

皆さんの少年時代を思い起こしてみてください。
すべてが楽しい時代だったでしょうか。
おそらく違うと思います。

悲しいこと、悔しいこと、辛いこと…そんな負の感情を伴う出来事を必ずどこかで経験しているはずです。そこを切り取って描いているからこそ、私達の心に強く響くものがあります。少年のリアルな姿を見つめ直したい方は、ぜひ一度読んでみてください。

小説は、私達の感情の記憶を呼び起こす

今回紹介した小説のシチュエーションというのは、誰もが経験しているものではありません。
しかし、読んでいくうちに、「こんな気分になったこと、そういえばあったな」と、子供時代・学生時代の感情の記憶に訴えてくるのです。

そんな体験ができることは、小説の醍醐味のひとつなのではないでしょうか。
普段小説を読まないという方も、これをきっかけにぜひ一度、小説の世界に足を運んでみてください。