「仕事の悩みを前向きに捉える」働き方。老舗「染み抜き屋」の代表に学ぶ仕事論

皆さんは、今の仕事に好んで就いていますか?

「就職活動で決まったから、今の会社に入った」あるいは、「希望する会社で働いているが、部署は希望通りにならなかった」という方が大半ではないでしょうか。思い描く理想から外れた環境で働く人は、仕事の悩みは尽きません。しかし、ビジネスで成功を収めるためには、希望と異なる環境でどれだけ頑張れるかが重要です。

今回は、予想外の出来事でキャリアを大きく変更することになった、創業1967年の老舗クリーニング店「不入流 染み抜き屋」の代表取締役・吉村誠さんにお話を伺いました。吉村さんがクリーニング屋の代表になるに至った経緯や仕事に取り組む姿勢を参考に、ご自身の仕事についても考えてみてください。

先代である「父の死」をきっかけに、建設からクリーニングの世界へ

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吉村さんは大学を卒業後、建設系の会社で働いていました。建設業界で働きたいという思いは大学時代から持っており、在学中に資格を取得するなど、目標に向かって積極的に邁進していたのだそう。転機が訪れたのは、吉村さんが就職してからわずか1年後のこと。代表取締役としてクリーニング屋を切り盛りしていた、お父様が急死されたのです。

『母からは、自分が進みたい道を歩むように言われていたのですが、私は長男だったので、心のどこかで「いつかは、継がなければならない時が来るのかな」という気はしていました。しかし、あまりにそれがいきなりだった。

当時は本当に大変でした。クリーニング業界は斜陽産業と言われるようになってきていた時代でもあったので、一般的なクリーニング屋としてやっていくのがかなり厳しくなってきて。私が後を継いでからは、どんなに頑張ってもトントンでしたね。』

大学時代の希望が見事かなって就職した建設会社を、わずか1年で辞めることになる人生。普通であれば、心がくじけてしまいそうな状況にも、吉村さんは屈しませんでした。理由を聞かれると、そこには、会社で働く社員と吉村さんの家族の存在がありました。

『私は経営者として、会社で働く社員の人生に対しても責任を取らなければなりませんし、父親として、家族を養っていかなければなりません。自分の境遇を嘆いている暇などありませんでした。将来息子に後を継がせるときに、当時の閉塞した状況では絶対にいけない、行動を起こさなければならないと思ったんです。そこで偶然見つけたのが、染み抜きの流派「不入流」でした。

不入流の人達は本当にすごかった。私が落とせなかった汚れを、目の前で一瞬で落としてしまうんです。「自分も同じことができるようになりたい!」と門をたたき、約5年の修業を経てようやく免許皆伝。「不入流」の看板を出すようになりました。』

「染み抜き」という得意分野を確立した店の業績は大きく上昇。今後も専門性を磨き続け、日本一尖ったクリーニング屋にすることが、今の吉村さんの目標なのだそうです。続いては、実際に染み抜きの現場を覗いてみましょう。

インクの染みもたった数分で!技術と経験によって生まれる圧巻の染み抜き

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―皆さんとても忙しそうに働いていらっしゃいますね。毎日こんなに忙しいんですか。

『そうですね。店頭でのお客様に加えて、郵送でクリーニングの依頼が来ることが多いので、期日に間に合わせるために毎日必死です(笑)。では早速、最初に私達がメインで行っている「染み抜き」をやってみたいと思います。』

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―インクの染みですね。インクは洗濯してもなかなか落ちないし、ジーンズをごしごし洗うと色落ちも心配になってしまいます。

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『確かに自宅で完全に汚れを落とすのは、なかなか難しいですね。汚れの種類に応じて、洗剤を使い分けるのですが、油汚れや、今回のような油性のインクを落とすときには、油性の溶剤を使うんです。まずは、洗剤を汚れがある箇所にしみ込ませていきます。』

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『続いて、汚れを浮かび上がらせるために、スチームを吹きかけていきます。それと同時に、ジーンズの下にある機械によって、汚れを吸引していくんです。』

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『そして最後によく乾燥させていきます。この工程を、汚れが落ちるまで何回か繰り返すと…』

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『このように汚れが落ちます。』

―すごい!たった2~3分しか経っていないのに、本当にきれいに落ちていますね。

『短時間で、きれいに汚れを落とすこの技術は、不入流で勉強して身につけたものです。ジーンズは色落ちするリスクがあるので、本来のジーンズの色を落とさずに、汚れだけをいかに落としていくか、ぎりぎりのラインを見極めることが大切なんです。この見極めは経験を積むことによって徐々にできるようになりました。技術と経験の両方が必要な作業ですね。』

家庭で手軽にできる!ワイシャツ襟について黒ずみ汚れの落とし方

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―毎日スーツを着るビジネスマンにとって、ワイシャツの襟が黒くなってしまうのが悩みなんです。家庭でできる方法で、襟の黒ずみを落としたり、汚れをすることはできないのでしょうか。

『できますよ。私も家でやっているやり方で、とても簡単かつ効果があります。驚くような斬新な方法ではないのですが、効果は高いのでご紹介しますね。』

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『まずは、襟部分に水で濡らした固形石鹸を塗っていきます。ここで使う石鹸は、どこの家庭にもある普通の石鹸で構いません。力を入れすぎずに軽く歯ブラシで磨くとさらに効果的です。』

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『次に、襟の部分をこうやってこすり合わせます。後はそのまま洗濯機で普通に洗うだけ。たったこれだけで、汚れがだいぶつきにくくなるんです。』

―こんな簡単な方法で、黒くなりにくくなるんですか。本当に家にあるものだけで実践できるんですね。

『汚れがついてしばらく経っているものや、黄色く変色しているものは、クリーニングでないと落ちないことが多いのですが。黒ずみを予防したり、ちょっとした汚れを落とすのにはぴったりの方法です。皆さんもぜひ試してみてください。』

若手ビジネスマンに捧ぐ。物事を前向きに捉えることの大切さ

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「仕事に悩む若手ビジネスマンは、どのように働くべきか」という問いに対して、吉村さんの口から出たのは“物事の捉え方”についての教訓でした。

『会社に入って間もない頃って、嫌なことが多いと思うんです。上司にたくさん怒られたり、仕事が終わらず遅くまで残ったり。そうしたときに、自分が直面する状況を前向きに捉えられたらいいのではないでしょうか。例えば、プライベートだったら絶対に関わることのないような人と仕事をすると、できる仕事の幅や人間としての器も広がるものです。』

自分と合わない上司のことを嫌うのではなく、自分を成長させてくれるチャンスを与えてくれていると思うことによって、同じ状況でも楽しむことができるようになるのです。吉村さんは、自らのこれまでの人生を振り返り、こう結びました。

『私の人生をネガティブに捉えれば、大学時代からの夢が断たれた人生という風にも見えるでしょう。しかし、今の私には大切な社員がいます。もし私がそのまま建設の仕事を続けていたら、この人達には出会えなかった。だから、今の私の人生はとても幸せなんです。だから、仕事で嫌なことがあっても、後になってよかった思える日がきっと来ると信じて、前向きに捉えるようにしてほしい。それが、今までの人生で私が得た教訓で、若手ビジネスマンの方に伝えたいことです。』

【編集後記】自分が置かれた環境を「前向きに捉える」必要性

私達の多くは、希望していなかった仕事に就き、業務内容や人間関係に悩み、日々を過ごしています。

ビジネスマンとして成功を収めるために、そして、人として成長するためには、自分にとって思わしくない状況を「前向きに捉える」ことが必要なのだと、吉村さんは教えてくださいました。言うのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しいもの。吉村さんはこうした姿勢を貫いてきたからこそ、見事な手腕を発揮し、会社を成長させることができたのです。

皆さんも、嫌な仕事をするときや嫌いな上司と接するときに、自分が成長できるチャンスと捉えるようにすると、今後の人生の糧となって自分に返ってくるのではないでしょうか。

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宅配クリーニング『不入流 染み抜き屋』
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