【ニーズに答えるマーケティングは捨てよ】一流の言葉に見る「おもてなし」のあり方

日本のおもてなしは、世界に通ずる武器である。全産業がサービス産業に近づいている現代では、「おもてなしとは何か」を自分の言葉で語れるビジネスパーソンの存在価値は高まっていくはずです。

しかし、星野リゾートの星野社長も「おもてなしとは何かを定義づけることは大変に難しい」と語るほど、おもてなしは難しいテーマ。そこで一流のビジネスパーソンの言葉を通じ、この難題の答えを探ります。一流の言葉を参考に、自分にとっての「おもてなし」を考えていきましょう。

一流のビジネスパーソンが語る「おもてなし」とは

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日本一の旅館「加賀屋」の女将が語った、おもてなしの真髄

「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で36年間連続総合日本一の評価を受賞した加賀屋。名実ともに日本最高峰の旅館の伝統を築いた女将の小田孝(おだたか)さんは、「目の前のお客様との真剣勝負に挑む姿勢」がおもてなしに繋がると語りました。

小田孝は、お客様には「できません」とはいわないようにして、一人一人のお客様と真剣勝負をするつもりで、 サービスにあたりました。その心が、今も受け継がれ、加賀屋・あえの風でなければ体験できない「心のこもったおもてなし」として、いつまでも変わらず、お客様に愛され続けています。

出典:おもてなし | 北陸 石川県 和倉温泉 旅館 | 加賀屋 公式ホームページ

目の前の人を喜ばせるために全力を出すことが「おもてなし」の真髄だとすれば、おもてなしを定義付けることは無意味と呼べるでしょう。お客様によって嗜好は異なりますし、同じお客様でもタイミングなどによって求めるものは異なるのですから。むしろ、どうすれば最高のおもてなしが出来るかを考えるべきなのかも知れません。

日本が世界に誇る放送作家の考える、おもてなしの質

映画「おくりびと」の脚本家、ゆるキャラ「くまモン」の生みの親などで有名な放送作家の小山薫堂(こやまくんどう)さん。人々をワクワクさせ続ける小山さんは、「もてなす側の思慮の深さ」がおもてなしの質を決めると考えています。

おもてなしというものは、もてなす側がいかに相手の心の中を思いはかるか、その深みがおもてなしの価値につながる。どこまでその方のことを考え、何か行動をおこすか。そこがおもてなしの質として語れるのではないかなと思います。

出典:空港ラウンジに見る、モダンジャパニーズとおもてなしの心とは? | キリンビバレッジ presents 私の別格 – TOKYO FM 80.0MHz – 住吉美紀

どこまで相手のことを考え、行動を起こせるか。小山さんが考える「おもてなし」の本質は、加賀屋の小田さんが伝えていることに大変近いです。「目の前の相手との真剣勝負」はおもてなしの真髄なのでしょうか。

「日本の観光をヤバくする」社長の考える、おもてなしがヤバい

星野リゾートは、日本の観光を大きく革新する可能性を秘めた会社。会社のミッションに「日本の観光をヤバくする」を掲げ、斬新な考えで日本の観光にイノベーションをもたらしている星野社長は、おもてなしには「こだわり」が重要だとの考えをお持ちです。

ニーズに応えるだけではコモディティ化が進みます。おもてなしとは、ニーズに応えるマーケティングを捨てること。おもてなしのためには、伝えたいメッセージを持つことが重要です。

出典:観光立国実現に資する「おもてなし」とは-京都市主催シンポから | 旅行業界 最新情報 トラベルビジョン

「相手のことを考える」とは、すなわちニーズを満たすことである。このように考えてしまいがちですが、星野さんはニーズを満たすだけでは足りないと語ります。「相手が求めている以上のものを自分なりの方法で提供すること」が、おもてなしなのかも知れません。やはり、目の前の相手との真剣勝負がおもてなしのポイントでしょう。

【おもてなしは必要ない】チームラボ代表が語る、21世紀型のおもてなし

テクノロジーの力で世の中を変え続ける、チームラボの猪子寿之代表。彼は「おもてなし」を独自の視点で語り、ITの進化に伴い、世界から「おもてなし」が消えるという考えを披露しています。

おもてなし、確かに日本がもつ世界でもっとも素晴らしいものだけれども、よく考えたら、おもてなしを強く感じる場面というのは、手続きやら、部屋の説明やら、本当はそんなに重要じゃない場面かもしれないのです。21世紀になって、いろんなことがオンライン化されていくなかで、その場面の多くはなくせるものなのかもしれないのです。

言葉にすると、非常に冷たいし無機質なように感じますが、チェックインもチェックアウトもしなくていいなら、それはうれしいのです。日本がこれから世界の競争の中で強みにしようとしている、おもてなし。でも、そのおもてなしを感じる場面そのものが世界ではなくなっていき、そしてその方が圧倒的にうれしかったりするのです。

出典:日本のおもてなしは意味を失った!──日本、アジア、そして21世紀|メンズファッション、時計、高級車、男のための最新情報|GQ JAPAN

極論ではあるものの、「おもてなし」の必要性が少なくなっているというのは事実かも知れません。「おもてなし」という概念に変に縛られるのでなく、猪子代表のように柔軟な視点で、目の前のお客様に接していくことが、21世紀型のおもてなしと呼べるのではないでしょうか。

「おもてなし」とは変化し続けるものである

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目の前のお客様との真剣勝負、ニーズに応えるマーケティングからの脱却、21世紀型のおもてなし……。一流のビジネスパーソンの言葉から「おもてなし」を考えてきましたが、誰一人として「おもてなしが何か」を決めつけてはいませんでした。

目の前のお客様を喜ばせるために最善を尽くす。これこそが、唯一断言できる「おもてなし」の本質なのかも知れません。