「褒めることから生まれる良い循環」アルバイトが9割を占めるディズニーのサービスの高さの理由

みなさんは、東京ディズニーリゾートに行ったことがあるでしょうか?ゴミのない園内、笑顔で親切なスタッフ、期待以上のサービス。なんとリピーター率95%を誇る東京ディズニーリゾートは、園内で働いているスタッフのうち9割がアルバイトであるにも関わらず、サービスのクオリティが高いことで度々話題になっています。

スタッフ(「キャスト」と呼ばれる)の給料は、ごくごく普通のアルバイトと同じ程度。もちろん他のアルバイトと同様に人材の入れ替わりも激しく、年齢層もバラバラです。

9割がアルバイト、しかも入れ替わりも激しいとなると、普通の会社であれば教育どころかコミュニケーションを取ることすら大変に思うはずです。一体、彼らのサービスの高さはどこからくるのでしょうか。その答えは「明確な評価制度」と「賞賛の仕組み」にありました。

明確な行動指針と、それによる評価制度

働いている人にとって、上司や先輩から「なぜ怒られたのか?」という答えがわからないままに怒られることは大きなストレスになります。同様に「なにをしたら褒められるのか?」についても曖昧なままだと、やる気もそがれてしまいます。

こういった事態を防ぐために、東京ディズニーリゾートでは、キャストの行動指針を詳しく定めています。それは、アルバイトを含め園内に出ているスタッフなら、誰もが諳んじて言える「SCSE」というもの。SCSEとは以下の4つの言葉の頭を合わせたもので、優先度の高い順に並べられています。

ディズニー行動指針

この4つの項目は、「安全性>礼儀正しさ>ショー>効率」という順に大事にする、それだけを守ってください。という簡単かつ万能な指針です。

例えばキャストのとった行動がいくら効率的だったとしても安全性がまもられていなければNGであり、いくらとても面白いパフォーマンスをしてゲストを喜ばせたとしても少しでも安全でない要素があればNGということです。

こんな話を聞いたことがあります。商品の補充が追いつかず、ゲストが待ちくたびれているときに、「ゆっくり」歩きながら笑顔で商品の補充を行っているキャストがいました。ゲストはかなりイライラしていましたが、裏に戻ると上司がこう褒めてくれたといいます。「Safety、Courtesyを守っていましたね。素晴らしいです。」と。

結果的にどうであったか?というよりも、「どのように行ったか(SCSEの順に行動をとっていたか)」という過程に焦点を当てて、評価をしているのです。またこの行動指針は、「どのように行動をするのが正しいのか?」を自分で考え、判断できる社員に育てるのにも大変役に立っています。

「見てくれている」という安心感

ディズニー1
画像出典:https://www.atpress.ne.jp/news/57022

加えて、ディズニーでは全キャストに「おかあさん・おとうさん」と呼ばれるトレーナーがいます。このトレーナーは専門職ではなく、アルバイト経歴をある程度積んだものがなれるもので、一人につき一人のトレーナーが必ずつきます。

トレーナーは自分の後輩を見守る義務があり、それゆえに新米キャストも「先輩が見てくれている」という安心感がうまれるといいます。

またディズニーには褒めあう環境が整っています。たとえばグループユニットごとに、毎日「今日一番できたこと」を報告させ、みんなで褒めあう制度や、叱る前には必ず一度褒める(例:よくがんばってくれましたね。でも、SCSEは守れていましたか?)という制度も整っています。

このような「見守り、褒めあう制度」は、キャストに自信を与え、さらにいいサービスを届けよう、というモチベーションを確実に貢献しているのです。

高いモチベーションの理由である、褒める制度

ディズニー2
画像出典:https://www.atpress.ne.jp/news/57022

このようにキャストの行動を認め、称える活動を、ディズニーでは「リコグニッション」活動と呼んでいます。リコグニッション活動は、言葉で褒めるだけではありません。そもそも東京ディズニーリゾートでアルバイトをする人は「ディズニーが好きな人」が多いこともあり、キャストさえもゲストのように大事に扱う姿勢が多く見られます。

たとえば、リコグニッション活動には以下のようなものがあります。

・勤続年ピン
・ファイブスターカード
・スピリットオブ東京ディズニーランド

「働いてきた年数を称える」勤続年ピン

これは、1年、3年、10年と働いた年数によってディズニーキャラクターのかかれたピンバッチが付与されるというもの。これは働いている人が胸につけている「ネームプレート」につけることのできるバッチです。

デザインも可愛らしく、ディズニー好きにはたまらない「グッズ集め」のような感覚で、つい働き続けてしまう人もいるというほどです。さらには「●年働いたキャストである」というのが一目でわかるために、自分の行動にも責任感を持つようになります。

「上司が部下を褒める」ファイブスターカード

ファイブスターカードとは、素晴らしいサービスを提供しているキャストに上司が手渡すカードのことです。このカードを受け取れば、ディズニーが提供するオリジナル記念品と交換することができたり、定期的に開催される限定パーティに参加することができたりと、ディズニー好きには嬉しいイベントが用意されています。

パーティには、ディズニーキャラクターが登場し、それらを楽しむキャストは、もはやゲストと同じ立場です。「よりディズニーを好きになること」が、よりよいパフォーマンスというモチベーションにもつながり、良い循環がうまれています。

「キャスト同士で褒めあう」スピリットオブ東京ディズニーランド

ディズニーでは、キャスト間で送りあうことのできる賞賛の仕組みもあります。メッセージカードに、褒めたいキャストの名前を書き、送りあうというもので、キャスト同士で日常の行動を褒めあうことで、「見てくれている人がいる」と行動のモチベーションになっているといいます。

また、このメッセージ交換の数や内容を元に選ばれたキャストが、約2千人ものキャストの前で表彰される「スピリッド・アワード」という式もあり、ここでも「スピリット・アワードピン」という胸につけるバッチが授与され、キャストの自信と、責任感の向上に一役を買っています。

賞賛は、モチベーションに

拍手

こう考えていくと、この「賞賛のための一手間」は決して無駄ではなく、結果的にディズニー全体をよりよくしていることは間違いありません。

自分自身が「よくできた」と思った行動を誰にも見てもらえない、ということが続くと、人はやる気を失っていきがちです。普段から些細なことでも褒めあうことは「自分を見てくれている人がいる」という、喜びをもたらしてくれます。

褒められれば、嬉しくなる。そして、自信がつく。また、授与されたピンを胸につければ、それに恥じない行動をしたくなる……。この「褒める」ことから生まれる循環が、よりよいサービスを生み出し続けるディズニーの秘密なのではないでしょうか。