着て寝るだけで疲労回復!?「攻めの休養」を打ち出したリカバリーウェアが25万着突破。ベネクス・中村太一インタビュー

株式会社ベネクス代表取締役・中村太一
株式会社ベネクス(http://www.venex-j.co.jp/) 代表取締役・中村太一(なかむら・たいち) 1980年神奈川県小田原市生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、2003年に有料老人ホームの運営およびコンサルティング会社に入社。05年に退職し、株式会社ベネクス設立。同年、ナノ素材の共同研究を開始。07年に特殊繊維素材が完成。09年より疲労回復ウェアのテスト販売をスタート。同年、神奈川県と東海大学の産学公連携事業としてウェア開発を開始。2010年にリカバリーウェアの名称で商品化をした。

「運動中に着てはいけないスポーツウェア」が慢性疲労を抱える現代人に求められ、25万着のヒット商品に

「運動中に着てはいけないスポーツウェア」が話題になっている。きっと頭の中にはてなマークを浮かべた人も多いはず。謎かけではない。2013年にドイツで行われた世界最大のスポーツ用品見本市「ISPO」で「革命的なスポーツギア」と評された株式会社VENEX(ベネクス)の「リカバリーウェア」のキャッチコピーである。この見本市の商品コンテストで日本企業初となるゴールドウィナー(最高賞)を受賞した。

 スポーツウェアというと、吸汗性や速乾性に優れた機能性ウェアや、身体に圧を加えることで運動機能のパフォーマンスを引き出すコンプレッションウェアが一般的だ。これらはすべて運動中に着るもの。これに対しリカバリーウェアは、休養・睡眠時に着ることで疲労回復を助ける働きを狙ったものだ。

 トライアスロンの佐藤優香選手やプロレスラーの棚橋弘至選手をはじめ、プロボクサー、総合格闘家、プロラグビー選手など多くのアスリートに愛用されているだけでなく、ビジネスパーソンや健康志向の主婦の間で評判となり、25万着突破のヒット商品になっているという。慢性的に疲労を抱える現代人にとって、疲労回復は今や切実なテーマとなっているのだ。

 さっそくリカバリーウェアを取り寄せ、睡眠時に着るようにしたところ、すこぶる調子がいい。20代の頃は一晩寝れば、翌朝にはすっきりしていたものだが、30代半ばを過ぎたあたりからなかなか疲れが抜けないことを感じていた。もともと寝つきが悪く、途中で目が覚めることも多かった。眠りが浅いせいか、日中も少し気怠いような感じが残ってしまうのだ。

 ところが、リカバリーウェアを着て床につくと、知らぬ間に眠ってしまい、途中で目が覚めることもなかった。眠りが深いらしく翌朝も気分がいい。速乾性に優れているため寝汗をかいても不快感はなく、伸縮性に優れているので身体もリラックスできる。まさに休養に特化したウェアだ。今では睡眠時のマストアイテムとなった。

 それにしても、ただ着て寝ているだけなのに、一体どういったメカニズムが働いているのだろう? ベネクス創業者の中村太一氏に特殊新素材「PHT」について説明していただいた。

sab_3「子どもの頃は、くたくたになるまで遊んでも一晩眠れば100%回復していたものですよね。これは。自律神経の働きが活発だからです。自律神経というのは、自分で意識してコントロールできるものではなく、勝手に身体の調子を整えてくれる神経ですが、自動車でいえばアクセルの役割をする交感神経と、ブレーキの役割をする副交感神経があり、相反する両方の役割で身体のバランスをとっているわけです。猫の場合でいうと、外敵の危険を察知して、すぐに俊敏に動ける状態は交感神経が活発になっているときで、このときは心拍数も早く、緊張状態にあります。それに対し、副交感神経が優位になっているときは、猫がお腹を出して日向ぼっこをしているような状態です。人間も同様で、日中活発に動くためには、ある程度、緊張状態にある必要があり、日が沈むにつれてだんだん副交感神経が優位になって回復モードに移行するわけです」

 緊張状態を解いて筋肉を弛緩させることで、血管が拡張されて血流量が増す。このメカニズムが疲労を回復させるのだ。

「子どもは日が暮れると電池が切れたみたいにすぐに寝てしまい、揺すっても起きないものですが、30歳を過ぎたあたりから、どうしても自律神経の働きが衰えてきてしまい、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなってしまうものなんです。そのため疲れがとれない。そこで我々は自律神経に着目しました。PHTという素材にはプラチナをベースとした鉱物が、ナノ化(10億分の1)して練り込まれています。これが微弱な電磁波を発し、自律神経を刺激する働きをします」

 大人になると何かとお酒を飲む機会が増える。一日の終わりに晩酌を欠かせないという人も多いだろう。飲んでいるときは楽しいが、困るのが二日酔いだ。しかし、リカバリーウェアを着て眠ると、心なしか二日酔いが軽減されるように感じた。中村氏に聞くと、やはり効果が期待できるということだった。

「私も二日酔い予防に着てます(笑)。アルコールというのは興奮剤と麻酔薬のあいの子みたいなものなんです。お酒を飲むとテンションが上がりますよね。これは自律神経が興奮している状態ですが、一方で、麻酔が効いているような状態ですから眠くなってしまう。しかし、副交感神経にスイッチしているわけではない。いわば緊張状態のまま眠っているような状態です。自律神経で考えると非常に悪い状態なので、眠ってもぜんぜん回復しないということになる。リカバリーウェアを着て眠ることで、二日酔いが完全に解消されることはないかもしれませんが、副交感神経にスイッチすることで、着ないよりは着たほうが多少はすっきり起きられるのではないかと思いますね」

 また、パソコンやスマホに使われるブルーライトは交感神経を強く刺激するそうだ。そういえば、寝る直前までスマホを見ていたりして、夜になっても目が冴えている。そのため多くの現代人が浅い眠りになっているのかもしれない。リカバリーウェアはさらにストレス解消の効果も期待されるそうだ。アスリートだけでなく、ビジネスパーソンが愛用するのも納得がいく。

「まさかこれほど多くの人が疲労回復や眠りを求めているとは想定していませんでした。当初はアスリート向けに販売を開始したのですが、新宿伊勢丹を皮切りに大手百貨店のスポーツ用品売り場に置いていただけたことで、フィットネスやゴルフ好きのビジネスパーソンや主婦層へと広がっていったんです。これほど潜在的なニーズがあるとは考えてもいませんでしたね」

一度きりの人生だから、自分が生きた証しとして何かを残したい。何を事業にすべきかずっと模索していた

 アスリートやビジネスパーソンに愛用されるリカバリーウェアだが、もともとは介護業界向けに開発されたという経緯がある。発想の原点は、中村氏の前職である有料老人ホームのコンサルタント会社時代に遡る。当時から中村氏は起業を志し、何を事業とすべきかをずっと模索していたという。父親をはじめ親戚一同が起業家という家系であったため、そうした視点を持って社会と関わることが中村氏にとっては自然なことだった。

sab_1「父や親戚から影響を受けているという自覚はあまりないんですが、妻に『あなたの親族は自分が想い描いたとおりの世の中になっていくと1ミリも疑いを持っていない』とよく言われるんです。たしかに事業をやるということは、ビジョンを掲げて、自分なりにいろいろと組み立てながらそこに向かって前進していくものですよね。普通だと、そんなに思い通りになるものではないと多少は揺らぐものですが、事業をやる人は疑いを持たない。親からも『将来とは、自分が想い描いたとおりになるものだ』とよく言われてましたね」

 とはいえ、幼い頃から起業家になるための英才教育を受けていたわけでもない。ごく普通の若者と同じく、中村氏も将来の仕事など考えたこともなかった。高校時代は所属するラグビー部で「高校ラガーマンの甲子園」と呼ばれる花園をめざし、無心でスポーツに打ち込んでいた。このとき、人生観が変わるような出来事があったという。

「高校2年のときに花園出場をかけた神奈川県の決勝大会にレギュラー出場したんですが、試合中、タックルをした瞬間に記憶が飛んでしまった。救急車で運ばれて精密検査を受けました。そのときは大丈夫だったんですが、翌日、学校に行こうとしたら、駅の改札で定期券が手から滑り落ち、拾おうとしても指でつまめないんです。左手の感覚と脳がつながっていないような違和感があったので、次の日に病院で検査をしたら、脳を覆っている硬膜が破れて出血していて、命にかかわるような危険な状態だったんです。幸い手術をせずに済んだのですが、ラグビーのようなハードなスポーツが一切できなくなってしまった」

 ラグビーの夢が途絶え、中村氏は目的を見失ってしまう。やりたいことがなくなり、しばらく腐っていたが、これではいけないとイギリスに短期留学をした。

「世界のいろんな人たちを見ているうちに、死んでもおかしくない怪我をしたこともあって、『一度きりの人生なんだから、悔いのないように生きたい』と思うようになったんです。自分が生きた証しとして何かを残したいと思った。それがすぐに起業につながったわけではないんですが、何かをやりたいという気持ちが漠然と芽生えて、以来ずっとそれがありますよね」

 しかし、大学に進学してもその“何か”が見つからない。何をやっていても心にぽっかり穴が開いたような気分だった。中村氏はいわゆるモラトリアムな大学時代を過ごすことになる。

「まわりが就職活動で動きだして、初めて仕事というものを意識しはじめた。だけど、自分がずっとサラリーマンを続けていけるとはとても思えない。かといって、自分で商売を始めるかというと、具体的に何も思い浮かばない。いろいろ考えた結果、とりあえず3年だけ会社勤めをして社会勉強をしようと思ったんです。そのままズルズル居続けてしまうのも嫌だったので、最初から3年で辞める前提で採用してもらおうと考えました。面接で御社のために一生懸命頑張ります、と言いながら3年経って突然、辞めますとなったら、お世話になった人に砂をかけるみたいで抵抗感があったんです」

 商売を学ぶために候補としたのが商社とコンサルタント会社だった。しかし、採用する側が、3年だけという虫のいい話を受け入れるとも思えない。当然のごとく商社にはあっさり断られた。しかし、とあるコンサルタント会社の採用試験で「面白いやつだ」ということになり、入社が決まった。

「3年で辞めるかわりに、その間、がむしゃらに働いて絶対に給料以上のパフォーマンスを出します、といった話を面接のときにしました。その会社は自動車業界や外食産業、住宅や医療といった様々な分野にそれぞれコンサルティングチームがあって、どこに配属されるかわからなかったんですが、たまたま当時、子会社ができたばかりで、出向することになった。それが有料老人ホームのコンサルタント会社だったんです」

 当初の仕事は、岐阜県にできたばかりの有料老人ホームの営業担当だった。しかし、なかなか入居者が集まらず部屋が空いていたため、中村氏は泊まり込みで勤務するようになる。ヘルパー2級の資格をとり、ときには自らも介護スタッフをサポートした。この経験から、実際の現場にどういった問題があるかを身をもって知ることになった。特に大変だったのが、夜間のケアだ。

「認知症の方が夜中に突然叫びだしたり、日常的に何か問題が起きるんです。だけど、夜間はスタッフが少ないので、対応しきれない。介護の現場は慢性的に人手不足なので、きちんとケアしたいんだけど、できないことがいっぱいあるものなんです。その最たるものが、床ずれの問題でした。寝たきりのお年寄りが一度床ずれになると大変な悪循環になります。骨に圧がかかり続けると皮膚が腐ってしまうので、ケアのために軟膏を塗ったりする手間がどんどん増えていく。床ずれの賞状が進行すると皮膚が穴のような状態になってしまい、そこから細菌感染をして亡くなってしまうケースもあるので、そうならないように3時間置きくらいに寝返りをうたせてあげるべきなんですが、どうしても人手が足りない。寝ている人を動かすというのは重労働ですから、夜中にスタッフ一人でそれをやるのは実際には難しいですし、夜中にそんなことをしていたら、他のお年寄りまで起こしてしまうことになってしまう」

 床ずれ予防に「自動寝返りベッド」というものがあったが、夜中にお年寄りがビックリして叫んでしまうため、実用的と言えるものではなかった。そこで中村氏は「快適に寝たままでなんとかできないだろうか」と考えはじめた。この発想がリカバリーウェアの原点になるのだ。

「床ずれは一カ所に圧がかかることが問題なわけですが、これに関しては介護メーカー各社が体圧を分散する構造のマットをすでに開発していました。もう一つに、お年寄りは非常に代謝が悪いという問題があった。つまり自律神経の働きが非常に悪いんです。どうすれば自律神経の働きを活発にできるかを調べたところ、繊維に微弱な電磁波を出すものを織り込んで、自律神経に刺激を与えればいいのではないかと考えたんです」

事業で失敗しても死ぬわけではない。土俵際いっぱいで、介護業界からスポーツ業界へ大きく舵を切った

main_sab
 中村氏は当初の予定どおり3年で起業に踏み切った。しかし、「床ずれ予防」という解決したい問題を持っているだけで、具体策があるわけでもない。無謀といえば無謀な起業である。そこで中村氏はどう動いたのだろう?

「私は知識を持っていないので、プロフェッショナルの方に教えていただく必要があった。今も参加しているのですが、まず東京工業大学の定例の勉強会に参加するようにしたんです。そこで、東工大のドクターたちがスタートさせたナノ微粒子の開発ベンチャーを見つけ、アポをとりました。研究畑出身の会長に相談したところ、その会社は携帯電話の記憶容量を増やしたり、液晶テレビの反応速度を上げるといった工業的なテクノロジーを主に研究していて、ナノ微粒子の技術を用いて人体に影響を与えるという発想はなかったんですね。しかし、社員の8割は博士号を持ち、みなさんが特許を持っているという開発に特化した会社ですから、理論上は可能性があることをわかっていた。先生方と相談していくうちにナノプラチナの話が出てきて、さらに他のナノ素材も組み合わせれば、たしかに効果があるかもしれないとなったんです」

 上手くいった暁には、素材をこの開発会社から購入するという確約のもと、無償で開発を引き受けてもらえることになった。こうしてナノプラチナに効果がありそうだというメドは立ったが、今度はどうやってそれを実用化するかだ。鉱物を繊維に埋め込むことができるのか? これもまたアテのない話だった。

「インターネットで繊維会社をいくつも調べてアポをとりました。しかし、鉱物を織り込んだら機械が壊れるかもしれないと毎回のように断られましたね。私もしつこいですから、できなければ困ると頼み込んだところ、ある会社の方が他の会社を紹介してくれたんです。だけど、その会社にも断られて、紹介のさらに紹介といった感じでたらい回しにされましたね(笑)。面倒くさいやつが来たと思われたでしょうけど、一方で面白がってもらえたとも思う。かつて花形産業だった繊維業界も、今は生産拠点が中国などに移ってしまい斜陽産業になっています。その中で生き残っているのは、こだわりある付加価値の高い技術を持った会社です。そういう会社の方たちは、ものづくりの話がすごく好きで、なんとか協力しようとしてくれたんです」

 開発会社にせよ繊維会社にせよ、門前払いになってもおかしくない状況だ。「運が良かった」と中村氏は振り返るが、素人だとバカにされることを恐れず、最大限の行動をとったことで活路が開けたのだ。また、床ずれ予防という目的があったからこそ人を巻き込むことができたのだろう。こうしてナノプラチナを繊維に織り込むことに成功し、中村氏は床ずれ予防のマットを商品化した。さっそく前職でつながりのあった介護事業者に営業を試みたが……。

「これがまったく売れなかった。前職のコネクションで商品説明のアポイントはとれるも、実際に商談をすると相手にもされないという現実を目の当たりしたわけですが、それ以前に10万円という価格設定が受け入れてもらえなかった。介護の現場というのは、お年寄りにいいことをしたいと誰しも思っているものですが、負担する家族としては、なるべく出費を押さえたいというのが正直なところです。いいものだと理解してもらえても、値段がわかった途端、反応が変わってしまうんです。そこでベッドマットから床ずれ予防のウェアにすることで繊維量を減らして値段を安くすることしました。しかし、寝たきりのお年寄りですから、着せたり脱がせたりするのがまた大変だという意見があった。そこでターゲットを見直すことにしたんです」

 むしろ介護スタッフにこそニーズがあるのではないかと中村氏は考えた。介護スタッフは3日に一度ほど夜勤シフトがあるため、生活リズムを崩し、慢性的な疲労を抱えている。それが離職率の高さにもつながっていた。そこで、「床ずれ予防」から「休養」へと舵を切り、さっそく介護用品の展示会にシャツを出展した。それが思わぬところから反応があったのだ。世界30カ国で会員数300万人を数えるフィットネスクラブ「ゴールドジム」のバイヤーが興味を示した。

「身体を鍛えるには、運動・栄養・休養の三つの要素がありますが、運動と栄養については、行き着くところまで研究されつくされています。残るは休養というわけですが、これに関してはマッサージをしたり、お風呂に入って寝るくらいしかなくて、世界的に見てもまだ手つかずの領域でした。ちょうどスポーツ業界で休養が着目されはじめたタイミングだったんです。何年もジムに通われている方は、だいたいどれくらいトレーニングをすると、翌日どれくらいの筋肉痛になるかを体感的に知っています。それがこのウェアを試すと、翌日の筋肉痛が断然、軽いとなった。そうすると、次の日はもう少し多めにトレーニングができて、次のステージにレベルアップできる。ウェアを使った方の競技成績が軒並みアップして、これはすごいと評判になった。一挙に口コミで広がっていきましたね」

 こうして介護業界からスポーツ業界へとさらに舵を切り、『攻めの休養』を打ち出すことにした。それまでにかなりの時間と自己資金を投入し、その間、営業代行の仕事と借入でなんとかしのいでいたが、借金が1億円にまで膨らんでいた。「土俵際いっぱいだった」と中村氏は振り返る。

「介護業界ならそれまでの経験でおおよそは判断できるんですが、スポーツ業界は本当に市場があるのか未知数でした。そこで役員をスポーツ科学の最先端にあったオーストラリアの国立スポーツ研究所(AIS)へ視察に向かわせたんです。AISは2006年にリカバリーセンターという研究施設を立ち上げ、リカバリーについて徹底的に研究していました。そこでリカバリーのためのウェアがあるかどうか聞くと、『なんですかそれは?』という反応だった。これは間違いなく誰もやっていない。これから市場も大きくなりそうだし、勝機があるはずだと確信しました。介護用ベッドマットから撤退するのは残念でしたが、リカバリーウェアに全力投球するほかない状況でした」

 こうして人との縁に助けられながら、紆余曲折を経てベネクスの事業は軌道に乗っていった。途中で諦めてもおかしくない状況がいくつもあったように思えるが、中村氏は一切そうは考えなかったそうだ。

「高校時代に大怪我を経験したことで、かりに事業で失敗して借金ができたとしても、『べつに死ぬわけじゃない』という感覚は常にありました。それが自分のモットーにもなっていますね。もう一つは、リカバリーウェアでいくと方向転換したとき、『世界のリカバリー市場を創造し、それに関わる全ての人を元気にする』というミッションを自分の中で決めたことが大きかった。会社をやる目的にも、いろいろあると思いますが、やっぱり社会をより良くしたいという強い思いを持つことが重要だと思います。世界のリカバリー市場を作っていくためには、まずその土台として、リカバリーの重要さを多くの人に啓蒙していく必要があります。今後はウェアに限定せず、寝具や休養専用のフィットネスプログラムを開発するなど、我々が技術開発をして、より多くの人が積極的に休養をとるためのお手伝いをしていきたいですね」

中村太一氏を知る3つのこと

座右の書

『生き方―人間として一番大切なこと』稲盛和夫/著
「経営者である前に、一人の人間としてどう生きるかということを大切にされている方です。いろんな経営手法があっていいと思うんですが、事業のやり方を考えるとき、やっぱりその時々で迷いが生じてくる。そんなときに読んで、『俺は社会をもっと良くしていくために仕事をしているんだ』と漠然と思っていたことを、ぐっと自分の腹に落とし込めたのがこの本でした。一人の人間として、どう生きたいと思っているかが重要だということに気づかされましたね」

自身のリカバリー法

「毎日心がけているのは、リカバリーウェアを着て良く寝るということくらいです(笑)。あとは、週に1回フィットネスジムに行って運動をすることと、なるべく東京を離れることくらいです。妻と子供は小田原に住んでいるんですが、子どもの教育にとってもその方がいいと考えてのことです。やっぱり人間は自然のあるところで生活しないと、心身のバランスがおかしくなってくると思うんです。ずっと都市部にいるのはよくないことだと感じますね。家族サービスも含めて、意識的に休日は自然のなかで過ごすようにしています」

起業を目指す人へのアドバイス

「やってからわかることが非常に多いと思います。起業家志望の若い人と話すことがけっこうあるんですが、まだやっていないからわからないことで堂々めぐりになっているが多い。そこでいくら考えても、実際にやってみたらぜんぜん違った、みたいな(笑)。考えることも大切ですけど、野球と同じで、まず打席に立って球の早さを体感してから作戦を練った方が近道だと思いますね」

取材・文●大寺 明  写真●高村 征也


オフィスワーカーのための新商品を発売

アスリートだけでなく、「リカバリー」はすべての現代人の課題です。ハードな運動をしているわけでもなく、パソコンに向かって仕事をしているだけなのに慢性的な疲労を感じる……。モニターを見続ける目の疲れからか、頭痛や首回りのコリをひどい……。こうした疲れは多くのビジネスパーソンが肌身で感じていること。首の頸部は内臓や血管をコントロールする自律神経が集中している箇所であるため慢性的な疲労につながり、目の疲れはパソコンやスマホに使われるブルーライトが交換神経を過剰に刺激しているせいかもしれません。リカバリーウェアのユーザーからこうした要望を受け、ベネクスではオフィスワーカー用の新商品を開発しました。それが、目の疲れを癒す「アクセサリーアイマスク(税込3132円)」と、職場のお昼寝に最適な「2WAYコンフォート(税込3888円)」です。厚生労働省が仕事中の眠気には「20分ほどの昼寝が効果的」と発表しているように、わずかな時間でも休養をとった方が仕事の効率は確実に上がります。職場における休養を、ベネクスは強力にアシストします。