起業した人に無料で届く『創業手帳』は、会社の『母子手帳』。日本の起業の生存率を上げるビズシード代表・大久保幸世インタビュー

ビズシード株式会社 代表取締役社長・大久保 幸世(おおくぼ・こうせい) 1978年神奈川県出身。明治大学経営学部卒業後、外資系保険会社に入社。その後、株式会社ライブドアを経て、メイクショップ株式会社(現GMOメイクショップ株式会社)の役員に就任し、ネットショップの支援活動に尽力。2014年にビズシード株式会社を設立し、「日本の起業の成功率を上げる」をミッションとして『創業手帳』を創刊。同年、フィリピンのセブ島に支社を設立し、アメリカでも創業支援メディアを展開している。

起業数が少ないため、日本の公的な創業支援は世界的に見ても手厚い。それ以上に「起業の成功率を上げる」ことが大切

 ここ1、2年のうちに起業した人なら、ほぼ全員が知っているという起業ガイドブックがあることをご存知だろうか。ビズシード株式会社が2014年より月1で発行している『創業手帳』である。毎月登記される約1万社に無料で配布され、そのほか金融機関や地方自治体、提携する税理士への配布を含めると毎月の部数は約1万5000部。WEBと電子書籍の時代に、あえてコストのかかる紙の本を無料で配っているのだ。

 やや古風な誌名もあって、昔からある媒体と思い込んでいる人もいるかもしれないが、『創業手帳』はベンチャー企業によるまったく新しい情報メディアである。たしかに経営者や中小企業に無料で届けられる業界誌やビジネス誌はこれまでにもあった。しかし、『創業手帳』はそれとは趣を異にする。経営者インタビューといった雑誌的なページが巻頭を飾るものの、全体を通して資金調達や会計のノウハウ、オフィスの選び方や販路の拡大方法など徹頭徹尾、実践的な起業ノウハウがまとめられているのだ。ビズシード創業者の大久保幸世氏によると「起業の母子手帳」として位置付けているという。

sab_01_w268「起業に憧れている人が読むというより、起業直後の人が読むという明確なターゲットがある媒体です。起業直後はみなさん先輩起業家や役所や銀行など、いろんなところに話を聞いて回りますよね。しかし、そうして得たノウハウというのは非常にばらつきがあるものです。たしかに先輩起業家の話はタメになる話だったかもしれない。しかし、起業に関する情報は変化が激しく、変わってしまう部分も多い。そこで弊社では全国の起業家に代わって、ありとあらゆる最新の情報を集めてお伝えしています」

 特に公的な創業補助金の情報や金融機関の融資情報は最新のものでなければ役に立たない。だからこそ『創業手帳』は毎月改訂にこだわる。一般の人には興味のない情報かもしれないが、起業した人にとっては喉から手が出るほど欲しい情報だ。

「ニュースメディアの情報は、面白い話や目新しい話が中心になりますけど、実際に起業した人にとって重要なのは、むしろ地味な話や失敗の経験則に基づいた話なんですよね。成功した話はしゃべる側もモチベーションが上がるし、みんな聞きたがるので記事になりやすい。それに対して『創業手帳』の記事は一見ものすごく地味な情報ばかりです。読み物として面白く作るというより、本当に困っている人の役に立てばいいという考えです。地味な情報や失敗した話というのはニュースメディアでは埋もれてしまいがちです。そうした情報をきっちりお伝えするのが『創業手帳』の役割だと考えています」

『創業手帳』は紙に留まらずWEB版でも情報を発信し、さらにはシェアオフィスの検索サイト『eシェアオフィス』や、『e税理士』をはじめとする士業のポータルサイトをいくつも運営している。起業に関するサービスを紙媒体とWEBで複合的に展開しているのだ。紙とWEB、それぞれの位置付けを聞いた。

sab_02_w268「紙媒体とWEBだけでなく、セミナーの開催や個別相談もやっています。紙媒体は集中して読むのに適しているし、WEBは広くアクセスできますし、個別相談はより深い関係が築ける。それぞれに特性があるので、それに合わせて情報発信をしているんですね。ベンチャーやスタートアップというとWEBが中心で、紙媒体をやっているところは珍しい。一周して逆に目新しい感じもあるかもしれませんが、実際は世の中の電子化の比率でいうと、アメリカですら紙と電子書籍は逆転していません。日本はさらに遅れていて9割以上が今も紙なんです。早く読める、比較がしやすい、付箋が貼れるといった紙の特性があって、現場で使いやすいという点ではまだ紙の優位性が強い。だからといって紙にこだわっているわけではありません。問い合わせのほとんどがWEB経由ですし、セミナーやコンサルティングにも力を入れています。ただしこれも紙媒体があってこそ出来ていることで、『創業手帳』を入り口として、WEB版やそれぞれのポータルサイトにアクセスしてもらうというかたちですね」

 一切出し惜しみすることなく有益な情報を伝えるのがビズシードの方針。しかし、ユーザーからすると、そんな美味い話などあるわけもなく、どこかでお金を要求されるのではないかと警戒してしまう。ところがビズシードのサービスは一貫して無料なのである。

「起業の成功率を上げるということが我々のゴールです。そのために必要なことは全て行いますが、起業家からは一切お金をいただきません。各自治体や金融機関の広告費で成り立っているわけですが、広告メディアだからといって内容の薄いものを出すつもりはありません。民間企業という自由な立場だからこそ、本当に有益な情報を発信していけるはずだと考えています。グーグルもフェイスブックも全て広告メディアですけど、世界的なインフラになっている。『創業手帳』も『起業が初めてで困っている人に役立つ社会のインフラ』を目指しています」

 なぜ大久保氏は「起業の成功率を上げる」ことを目指すのか。そこには毎月登記される約1万社に対し、毎月廃業する会社がそれを上回る1万社以上という実情がある。3割にあたる3000社が創業1年以内に廃業しているのだ。

sab_03_w268「実は日本って公的な創業支援が世界で一番充実している国なんです。たしかにアメリカはベンチャーキャピタルの投資やスタートアップのコミュニティが充実しています。社会的な理解も高い。一方、日本は創業を支援する環境がダメかというと、結果的に起業する側に恵まれた環境になっています。どういうことかというと、日本は起業する率が低い分、公的な支援が多く、しかもお金の量に対して、事業を始める人が少ない。だから国全体の金融緩和もありますが、融資の利息も低い。今、公的な創業融資だと1~2%で無担保・無保証で必要な事業資金を貸してくれたりしますが、そんな恵まれた融資条件は世界のどこを見てもないですよ。市場原理で『挑戦する人』に対して、お金の供給、支援側が多いのでそういうことが起こります。全国47都道府県で細かく平等に創業支援をしている国は世界中で日本くらいだと思います。海外でも事業展開していますが、日本の公的支援のような仕組みがあればいいんですが、日本のような環境はありません。それでも海外のほうが当たり前のように起業します。
 国の財政の大半をまかなっているのはサラリーマンの所得税と会社の法人税ですが、そのパイ自体が縮小しつつある。そのため起業数を増やさなければいけないという社会的な要請に基づいているわけです。それも重要なことなんですが、一方で起業の成功率を上げたほうが効果的なのではないかと考えています。会社は初期の頃が死ぬ確率がもっとも高い。時間が経過するにしたがって規模が大きくなり、生存率は高くなります。しかし、これまで起業直後にやるべきことの確かな情報があまりなかった。我々がそれを担っていきたいと考えています」

起業が身近な環境で育った。だから起業に憧れはなかった。一筋縄ではいかないと思うからこそ、起業に向けてキャリアを逆算

 毎月本を作るだけでも大変なことなのに、いくつものポータルサイトを運営し、セミナーやコンサルティングまで行っているのだからあらためて驚く。それでいて場当たり的に手を広げているという感じでもなくて、いずれも極めて完成度の高いサービスなのだ。これが創業2年目のベンチャー企業によるものかと思うと、さらに驚きは倍増する。起業家を支援する起業家、大久保氏のバックグボーンとは?

「もともと大学では経営学部を専攻していて、メディア志望というわけではなかったんです。父が不動産業を営んでいたせいもあってか、学生の頃からいずれは起業して経営者になりたいと考えていました。ただし、自分にとって経営は身近にあるリアルなことで、憧れはまったくなかった。ニュースメディアが伝えるような起業家のサクセスストーリーも素晴らしいことですけど、むしろ経営は大変なことがほとんどで、一筋縄ではいかないものだという感覚が子どもの頃からあったんですね。その一方で、どうせやるならやり甲斐のある仕事をしたいという気持ちがあって、そのためには自分で判断できる経営者になることが重要だと考えていました。それはそれで大変なことだという認識からスタートしているので、経営者は美味しい、という感覚はなかったですね」

 やり甲斐や自己実現の一方で、実際の起業は険しい道のりだ。それは登山にも似ている。がむしゃらに最短ルートを登っても頂上に辿り着けるとは限らない。一見遠回りに見えても、登山ルートを決めて一歩一歩進んでいくほうが確実かもしれない。

sab_04_w268「学生の頃に30代半ばで起業しようと考えたんです。そこからキャリアを逆算して、まず副社長を経験しようと思ったんですね。会社のナンバー1になると、見えなくなる部分もあるはずです。会社のナンバー2として修業しようと思いました。だけど、現実的に考えると、大企業の二番手になることはあり得ない。小さい会社の二番手として番頭的な仕事をするつもりでした。そこから逆算すると、まず大企業で経験を積んで、その経験が活かせるベンチャー企業に移り、その後、小さい会社に入って経営陣に近い立場で仕事をする。だんだん規模を小さくしていって、最終的には一人で事業を起こすという」

 大学卒業後、計画どおり大久保氏は業界最大手の外資系保険会社に入社。ダイレクト・マーケティングの仕事に携わった。

「テレビCMや新聞広告を出した後、ダイレクトメールを送って、その反響によって全国のコールセンターが動く。これは保険を売るのも健康食品を売るのもあまり変わらないんですよね。いわゆる通販業界のノウハウなので業界を問わないものです。これは今も非常に役立っています。その後、計画どおりベンチャーに転職するわけですが、それが事件前のライブドアでした。起業のモチベーションとして、お金を稼ぎたいとか、人を動かしたいとかいろいろありますが、自分は社会的なインパクトを重視していました。きれいごとじゃなく、当然、事業としてやるからにはお金を生み出さないといけない。お金を儲けるにもいろんな事業があるわけですが、その中でも面白いかどうかを重視していたわけです。面接では、日本の中心に変化を作り出すような仕事がしたい、と話しましたね」

 それが2005年のこと。大久保氏26歳の頃である。ライブドアショックの前年にあたり、IT業界の寵児ライブドアがまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃だ。ところが翌年のライブドア事件により会社は危機的状況に……。在籍していた部署の売却に合わせて大久保氏は転職を決意する。

「たしかに半年間は日本の変化の中心でしたね(苦笑)。起業は上がり阪ですから助けてくれる人がいるものですけど、下り坂になると誰も助けてくれない。下り坂のときほど人の本質や本心がわかると思います。むしろ起業するときよりも人を見る目は磨かれるかもしれない。起業って大変なんでしょ?とみんな言いますけど、自分から言わせると、起業よりも会社を潰すほうが大変なことなんですよ。それを自分の会社ではなくて、他社で経験できたことは貴重な経験でした。短期的には大変でしたけど、もしあのままライブドアでバブルを謳歌していたら、それはそれで問題だったかもしれない。起業家志望の人にアドバイスするとしたら、会社の金看板に頼るべきではないと伝えたいです。それがなくなったときに通用するか否かということが起業家にとって重要な課題なんです」

 そして大久保氏はネットショップのシステム会社であるメイクショップ株式会社(現GMOメイクショップ株式会社)に転職。今でこそカート業界の流通額日本一を誇る大手だが、2007年当時はまだ小規模な外資系企業にすぎなかった。

「面接のとき、普通は履歴書を持っていくものですけど、自分は事業計画書を持って行ったんです。サラリーマンという立場だと、こういう仕事がやりたいと希望しても結局は人手が足りない部署に回されるケースが多い。それを自分でコントロールするには、自分で事業を創るほうがいいだろうと。そのために事業計画書を持っていったわけです」

 入社後はマネージャー職からすぐに役員に就任。まさに二番手のポジションに就くことができた。メイクショップ時代の7年間で大久保氏は2万社におよぶネットショップを見てきたという。そこで気づかされたのがノウハウの重要さだ。

sab_05_w268「上手くいった会社の理由は千差万別ですが、失敗する会社の理由はほとんど一緒なんですよね。ノウハウを知らないために断念してしまうんです。ネットショップの場合、このパターンはNGというのがあって、たとえば会員登録のタイミングが決済の前なのか後なのか。本質的にはどちらでもいいことですけど、1年後には1.5倍の差がつくというノウハウがたくさんあるんです。それを知っているか知らないかで成否が分かれてきます。これは1社だけで検証しようとしてもわからない。2万社を見てきたことで統計的に悪いパターンと良いパターンがわかってくるものなんです。メイクショップ時代はNGのパターンを全てチェックして、強制的に売れるための仕組みを入れ込むように会社全体で取り組んでいました。顧客の拡大を狙うより、今のお客さんの生存率を上げるほうが効果的なんです。事業をはじめて頑張ろうというお客様のためになることをしたからこそ、メイクショップは業界1位へと成長していったんですね」

起業情報は面白さより信頼性が重要。自社で「最良の改善策」を検証した上で、ノウハウ情報を発信していく

 メイクショップ時代の大久保氏はネットショップに対してトレーニングやノウハウの提供を行うことで成功率を上げることに尽力してきた。そこで培ってきた知見がそのまま『創業手帳』のアイデアに結びついていったという。学生の頃、30代半ばの起業を目指していたわけだが、本当に35歳で起業することになる。

「ある朝、目覚めた瞬間に思いついたんですよね(笑)。それまでメイクショップの売上を伸ばすためにノウハウ集の冊子を作ったり、セミナーやコンサルティング業務をやってきたわけですが、これを日本の全ての起業家のためにできれば、とても有意義だろうと。自分がこれまで培ってきたものを最大限に生かせるはずだと思いました。しかし、起業前にいろんな人に相談したところ、応援してくれる人もいましたし、無理だと諭されたこともありました。なんのバックボーンもない人間が独自のメディアを持つのがいかに無謀なことかと。だけど自分としては、これはメディアではなく、日本の創業の成功率を上げるトレーニングの仕事だと考えていました」

 そして大久保氏は有給休暇の消化もせずに同社の取締役として3月末日の深夜までフルに働いた上で退任。その10日後の4月10日にビズシードを設立。翌月の5月には早くも『創業手帳』第1号を発行。それにしてもなんというスピードだろう。準備期間もなくいきなり猛烈なスタートダッシュである。

「もし創刊に1年かかっていたら、3回くらい潰れていたかもしれない(笑)。起業家のアドバイスでもよく話すんですが、資金調達を考えるより期間を半分にしてサイクルを早くしたほうが良い結果になるケースがある。全て自己資金で創業しましたが、その際、100ページくらいの事業計画書を作成しました。あくまでメンバーに向けたマニュアル的なものとして作成したんですが、自分の考えを整理するためにも事業計画書は大切です。それをベンチャーキャピタル10社くらいに見せて回ったんですね。それは出資を募るためではなく、客観的な意見をもらうためでした。電子書籍と勘違いされたりして、おおむねよくわからないという感想が多かったですが(笑)。この業界に詳しい感覚の鋭い人で感嘆していただいた方もいましたが、やはり新しいサービスは口で言っているだけではなくて、さっさと形にして実績を作っていかないといけない。モノができてサービスが広がり、イメージが付くと出資したいという話もいただくようになりました。自分の場合は外部から資金調達せずに始めたわけですが、資金調達することも重要な方法のひとつです。お金を出す外部の人の厳しい意見によって事業が客観化されるんですよね。自己満足では許されなくなって必死にもなる。その後、弊社も数パーセントの出資を入れましたが、外部の意見を取り入れられるようになり、ビジネスパートナーも増えたのでやはり良い選択でした」

 おそらくその事業計画書には、『創業手帳』を起点として、WEBやSNS、セミナーやコンサルティングを複合的に展開していくことがすでに構想されていたのだろう。先に事業計画が練られていたからこそ、これだけの短期間で形にできたと思うのだ。さらに創業の半年後にはフィリピンのセブ島に支社を立ち上げ、アメリカでも起業家向けメディアを展開。これも思いつきではなく、当初から構想していたことだという。

sab_06_w268「最初から日本と同じビジネスモデルをアメリカでも展開するつもりでした。その拠点としてフィリピンに支社を作ったんです。フィリピンは人件費が日本の10分の1で、しかもアメリカ式の大学教育なので教育水準も高い。以前は世界のコールセンターはインドでしたけど、今はフィリピンが中心になっている。フィリピンを拠点に優秀な人材を集めて、世界的なプラットフォームを作っていきたい。ただしアメリカ版で一点だけ日本と違うのは、アメリカは起業家の数が日本の数十倍になるので本を無料配布するわけにもいかない。WEBを中心に展開して、紙の本(※『Founders Guide』)が欲しい人には配布するというふうにしています。現在フェイスブックのフォロワー数が20万人ほどで、日本発のメディアとしては異例の登録者数になっています」

『創業手帳』は情報の信頼性にこだわる。起業に関わる情報であるため、いい加減な情報が許されないからだ。それこそ融資の情報が間違っていたら本当に会社が潰れてしまう可能性だってある。この方針はフィリピン支社も同じ。フィリピンのスタッフがアメリカのNASDAQ上場企業を含むベンチャー企業や専門家に電話取材もしているという。

「弊社の方針として、きちんと取材することと専門家のレファレンスをとることを原則としています。娯楽的な面白さにはこだわってなくて、情報の信頼性を重視している。もっと言うと自社で最良の策を検証してそれを実証しなければいけないと考えています。高須クリニックの院長って全部自分で試すそうですよね。それと同じで全て自分たちで検証してから情報発信するようにしています。自分たちで試したことを伝えるからこそ、使う側にとってもわかりやすいはずです。そうしたことを一通りやりながら会社が出来ていったような感じですね」

 起業家向けの情報発信を行うビズシードもまた創業2年目のベンチャーのひとつ。現在進行形で会社の在り方を模索している。いくら有益な情報を発信していたとしても、その会社自体がブラック企業のようでは本末転倒だろう。その点でいうと、ビズシードは残業も少なく、年末年始には10日間の長期休暇をとるなど、ホワイト企業の手本にもなっているのだから感嘆するばかりだ。

sab_07_w268「起業の際は議論していても始まらないので、エイヤで始めないといけない。ただしその後は改善を繰り返していきます。改善会議を毎日開いていて、必ず役員が出席してその場で意志決定をしていく。それを短時間でやるわけです。週に10個くらい改善策が出てきたら、年間で500ほどの改善になりますよね。スタッフには会社のビジョンを伝え、経営者が持っている情報とほぼ同じ情報を渡しています。現場の人間がそれに沿って自ら改善していくように奨励しているんですね。昔から日本企業の強みは現場の人間が強いことです。ある意味、現場で実験しながら最良の改善策を見つけて、そのノウハウを伝えていこうと考えているんです。新しいサービスを世に出すとなると、毎日のように新たな壁が立ちはだかる。坂の上に登りきったと思ったら、さらに坂があったみたいな(笑)。下り坂のほうが楽なんでしょうけど、それは衰退しているということ。坂がある限り伸び続けていられる。課題があるっていうことは、改善できるっていうことですから」

大久保幸世氏を知る3つのポイント

経営に活かす読書術

「月に30冊くらい本を読むんですが、7冊同時に読んだりしていますね。仕事柄ビジネス書を読む比率が高くなるんですけど、なるべくビジネス書以外の本を読もうと心がけています。極端にいうと生物や地理、歴史や雑学の本など、自分の仕事とはぜんぜん関係ないものを読みます。ビジネス書って何冊も読んでいるとだんだん内容が似通ってくることがあるので、ビジネスとは違うジャンルの本を読んだほうが別の視点が持てると思うんです。むしろ、まったく違うものに共通するロジックが見えてきたりもする。教養というのもおこがましいですが、経営する立場になると、その人の社会観が重要になってくる。だからこそ、偏らないように幅広く本を読むようにしています。古典とされる本が特に好きで、座右の書というとロジカルシンキングの古典である『ソクラテスの弁明』です。塩野七生の『ローマ人の物語』(全15巻)や司馬遼太郎の全集といった歴史シリーズも好きで、いずれも全巻読破しました。時代とともに細かなことはどんどん変わりますが、本質的なことってあまり変わらないものだと思うんです」

朝、考える

「本を読んでいるときやお風呂に入っているときにアイデアが浮かんだりするのですが、特に明け方に思い浮かぶことが多いですね。良いアイデアを出そうと思ってモヤモヤっと考えていたことが、朝起きた瞬間にはっきりしてくるんです。逆に夜思いついたアイデアは、翌朝考えてみるとたいしたアイデアじゃなかったりする。だから大事なことを考えるなら朝のほうが良いと思いますね。自分がこの事業アイデアを思いついたのも朝起きた瞬間でした。ああ気づいちゃった……みたいな(笑)。大変な道に踏み出さざるをえないと思いながら、これはやるべきだと思いましたね」

決断しない経営

「起業後はとにかく細かな問題がいっぱい出てきます。だけど、スタッフが増えて会社が大きくなってきたとき、決断しているようではダメだと考えているんです。それは決断を迫られる状況にまで追い込まれているということなので、なるべくそうなる前に判断して、細かい修正をしていったほうがいい。毎日のように細かな改善をしていくことは、その都度の判断ですよね。それを続けていけば、決断する必要はなくなる。経営に関しては、なるべくドラマチックにしないほうがいいと思いますね」

取材・文●大寺 明  写真●高村征也

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 面白いアイデアを持っていたり、業種の経験は長くあっても。多くの人にとって「起業」は初めての経験です。一から会社を起こすとなると、資金調達から人材、販促、会計、ITツールなど決めなければいけないことが山のようにあり、数々の試練が待ち受けています。一方で世の中には様々な情報が溢れ、自分にとって必要な情報だけをピックアップするのも至難の業……。多くの創業者がたくさんの回り道をして無駄な時間を使っています。

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