産地と都市をつなぐ流通・物流プラットフォーム『SEND』が、農業の未来に一石を投じる。プラネット・テーブル代表・菊池紳インタビュー

プラネット・テーブル株式会社
代表取締役社長・菊池 紳
(きくち・しん)
起業家。ビジネス・デザイナー。1979年東京生まれ。大学卒業後、金融機関や投資ファンド等を経て、2013年に官民ファンドの創立に参画し、農畜水産業や食分野の支援に従事。2014年にプラネット・テーブル㈱を設立。『SEND(2017年グッド・デザイン金賞 受賞)』、『SEASONS!』『Farmpay』など、“食べる未来”をテーマに、デザイン/テクノロジー/サイエンスを活用し、未来への提案となる事業を生み出している。Next Rising Star Award(Forbes Japan)受賞、EY Innovative Startup Award(EY)受賞。

農業離れの原因は“モチベーションが維持できないこと”。流通改革によって、まずここから変えていきたい

 東京や横浜といった首都圏の出身でありながら、山形や和歌山、山梨などで新規就農した知人が筆者の周囲に4人ほどいる。いずれも農業とはまったく関係のない仕事をしていたが、都市部の生活に窮屈さを感じ、新たなライフスタイルを求めて移住したのだ。そうした一部の例だけを見ていると就農志望者が増えているように錯覚してしまうが、農林水産省の統計によると、2010年に約260万人だった農業就業人口は2017年には約181万人にまで減少し、平均年齢にいたっては66.7歳となっている。若い世代の農業離れが進み、高齢化の一途をたどっているのだ。

 ITを活用した農畜水産物の流通・物流プラットフォーム『SEND』を展開するプラネット・テーブル株式会社の創業者である菊池紳氏は、農業離れの理由として“モチベーション”の問題が大きいと考えている。企業社会では仕事の原動力としてよく使われる言葉だが、これまで農業を語るにおいてあまり見られなかった視点である。

 このことに気づいた背景には菊池氏の実体験がある。20代の頃の菊池氏は金融業界やコンサルティング業界でキャリアを積んでいたが、あるとき山形県の真室川で農業を営む祖母から「継いでほしい」と頼まれ、会社勤めのかたわら1年半にわたって農業を手伝うことにしたのだ。

「実際に農業をやってみると、食べ物を作ることはクリエイティブな仕事だし、畑で完熟したものを食べるとすごく美味しくて、とても楽しかったんです。だけど長らく通ってみてわかったのは、これでは生産者のモチベーションが下がるだろうな……という事情が多いことでした。熟した一番美味しい状態で集荷場に持っていくと怒られ、青くて硬い状態で持っていくと褒められる。柔らかいと流通に耐えられず潰れてしまい、汁が出たらカビが発生するというわけです。出荷後に市場を経由して店頭に並ぶ頃に赤ければいいということになっていて、自分が美味しいと思える状態で出荷することができない。しかも出荷場に持っていくと、自分が作ったものと他の人が作ったものが目の前で混ぜられてしまう。そうすると、誰が作っても一緒じゃん……という無力感がすごく残るわけです。これでは人が農業から離れてしまいますよね」

 そうして混ぜられた農産物が、その後、どこに出荷され、誰がどういうふうに食べているかもわからない。これでは美味しいものを一生懸命作ろうという意欲が削がれても当然だ。

「当然、食べた人から評価が返ってくることもなく、後日、わずかばかりのお金が振り込まれるわけです。これってどうなんだ?……と思いましたね。僕はそれまで外資系の金融機関で仕事をしていたので、ダメなときは怒られたし、成果を出せば褒められて評価と対価が一体でした。お客さんが誰かということもはっきりしていたから、相手のためにも頑張れたというのがあったわけですけど、現状の農業にはそれがない。そうするとモチベーションは下がるし、仕事の誇りもなければ面白くもないわけです。だから親は子どもに継がせたいとは思わない。今は生活手段として農業をやっているけれど、他にもっと稼げる仕事もあるから、子どもにはそうした仕事に就いてほしいと思うわけです。そういう親の姿を見ているから、子どもも継ぎたいとは思わない。人の流れが負の循環になっていることを強く感じました」

 今の成果流通では、滞欠品しないようにストックするのが慣行になっている。私たちが採れたての野菜や果物の美味しさにびっくりするのは、ストックされた農産物を買って、その味に慣れてしまっているためなのだ。

「JAも産地の市場も必要だからこそ生まれた仕組みであって、誰が悪いというわけでもない。あえて言うと、消費者と小売業者の責任が大きいと思っています。欠品すると収益の機会損失が起きたということで供給元にペナルティーを負わせることがあり、これが卸業者やメーカーが過剰な在庫を抱える原因になっています。店頭に並べたとき、見栄えも状態もよくて、しかも棚持ちするというふうに考えると、必然的に収穫時期を1週間早めようということになる。そうした必然性があってできた仕組みなのですが、そうじゃない仕組みがあってもいいはずです。そこで産業構造を逆にすればいいと考えました。タイムラグも食品ロスもなく、“一番美味しい状態ですぐに食べる”産業に変えていきたい。それが『SEND=鮮度』というネーミングにした基本思想なんです」

『SEND』はレストランのシェフと生産者をつなぐ流通・物流プラットフォームである。地域の農作物を東京の配送センターに集め、自社で検品と梱包をしたうえでシェフのもとに直接配送する。注文の当日か翌日には届くというスピードで、しかも1個でも注文が可能とあって食材にこだわる料理人にとって打ってつけの仕入れ先になっている。口コミで評判が広がり、サービスを利用する生産者は4500以上、レストランも4500件以上に増えている。

「2000年代前半にレストランと生産者が直接取引をする“産直”が流行りましたが、衰退していきました。その理由は明確で“手間”と“物流コスト”がかかるからです。たとえばシェフがお皿に料理を盛るために10種類の食材をそろえなければいけない場合、個別に生産者に発注するとFAXを10件送るといった手間がかかるし、それぞれの食材がバラバラのタイミングで届いてもお皿は作れない。しかもレストランで使う食材は少量になるので、送料の負担が大きくてコスト的に見合わない。生産者からしても、収穫期の忙しい時期に少量を箱詰めにして伝票を書いて宅配業者を呼ぶなんて、やってられないわけですよね。そこで1tをまとめて出荷して、それを1000件のレストランに分配・配送するという物流の仕組みが求められてくるわけです」

 新鮮な食材をタイムラグなく料理人のもとに届ける――。それが一番美味しい状態だし、食品ロスも出ない。レストランにとっても生産者にとってもそれがベストだろう。しかし、これこそ「言うは易し行うは難し」である。どういった仕組みになっているのだろうか?

シェフと生産者の双方をつなぐ「情報のミツバチ役」でもある。生産者を支援するインフラでありたい

 農作物を集め、できるだけ早く配送するというだけでは既存の物流サービスと大きな違いはないかもしれない。『SEND』の新たな試みとは、シェフと生産者の双方からヒアリングして最適な生産をうながすことにある。ここでポイントになるのが、IT技術を駆使したデータ分析だ。

「テクノロジーで何でも解決しようと考えているわけではなく、効率化できるところはIT技術で徹底的に効率化して、余裕ができたぶんを人対人のコミュニケーションに使うという設計をしています。昔ながらの三河屋さんみたいな感じで、配送するとその場で『こういう食材はない?』と相談されることもあれば、チャットで相談されることもあります。宅配業者を使ってアウトソーシングしてしまうと、『この野菜は美味しかった』という感想や、『こういう料理に使っている』という情報が取れない。情報こそが宝です。自分たちから行って“聞く”ということが重要で、いわば僕たちは情報のミツバチ役なんです」

 こうして集められた情報はディレクションチームによって分析され、生産者に伝えられる。『SEND』が他の物流サービスやECサイトと根本的に異なるのは、こうしたデータ分析とコミュニケーションにあるのだ。

「まず需要がちゃんとあるのかをデータをとって検証することをやろうと考えました。みんなが同じものを作っているとコモディティ化して値段は下がりますし、需要がなくなっているものを大量に作っていると値段は暴落します。『SEND』を利用している生産者の90%以上が50歳以下なんですが、今の農業従事者は団塊世代が大半で、50代でも若手とされるくらいです。彼らのお父さんやおじいちゃんが昔から作っている食材は、どんどんコモディティ化して需要が落ち、上値もつかなくなっています。何か新しいことをやらなければ所得が伸びていかない。そのため他ではあまり作っていない食材を作ることや、これから伸びる需要に備えて作りたいという意識が高い人が多いんです」

 プラネット・テーブルでは需要のデータを分析することで、すでにその食材を作っている生産者に増産をうながしたり、その食材の生育に適した地域の生産者に作ってもらうなど、生産者のパートナーとしての役割を果たしている。

「農業は一作二作と時間をかけないと安定的に作れるものではないので、極力早く伝えてあげないと需要に合わない。そのため、作り方のコツや先行している生産者を紹介したりといった情報提供もして、僕らもお付き合いします。もちろん今あるものを旬の時期に流通させることも大切にしていて、誰しも新しいものを作る必要はありません。新しいものは需要もまだ少ないので、徐々に作る人が増えていけばいいと考えています」

 生産者と直接やりとりをする「産地チーム」があり、情報を伝えるだけでなく、生産者からの情報も集める。農産物の生育をチェックし、大雨や台風などで生育が遅れている場合は発注量を調整するなど、最適な供給を行うようにしているのだ。こうした需要と供給の調整だけでなく、シェフと生産者の出会いの場も提供しているという。

「トップシェフになると複数の生産者のものを食べ比べて、自分が使いたい食材を選びますよね。シェフも作り手ですから、いい食材があれば、誰がどこで作っているかがすごく気になります。できれば生産地に行って畑の環境や土壌を見たいという気持ちがあるのですが、お店があるのでそうそう行くわけにもいかない。職人の世界ですから長時間の仕込みや調理もあって時間的に自由度の少ない職業なんです。そのため定期的にシェフを生産地に連れていく機会を設けるようにしています。いろんな地域のいろんな食材とシェフを出会わせてあげることが必要だと考えています」

 生産者も同じだ。彼らはずっと畑で作業をしていて、自分が作った食材が誰にどのように使われるかを知らない。これが“モチベーションの低下”につながっていくのだ。逆に『SEND』を利用すると、自分が作った食材がどのレストランで使われているかがわかる。

「出荷している生産者さんたちは『どうだった?』とみんなフィードバックをすごく求めてきます。生産者の方が東京に来る機会があれば、その方が作った食材を使っているレストランにお連れして、一緒に食事をすることもあります。好例としては、フルーツトマトを作っている生産者さんがいるのですが、名だたる有名レストランで使っていただけるようになり、そうした有名店で食事をすると、シェフが出てきて『このフルーツトマトは本当に美味しいです』と礼を言うわけです。東京で暮らす息子さんが同席していたのですが、憧れのレストランのシェフが親父に礼を言っている姿を見て、サラリーマンを辞めて家業を継ぐことを決意し、今はトマト生産者の修業中です。対価も重要ですが、やはり誰とどういう仕事をして、どんな関係が作れるかということが、仕事のモチベーションにおいて重要なんですよね」

 物流だけでなく、情報提供や出会いの場も提供しながら『SEND』の手数料はわずか2割にすぎない。これは直売所と同程度の手数料であり、これだけ手間のかかるサービスの対価としては破格といっていい。ここに菊池氏の理念が感じられるのだ。

「僕らがやりたいことは生産者の支援であって、儲けることを一番の目的にしていません。生産者に情報、評価、対価をきちんと渡すことが目的で、生産者からすれば僕らのマージンが低ければ低いほどいい。なぜなら僕らが目指しているのはインフラになることだからです。電気、ガス、水道、郵便と同じように、生鮮食品を送るときは、まず『SEND』だというふうにしていきたい。多くの人に使ってもらうためにはコストが低いほうがいいですよね。ピッキングも配送も行うので手数料として20%いただいていますが、もっと効率化して、さらに下げていきたいと考えています」

 プラネット・テーブルでは『SEND』の他にも、生産者とバイヤーのための商談・出荷取引管理ツール『SEASONS!』や、生産者向け早期支払サービス『FarmPay』といった生産者支援のサービスを提供している。

「『SEASONS!』は『SEND』で小分けして配送する必要のない取引に対応したものです。たとえばケーキ屋さんがイチゴを1トン注文した場合、産地から一気にコンテナ便で送ったほうが早い。既存の流通ではその間に2、3業者が入るわけですが、それを直接取引できるようにしています。『FarmPay』は『SEND』に出荷してもらった農産物の買掛金を早期で支払うというものです。これまでレストランとの取引きは月末締めの翌月払いが通常で、これが生産者からすると非常に不便でした。収穫出荷期の材料代やパート代がかかる時期にお金が入ってこないため、値段が安くても早期に支払われるほうに出荷するということが多かった。そこで支払いを短縮できるようにしたわけです。僕らはあくまで生産者のためのインフラであって、買い手のためのインフラであってはいけない。生産者をしっかり支えていくことが重要だと考えています」

課題から考えるのではなく、「こうしたい」という未来像から考えていく。そのゴールから振り返ったとき、今やるべきことは何か?

 菊池氏は『SEND』を“農業のモチベーションを上げる仕事”だと位置づけている。農業従事者の高齢化と減少、耕作放棄地などの問題に対し、農業がやり甲斐を感じられる仕事へと意識を変えていくことが必要だという考えだ。生産者のモチベーションを上げるためにフィードバックも行えば、十分な対価を得てもらうために需要と供給の調整も行う。そしてタイムラグなく食材を届けることは、同時に食品ロスをなくすことにもつながっている。

 世界的な人口増加による食糧危機が取り沙汰されているが、世界の食糧生産量は人が飢えないくらい十分あるのだという。しかし、一部の先進国に食糧が集まり、生産量の30~40%は廃棄されている。この食品ロスをなくしていけば最適な分配ができるはずだ。タイムラグなく一番美味しい状態で食材を届ける『SEND』は、この2つの問題に同時にアプローチしているのだ。それにしても本当によく練り込まれたビジネスプランだと思う。どういった思考回路から菊池氏はこのビジネスを設計していったのだろう?

「“ビジネス・デザイナー”という言葉を使うようにしていますね。デザインとは課題を解決することでもあるんですけど、目の前の課題を解決したところで必ずしも社会が良くなるとは思っていないんです。課題は見方によって違うもので、それを問題だと思う人もいれば、なんの問題もないと思う人もいて、課題を解決することがある種の攻撃になる場合もある。課題の設定を間違うと、誰にとってもあまりいいことはないかもしれない。僕の場合、課題から考えるのではなく、『こういう未来にしたい』という未来の姿を先に思い描くんです。そのゴールから振り返ったとき、いま何を変えなければいけないかを定義していく。将来、食糧危機が来ると騒がれていますが、そうならない未来があってもいいはずだと思っていて、そこから逆算して考えていくわけです」

 菊池氏は東京出身でもともと農業に関わりがあったわけでもなく、大学は法学部である。「世の中の仕組みを知りたい」という思いから、20代の頃は証券会社、コンサルティング会社、投資ファンドでキャリアを積んできた。いずれも外資系の大企業である。すべての経験が今に活かされているというが、中でも投資ファンドで食品流通に関わったことが農業に関心を抱くきっかけになった。山形の祖母の農業を手伝うようになったのもこの頃である。

「規模が大きい会社の独立や大手外食チェーンの経営支援を手がけるファンドだったんですけど、2008年当時は毒餃子事件があって中国産の食材が使えなくなり、国産の食材に切り替えるために仕入れ先をすべて見直す必要があったんです。農産物の流通はブラックボックスだらけでとにかく大変でした。そんなとき山形のおばあちゃんから『農業を継いでほしい』という電話があって、そのときちょうど食品の流通に深く関わっていたので、そういえば農業の現場はあまり見ていないな、と思って山形に行ってみることにしたんです」

 当時は多くの食品メーカーが同様の理由で食材の調達に苦労していた。投資ファンドは投資先にしか支援ができないが、困っている会社は他にもたくさんある。そこで菊池氏は29歳で独立し、食品メーカーと生産者団体や産地をつなぐ仕事をはじめた。その後、農林水産省が「農林漁業成長産業化支援機構」という官民ファンドを立ち上げ、投資ファンドと農業・流通分野の両方の経験を持つ菊池氏が参画することになったのだ。

「6次産業のファンドは、僕にとっては “後悔”の経験でした。6次産業とは生産者が加工や販売にも乗り出すことで、新しい収入源や働き方を獲得していくというもので、政策の目的自体はいいのです。しかし、そもそも生産者は生産するのが精いっぱいで加工や販売をする人手も余力もない。補助金やファンドで加工設備を入れても、人材不足の環境を補うことはできなかった。農業自体の産業構造や収益構造を変えなければどうにもならない……という挫折がありましたね。加工よりもまず、生産者が需要のある食材を、いい値段でタイムラグと食品ロスなく消費者に流通する仕組みを設計することが先決だと考えるようになったんです」

 本来は官民ファンド側の人間として、こうした問題を解決する仕組みを作ろうという事業者を支援する立場だったが、「中小・個人生産者も乗れるような新しい流通インフラを作る」という人やアイデアに出会えなかった。それならば「自分でやるしかない」となったのだ。

「正直なところ事業としてやっていける確信はなかった(笑)。だけど、山形の祖母を手伝ったことで自分事になり、僕自身がそうした仕組みが欲しいと思ったことが大きかった。確信よりも、必要だという思いのほうが強かったかもしれない。もし僕が農家を継ぎますとなったとき、自分が出したいと思える流通がなかった。そこで自分が“欲しい”と思える流通の仕組みを考えていったわけです」

 最初は冷蔵庫と車だけを購入し、配送センターを作る構想からスタートしたという。6次産業のファンドの仕事を通して、全国各地をめぐり2600もの生産者とつながりができていたことから、生産者の要望を聞き出していくことで会社の方向性を見極めていったという。では、今後についてはどう考えているだろう?

「プラネット・テーブルという会社は、生産者の支援になることはなんでもやるというスタンスです。生産者のためになることを考えると、『SEND』の仕組みを公開したいとも考えています。『SEND』のような事業をやりたいという人が全国各地にいると思うんです。そうした人たちに向けて仕組みを公開し、大阪、名古屋、福岡などに『SEND』と同じような流通ができるといいですよね。そのほうが生産者からすると出荷先が増えていいわけじゃないですか。国内だけでなく、上海でもニューデリーでもいい。僕らは壮大なる社会実験をやっているのだと思っていて、ある程度はモデルが形になったので、この仕組みでやりたい人がいるなら、どんどん使ってほしいと思っています。インフラにするためには、そのほうが早いですから」

 この発想には驚いた。菊池氏は市場を独占するのではなく、『SEND』を使う事業者が増えて競争が起きたほうがいいと考えているのだ。そうなればより良い食材の買付競争が起きて、出荷先を選ぶ側の生産者が主導権を握るようになる。さらに自分が経営から離れたときに経営方針が変わり、会社の売上や利益率優先となり、結果として生産者と利害が対立しないように先手を打とうというのだ。菊池氏はここまで先を見越して経営をしている。あくまで会社の目的は、持続的な“食糧生産の支援”なのである。

菊池 紳氏を知る3つのポイント

座右の銘/
「自分の考えたとおりに生きなければならない。そうでないと、自分が生きたとおりに考えてしまう」(プールジュ)

「プールジュというフランスの小説家の言葉なんですが、これまで経験してきた過去の価値観や考えで生きるようになると、新しいものも生まれないし成長もない。固定化したまま自分が老朽化していくだけだと思うんです。人は年齢を重ねるほど経験値も増えるし、考慮しなければいけないことも増えていく。こうして忖度し、選択肢を限定し、次第にファジーになっていく。それを大人の対応やバランスだと語るより、“こうしたい”という“Want”で生きたいと思っています。自分のことを説明する際に、『自分はこういう人間である』ということが今も上手く説明できないんですが、『自分はこれがしたい人間である』ということはわかる。プールジュのこの言葉は大事にしていますね」

仕事のモットー/誰かのため善=仕事

「誰かのため善=仕事だと思っています。言うのは簡単なんですけど、それを体現しているかが重要で、僕は生産者が喜ばないことに対しては凄まじく厳しいんですよ。これは僕だけではなくて、『これって生産者のためになるんだっけ?』という議論をメンバー全員がやります。商売で利益を出すことを目的したら、ロットで大きな注文が入ったほうが喜ばしいわけですけど、それが生産者の利益になっていない場合は断らなければいけない。『生産者のためにならない』と思ったとき、方向性を質すのが僕の仕事だと思っています」

“諦める”という概念がない

「人からは『SEND』に注力して突き進んできたように見えるかもしれませんが、実際はそれ以外にも生産者の支援になるようないろんな仕掛けを試みてきて、そのうち99%は失敗し、トライ&エラーを繰り返してきました。そうして試行錯誤するうちに次々とやっていることが変わっていったわけですけど、途中で投げ出したいと思ったことはない。もともと“諦める”という概念が自分の中にないんですよ。諦めるということは関心や情熱がなくなった状態だと思うんですが、なぜか冷めないんです。農業に関わる分野は単純に面白いですから(笑)」

取材・文●大寺 明  写真●松隈 健

産地と都市をシームレスに繋ぐ、
農畜水産物の流通・物流プラットフォーム
SEND

既存の流通規格や量に縛られず、全国各地の多様な食材を
都心部の多様な需要者へとつなぐ、産地食材お届けサービス。
産地と直接つながり、産地と都市の物流の仕組みを自社で構築することで、
中間コストの壁を解消します。
『多様な食材が持続的に作られる』サイクルを創出し、
地域の農畜水産の持続的な発展・活性化にも貢献します。

SENDは『走るファーマーズマーケット』。
生産者にとっては、都市部にある『配送センター』として、
シェフにとっては『自前の産直食材庫』としてご活用していただける
直接取引・配送プラットフォームです。

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