工場直販ブランド「ファクトリエ」で世界に誇る純日本ブランドを展開。ライフスタイルアクセント・山田敏夫インタビュー

ライフスタイルアクセント株式会社代表取締役社長・山田敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社(http://www.lifestyleaccent.co.jp/ )代表取締役社長・山田敏夫(やまだ・としお) 1982年熊本県生まれ。創業約100年の老舗婦人服店の家で育ち、大学在学中にフランスに留学し、Gucciパリ店に勤務。2006年にソフトバンク・ヒューマンキャピタルに入社し、「ITメディア」や「イーキャリア」の営業職として4年間勤務。最年少でメディア事業本部営業マネジャーになるも退職し、当時、東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する「fashionwalker.com」に入社。最先端のファッションビジネスを経験した後、2012年にライフスタイルアクセント株式会社を設立。日本初のファクトリー直販ブランド「Factelier(ファクトリエ)」をオープンした。

純日本ブランドを目指し、全国350もの工場巡りをした。世間の常識よりも自分の正論を信じて走り続ける

factelier_sub1 プラダやルイ・ヴィトン、アルマーニといった高級ブランドの一部が、実は日本の工場で生産されていることをご存知だろうか。世界トップクラスの縫製技術を持ったアパレル工場が日本には少なくないのだ。

 しかし、その一方で日本の縫製工場は激減している。アパレル品の国産比率は1990年に50.1%だったのが、2009年には4.5%まで減少 (経済産業省「繊維・生活用品統計月報2010年」)。今では3%台にまで落ち込んでいるという。長引く不況と円高、そしてファストファッションブームにより、メーカーが低コストの海外生産にシフトしたからだ。日本のブランドだと思って着ているつもりが、実は完全に外国産だったということが当たり前になっている。

 かろうじて存続している工場も補助金や融資でなんとか日々をしのいでいる状況……。業界的に先細りとなっているため、若い人材が入ってくることもなく、従業員の高齢化が進んでいる。このままでは日本の優れた縫製技術が次世代に受け継がれなくなってしまう。

 こうした状況を打開しようとするのが、日本初のファクトリー直販ブランド「Factelier(ファクトリエ)」を展開するライフスタイルアクセント株式会社だ。主にECサイトで販売しているが、単なる工場直販のECサイトではない。世界の有名ブランドから受注するトップクラスの工場と提携し、世界に誇る「Made in japan」として純国産ブランドを展開しているのだ。

 2012年に起業した創業者の山田敏夫氏は、モデルといっても通用しそうな爽やかなルックスながら、ストレートな熱意に溢れ、熊本生まれの九州男児といった印象だ。工場を訪問するために1年の半分以上は地方を周っている。

factelier_sub4「80年代には6万事業所あった工場が、今では1万を切るくらいになっています。かろうじて残っている工場も中国やベトナムと同程度の金額で発注されるようになり、仕事を請けても赤字、この値段じゃ無理だと断れば、当然、仕事もない。この20年間、疲弊する一方だったんです。起業から3年間で350の工場を回りましたが、追いつけないくらいのスピードで工場が消えていくのを見ていると、時間との勝負だと感じますね」

 ファッション業界というと華やかなイメージを思い浮かべるが、山田氏の日々は泥臭いまでに地道だ。夜行バスに乗って早朝に現地の駅に着き、さらにローカル線を乗り継いで田舎町にある工場に向かう。1泊2日で7、8件の工場をまとめて訪問し、夜行バスで東京に戻って朝から銀座で仕事をするという日々。こうしてしらみつぶしに工場を訪問するのにはワケがある。ほとんどの工場がホームページを持っていないため、情報がないからだ。山田氏の起業は、まず提携先となる工場探しから始まった。

「とにかくまず現地に行って、タウンページで工場を調べて上から順に電話して、飛び込みで訪問してましたね。最初は信用も実績もないですから、ヘンなやつが来たと思われて相手にされないことが多かった。別の工場に行ったら、もう噂が伝わっていて門前払いされたこともありました。50件くらいの工場でそういうことが続いて、逆ギレしそうになりましたね(笑)。日本のものづくりを守るため!と思ってやってるのに、そういう態度をとるか!?って」

 結果の出ない最初の半年間で挫折してしまってもおかしくない状況だ。今でこそファクトリエは日本初のファクトリーブランドを集めたブランドとして信頼されているが、当然、最初はこのビジネスモデルが成立しうるかの確証もない。それでも自分を信じて根気よく続けていったことが、山田氏の非凡さかもしれない。

「自信なんてなかったです。ただ心からやりたい気持ちだけがあって夢中でした。まだ走っている途中なので客観的に振り返れないですけど、海の中で足をばたつかせないと沈んでいくようなもので、苦しいけど前に進むために必死でしたね。もし僕がアパレル業界を熟知している人間だったら、工場の言うことや世間の一般論を鵜呑みにして、今のファクトリエはかたちにできなかったかもしれない。僕には世間の常識というものがなくて、正論しかない。それを思いきりぶつける素人が今までいなかったと思うんです」

 ようやく熊本県人吉市のワイシャツ工場と提携することができ、これが第一弾のブランド「Factelier by HITOYOSHI」となる。工場直販のECサイトにすることで中間業者のコストをカットし、有名ブランドなら3万円はする品質のシャツを1万円で購入できるようにした。それでいて工場の収益はこれまでの仕事よりも断然いい。どういった仕組みになっているのだろうか?

「これまで工場側の利益は受注額の20%が相場でした。1着の受注額が5千円だったら、4千円が原価で千円が工場の利益というわけです。これが販売価格になると5倍の2万5千円になるのが相場なんです。近年は受注額がどんどん下がっているので、やればやるほど赤字になる構造になっていました。これに対しファクトリエのビジネスモデルは、最初から当社と工場で50%ずつの取り分と決めて、販売価格も工場と話し合って決めます。僕らからすると、工場にちゃんと利益を得てもらって、最高の技術を提供してもらうことが一番いいことなんです。初回生産ロットも工場が決めていいことにしていて、半分はうちで買い取りますが、半分のリスクは背負ってもらうことにしている。ファクトリエなら1カ月で完売できますが、あえて全部は買い取りません。なぜかというと工場が自立しなくなってしまうからです。そうなると意味がない。すべてをフェアにして、あくまで対等の関係でありたいと考えているんです」

 初回生産ロットを500と決めて生産したら、ファクトリエがその半分の250を買い取る。その売れ行きに応じて、工場が持つ残りの250のうちから、ファクトリエは必要数量の補充をかけ販売する。つまり、工場とファクトリエでリスクを半分ずつ持つ。工場にもリスクがある分、より一層いいものを作ろうとする技術の向上につながり、商品のタグに自分たちの“工場の名前”を入れることで、職人としてのプライド形成にもつながると山田氏は考えているのだ。今では青森、岩手、新潟、京都、岡山など全国20の工場と提携し、その試みは地方創生においても注目されている。

「日本には本物のブランドがない」という一言が起業の原点。ものづくりを核にした本物の文化を築きたい

 山田氏がアパレル業界を志した理由の一つに、実家が創業約100年の婦人服店だったことがある。熊本城近くの商店街で1階が店舗、上の階が住居という環境に育ち、子どもの頃から「手伝いは買ってでもしろ」という昔ながらの教育を受けてきた。兄が教師になる夢を描いていたため、子どもの頃から自分が家業を継ぐことになると考えていたそうだ。

factelier_sub2「家業を継ぐために大学も商学部に入って簿記を勉強したんですが、そのうちファッションの最先端を見たいと思うようになって、フランスに留学することにしたんです。ところが、空港からパリ市内に行く地下鉄でスリにあって、いきなり一文無しになってしまった。働かざるをえなくなって、ルイ・ヴィトンやシャネルに20通くらいモチベーションレター(志望動機書)と履歴書を出しまくりました。それで1通だけ返事があったのがグッチだったんですよね」

 この頃から山田氏は猪突猛進の熱意によって道を切り拓いてきたようだ。グッチの販売員として採用されながら、地下室でストック整理をする日々が続き、その後、免税手続き要員を経て、ようやく売り場に出ることを許された。このとき同僚から言われた一言が、その後の起業へと駆り立てることになる。

「日本には本物のブランドがない、と言われたんです。僕はコム・デ・ギャルソンもあるしKENZOもあると反論したんですけど、そんな上っ面の話じゃないと一蹴された。グッチもルイ・ヴィトンも工房から生まれた。デザインやマーケティングやプロモーションという話じゃなくて、根本はどこなんだ?と言うわけです。ブランドに対する根本的な考え方からして違っていて、文化の核になる一番大事な部分が、ものづくりになっていないと言うんです」

 日本はものづくりに秀でた国だ。しかし、ことファッションの世界ではそうとも言えない。アメリカの影響を強く受け、新しいデザインや流行をプロモーションで仕掛けていくマーケティング志向の文化が形成されてきたからだ。みなが欲しがるものを最大公約数から導き出していくため、こだわりの逸品という方向には向かわず、海外生産に取って替わられる結果となった。

「『お客様は神様です』という日本的な考え方が商売を歪めているように思うんです。ものづくり主体ではなくお客様主体になると、お客様の要望にすべて応えなくてはいけなくなる。たとえばシャツが5千円で欲しいと求められれば、それに合わせて原価が決められ、中国やベトナムで作らざるをえない。デザインに関しても、多くのお客様が好きなデザインという考え方になって、ベーシックな商品に落ち着いてしまう。そうなると、右も左も同じような生地を使った同じようなシャツで溢れることになる。同じような物なら安価で購入できるファストファッションでいい、となるわけです。『お客様は神様じゃない』というが僕の原点にあるかもしれない。それは、下に見ているわけではなく、同志であり理解者であるべきだと思っているからです。だからこそ、作り手は使い手に対してもっといいものをちゃんと作らないといけない。お客様だからとヘコヘコするような過剰なサービスをせずとも、伝えるべきことをちゃんと伝えて理解してもらった上で買ってもらうというのが自然だと思うんですよね」

 いいものを作ろうと思えば、当然、時間もかかれば技術力もいる。それが適正価格として反映されることが健全なのだが、現状は安くて高いクオリティーを求める購買層の声が優先され、ものづくりをひっ迫させているのだ。そう考えたとき、無理に購買層に合わせようとしない海外の高級ブランドの在り方は、ものづくりに携わる人を守っていることになる。そのためにも海外の有名ブランドは、物の価値を伝えるためにイメージを作り上げてきたのだ。

「人気女優が着ているくらいのイメージではなく、もっと根本的にどういった背景からそのブランドが生まれ、今の世の中に何を問いたいのかというところまで掘り下げなくてはいけないんです。ところが今の日本はアメリカナイズされた“上書き文化”ばかりになっている。これは町並みについても同じで、僕は仕事がら日本各地を周るわけですが、自分が今どこにいるのかわからなくなることがある。どこの駅前もマックと牛丼チェーン店がある同じ風景で、郊外に大型商業施設ができたことでシャッター商店街になってしまっている。だけど、その商業施設ですらも撤退するようになってきた。その後に残るのは、経済圏が破壊されたゴーストタウンです。そう考えたとき、“営利目的の破壊者”でしかなかったということになる。それとは対照的にパリの美しい基盤目状の街並みは、実は100年くらいしか歴史がない。彼らはリノベーションをすることで立て壊しを防ぐことを選んだんです」

 直感的にそうした流れを「嫌だ」と思う感性が、山田氏の原動力になっている。ファッションに限定した話ではなく、「Made in japan」を残したいという想いが先にあったのだ。

「帰国後、家業を継ぐために経験を積もうと思ってアパレル業界に就職しようと思ったんですが、取引先の息子ということで営業担当の人が本音で話してくれるんですよね。当時のアパレル業界は悲惨な状況で、誰に聞いても辞めた方がいいと言う。2005年当時は百貨店の売上が軒並み落ちていて、かといって実家のお店を直接やるにしてもお金がかかる。いろいろ考えているうちに、インターネットをうまく使えば、流通を越えて全国の人に本物のものづくりを提供できるかもしれないと考えたんです」

 山田氏はITサービスと営業を学ぶべく、ソフトバンク・ヒューマンキャピタルに入社し、ニュースサイト『ITメディア』や転職サイト『イーキャリア』の営業職に就く。しかし、IT業界においても「お客様は神様です」という観念が根強く、24時間体制で働く根性論の世界に疲弊していくのを感じた。最年少マネジャーとなりながらも山田氏は退社し、ファッション業界に転職するのだ。

ものづくりには全てストーリーがある。それを伝えていくことが、ブランドの価値を生み出していく

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 最先端のファッション業界を経験したいと考え、山田氏は東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する「fashionwalker.com」への転職を試みた。あいにく採用時期に間に合わず、倉庫アルバイトからのスタートとなったが、たまたま訪れた本社役員に直談判し、社長直轄の開発事業部に移動するのだ。当時のファッション業界は大手メーカーが軒並み苦戦し、活況だった東京ガールズコレクションですら、売上から物流コストやオフィス・倉庫の賃料などを引くと、それほど収益が出ないという状況。規模が巨大になればなるほど、ビジネスが虚像になっていくことを間近に見て、逆に自分がやるべきことは規模の拡大ばかりを狙わず、中間コストをなくしていくことだと確信した。

「機は熟したと思いましたね。ITサービスとファッション業界を学んで、あとは一歩踏み出すかどうかでした。だけど、最初はぜんぜんうまくいかなかった。今も住んでいる6畳の部屋に400枚の在庫が山積みになっていて、窓から光が入らず、段ボールの隙間に寝るドラキュラみたいな生活をしてました(笑)。『キャンプファイヤー』(クラウドファンディング)を通してシャツを120枚売ることができたんですが、2カ月後に200万円を工場に支払わなければいけなくて、まだ100万円足りない。そこで企業向けの着こなし講座をやってシャツを売ろうと考えました。300件電話して10件でやらせてもらえることになって100枚を売り切った。在庫が売れるたびに窓から光が差し込んできて、まぶしいみたいな(笑)」

 今では社員と業務委託を合わせて25名が関わるライフスタイルアクセントだが、1年半ほど前までは山田氏一人の会社だった。たった一人で遮二無二努力する姿は、社会起業家のような使命感すら感じさせるが。

「社会のため、となるとちょっと偽善ぽくて抵抗があるんです。生きていくために必死でやらざるをえない状況だったということで、たまたま自分がやりたかったことと社会的な課題が重なったというふうに捉えているんです。もちろん自分の利益だけじゃなく、関わってくれた人が笑顔になってくれたら僕も嬉しいですが、それを社会のためだと思ってやると、違う方向に走ってしまう。日本から世界的ブランドを生み出すという夢を愚直に追っていったら、その結果として工場が潤い、副次的に地方創生になった。地方創生のために自治体が予算を組んで指定する工場と一緒にやりましょう、と持ちかけられることがあるんですが、僕からすると順番が逆なんです。地方創生のために地方の工場と提携しているわけではなく、いい工場であればどこでも提携するということです」

 これまでに山田氏が訪問した工場は350カ所にのぼるが、提携した工場は20カ所のみ。つまり、自ら話を持ちかけながら、逆に断っているケースの方が圧倒的に多いことになる。どういった判断基準なのだろうか?

「やはり一番の基準は技術力があるかないか。先方にやる気がある場合とない場合がありますが、世界的なブランドから受注している工場であれば、やる気があってもなくてもなんとか口説きます。むしろ困るのが、やる気はあっても技術力がない場合です。『日本から世界的ブランドを作ることを目指している』と説明することで察してもらうようにしていて、半分の工場はそこで身を引いてくれますが、もう半分の工場は『とことん努力するから』となる。心苦しいことなんですが、やっぱり気持ちだけでは難しいんですよね。僕らの目はすごく厳しくて、裏が仮縫いされているか、糸の留め方が返しになっているか、ボタンは手で縫い付けているかなど、とにかく細かい。長年やっていると癖がついてしまっていて、そうした要求についてこれないものなんです」

 なにしろ一つのアイテムができるまでに半年から1年半もこだわり抜いて作っている。ファッション誌の編集長など5人のアドバイザーの意見を取り入れながらデザインを決め、工場と打ち合わせをして素材や縫い方を決めていくのだが、その後、何度も試作品を作って品質をチェックしていくのだ。

factelier_sub3「洗ってみて糸の耐久性をチェックしたり、透けたり色落ちしないかを入念に見ていきます。物は使っていくうちに良し悪しがわかるもので、服はしばらく着てみないとわからない。袋縫いにして体に当たる部分もきれいにしたり、一見してわからない部分にも徹底してこだわっていきます。縫い合わせの一番しんどいところで手を抜いていないということが重要なんです。最初は工場の職人さんたちも喜んでやってくれますが、途中から、まだ言うのか?みたいな(笑)。最終的には『あなたのベストを尽くしているかどうか』、それだけなんですよね」

 これまでの日本のアパレル業界では製造以上に広告宣伝に力を入れてきた。しかし、驚くことにファクトリエの宣伝広告費はゼロだという。それでいて3期目となる今期の売上は1期目の400~500%に達成する見込みだ。その秘訣とは?

「物こそが最大の営業マンだと考えていて、すべて口コミです。お金はすべてものづくりへの投資と全国の工場を訪問するための交通費に使ってます。実際に工場を見てみないと、ものづくりの姿勢はわからない。自転車操業になっている工場は、設備に投資する余裕もなく、トイレなどの職場環境もよくない。そうなると若い人がそこで働きたいとは思わないですよね。逆にいい工場は経営者自身が職人気質で、よりいいものを作るために設備投資をしている。どういった環境でどういった人が作っているか。また、そこが生産地として発達した地形的特色など、物にはすべてストーリーがあるものなんです」

 ものづくりのストーリーを伝えていくことが、純国産ブランドの価値を生み出していく。その一貫として工場ツアーを開催しているが、現地集合・現地解散というツアーでありながら、30人の募集枠に毎回100人以上の応募があるそうだ。

「もともとは工場で働く人のモチベーションを上げるために始めたことなんです。ツアーの最後に参加者から寄せ書きを書いてもらっているんですが、遠距離の彼氏にその工場で作られたニットを送ったと書かれていたり、父の日にマフラーをプレゼントしたといったことが書かれていて、工場で働く人が『物としての価値を超えた思い出を作っているんだ』と思えるようになると嬉しいですよね。まず工場に利益を出してもらうことが大切ですが、その次は、若い人材が長く続けていけるように自分たちの仕事の価値を知ってほしいと思っているんです」

「Made in japan」ブランドに対する海外の注目度は高く、100カ国以上からサイトにアクセスが集まっている。2015年度中には現地通貨決済、物流システム、翻訳を完了させ、海外通販をスタートさせる。投資を募って一挙にスタートアップしてもいいくらいだが、山田氏はあくまで自己資金でやることにこだわる。なぜか?

「投資の話は沢山いただいているんですが、今のところすべてお断りしています。ファクトリエのセカンド・ライン(ブランドの若者向け価格商品)を作って、ショッピングセンターで販売しましょう、といった提案をいただくんですが、ビジネスの拡大を狙ったがために、日本のブランドはすべてダメになってしまった。ブランドは血を薄めてしまうと価値がなくなってしまうんです。やはり濃い血を保たなくてはいけないんですよね」

山田敏夫氏を知る3つのこと

モットー「下手でもやり続ければ必ず上手くなる」

「小学校の頃は、塾に入るのを断られるくらいバカだったんです(笑)。だけど、高校は熊本でも有数の進学校に行くことができた。陸上をやっていた頃も最初は本当に遅かったし、ゴールじゃない方向に走って行ったりしていて、それでも疲労骨折しながらも走り続けて、最後にはNHK杯のアンカーで優勝することができた。とにかく僕は人より不器用でしたが、努力する才能だけはあったと思うんです。高校生の頃に武者小路実篤の『愛と死』を読んですごく救われたことがある。その中に、最初から上手な人はいないし、最後まで下手な人はいないといった一文があって、下手でもやり続ければ何かしらには成れるんだと思った。その気持ちがいまだにあって、それだけを信じて今もやってますね」

座右の書/『舶来屋』幸田真音/著

「エルメスやグッチを日本に初めて紹介した銀座の高級ブティック「サンモトヤマ」の創業者の伝記です。自分たちの仕事を「文化を売る商人」と言っていて、起業する前に読んで、自分もこういう人間になりたいと思いましたね。彼らが海外から日本に文化を持ってきたように、僕は日本から海外に文化を持って行きたい」

起業を目指す人へのアドバイス

「起業の理由が、本当に自分の腹の底から出てくるものであれば、躊躇せずにやった方がいいと思います。やっぱり“沸点”というのが大事で、この業界が儲かるとか、これがトレンドだからという理由で起業すると、時代が変わったときに取り残されてしまう。腹の底からやりたいと思えるものが見つからないのであれば無理にやる必要はないし、熱量の高い人の近くで働いたりして時期を待てばいいと思います。そうすれば自分の熱量も上がっていくはずです。アメリカでは50代で起業する人がすごく多くて、人脈があって知識も経験もあるからみな成功していたりする。彼らにとっては50代が沸点だったと思うんです。日本だと50代になったら残りの仕事人生をつつがなく過ごそうとなりがちですけど、沸点の時期は人それぞれですよ。それが見つかったとき、一歩踏み出す勇気を持てればいいですよね」

取材・文●大寺 明  写真●高村 征也

5月・6月は体験イベントが豊富!
Factelierイベント情報

ファクトリエの全商品を試着し購入できる東京・銀座フィッティングスペースや熊本本店にて、毎月イベントを開催しています。ものづくりに対して共通する理念を持つ方々とのコラボイベントや着こなしセミナーなどを開催しています。また、毎回大人気の工場ツアーでは、見学するだけでなく、参加者自身が職人のサポートを受けながら自分オリジナルの商品を作って持って帰ることができる貴重な体験もご用意しています。
2015年5月・6月のイベントは下記をご覧ください。

■5/30(土)【父の日イベント】
大正6年創業・銀座「月光荘」とコラボ!水彩絵はがきワークショップ!(@銀座)
父の日のプレゼントに「手書きの絵はがき」でサプライズをプラスしませんか?
■6/13(土)【無料】
メンズ向け“クールビズ”着こなしセミナー開催!(@熊本本店)
■6/13(土)【工場ツアー】
世界ブランドを手掛ける福島県の工場でトートバッグ作り!

【熊本本店】
熊本県熊本市中央区手取本町4-7
マルタ号内(ファクトリエ)
営業時間/11:00~19:00 定休日/火曜

【銀座フィッティングスペース】
東京都中央区銀座8-12-11第二サンビル3F
営業時間/12:00~19:00 定休日/月曜(祝日の場合は火曜)