アフリカの未電化地域で電気を「量り売り」する日本のスタートアップ。市場規模は6億人!? デジタルグリッド・秋田智司インタビュー

株式会社デジタルグリッド
代表取締役CEO・秋田智司(あきた・さとし)
1981年茨城県生まれ。拓殖大学国際開発学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科修了。2006年にIBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現日本IBM)に入社し、ITを活用した新規事業開発や業務プロセス改善等のプロジェクトに従事。2010年に友人と共にNPO法人soket(ソケット)を共同設立し、2011年のIBM退職後は、ソケットの専任コンサルタントとして日本企業の途上国進出支援に携わる。2013年に東京大学の阿部力也教授と株式会社デジタルグリッドを共同創業し、ケニア、タンザニアで電気の量り売りサービス「WASSHA」を展開。

大手資本が参入しない「BOPビジネス」に挑戦する日本のスタートアップが、タンザニアに「光」をもたらす

 21世紀の今も電力にアクセスできない人々が、世界には10億人以上いるとされる。もっとも多い地域がアフリカで、6億人がいまだ未電化生活を送っている。深夜でも煌々とライトが灯る日本にいると想像もつかないが、今でも彼らはランプで生活しているのだ。未電化地域を電化するには発電所も必要になれば、送電するための電柱など巨額の初期投資が必要になる。その資金を回収できるメドが立たないため、一向に電化が進まないのだ。

 この未電化地域の問題に光明をもたらしているのが、東京都台東区にあるデジタルグリッド株式会社がタンザニアで展開している電気の「量り売り」サービス『WASSHA(ワッシャ)』である。

 日本人の感覚では、電気は電力会社と契約すればいつでも使える。しかし、未電化地域ではその当たり前のことができない。そのため『WASSHA』では、ソーラーパネルで発電した電気をバッテリーに溜め、お金を事前に支払った分だけ使えるようにする機器を開発し、この機器を使って電気を「量り売り」している。アフリカ各地にあるキオスクにこの機器を設置し、店舗オーナーが電気の販売を代行するわけだが、問題はきちんと管理しないと、中にはズルをする人がいること。

 この問題をクリアにしたのが、デジタルグリッドが開発した専用アプリによる給電コントロールと、モバイルマネーによる料金徴収の仕組みだ。キオスクのオーナーがモバイルマネーを使ってデジタルグリッドから指定された電話番号にお金を送金すると、デジタルグリッドから支給されたWASSHA専用スマホにあるアプリに同金額がチャージされる。お金をチャージしたスマホをデジタルグリッドの機器に接続すると、チャージした金額分だけ電気を使用できる。さらに各キオスクの売上情報や発電情報がスマホの回線を通じてサーバーに自動送信されるため、現地で勝手に電気を使うことができないのだ。

 日本のベンチャー企業が、アフリカの未電化地域で電気を売る――。ある意味、想像もしなかったようなビジネスモデルである。CEOの秋田智司氏にケニア、タンザニアの未電化状況と、その可能性をお聞きした。

「ケニアの都市部は先進国と同じように発展しているのですが、車で1時間も行くと鬱蒼としたサバンナになって未電化率が76%なんです。約4850万人のうち約3700万人が今も未電化生活を送っていて、テレビもパソコンもない暮らしですが、ケータイだけは普及しているんです。なぜかというと、銀行が普及していないので、お金のやりとりをするためにモバイルマネーを使う必要があるからです。たとえば家族の一人が都会で仕事をして、モバイルマネーで家族に送金するわけですが、ケータイがないとそのお金を引き出すことができない。つまりケータイがお財布代わりなんですね」

 ところが、ケータイを充電する肝心の電気がない。どうしているかというと、みんなのケータイを集め、バイクで2、3時間かけて街まで行き、まとめて充電しているという。当然、充電代のほかに手数料が発生する。なぜ彼らは自分たちで発電機を買おうとしないのだろう?

「未電化地域の人たちは、1日1、2ドルで生活するいわゆる貧困層と言われる人たちです。ほとんどの人が日払いの仕事をしていて、今日は仕事をしてお金があったとしても、明日も仕事にありつけるかわからない。そうしたギリギリの生活を送っているのでまとまったお金を用意できない。たとえ数千円のソーラーパネルがあったとしても、彼らからすると高額ですし、そうした格安のものは中国製の偽物だったりして、すぐに壊れてしまう。だから彼らにとっては非常にリスクの高い投資になるわけです。電気がなくて困っているけど、どうしていいかわからないというのが現状です」

 これはケニアに限った話ではなく、隣国のタンザニアやその他のアフリカの未電化地域でも同様らしい。最近になってケータイの充電のために電気が必要になってきたが、昔からずっと灯油ランプで生活してきたのだ。この灯油代が1日20~30円で、貧困層の人々にとってはかなりの出費である。そこでデジタルグリッドでは、1日25円でLEDランタンをレンタルするサービスを始めた。灯油と同程度の料金で、光量は20倍。これがタンザニアで大人気になっているのだ。

「貧困層とされる人たちはとても非効率なお金の使い方を強いられています。ケータイの充電も本来もっと安いはずなのに、手数料が含まれた割高な値段で充電しているし、灯油ランプにしても輸送コストがかかるので、田舎に行けば行くほど灯油代が高くなる。これより安い価格設定にすれば、絶対に売れるはずだという確信が前提にありました。そこで私たちの事業が成立する価格設定を検討して、初期投資がどれくらいの期間で回収できるかを計算したところ、事業として継続してやっていけると判断できたんです」

『WASSHA』はキオスクに設置される。日本でキオスクというと、駅の売店くらいのイメージだが、アフリカの未電化地域にはスーパーもコンビニもなく、食品や生活消費財といった生活必需品はすべてキオスクが担っている。キオスク1軒につき、数千人が周囲に暮らしているという。

「当初は1000店舗のキオスクに設置できれば、初期投資が回収できると見込んでいたんですが、見積りが甘くて、現在は1300店舗を目指しています。最初はケニアで苦戦していたのですが、2015年からタンザニアで事業を始めたところ、2016年には800店舗まで増やすことができた。当初の目標だった1000店舗も間近でしたが、一旦、新規開拓を休止することにしました。なぜかというと、このビジネスは『WASSHA』を十分に使ってくれる優秀なオーナーを見つけることが重要で、やる気のないオーナーの店舗に入れても売上が伸びないことがわかったんです。そのため現在は、店舗を精査して撤退と入れ替えを行なっています。そのぶんパフォーマンスが改善して、800店舗という数字は変わっていませんが、売上は2倍以上に増えています。それが安定したところで、また店舗数を増やそうと考えていますね」

 1300店舗になったところで黒字化に転じ、あとは徐々に初期投資を回収していく予定だ。近年になって「BOPビジネス」が注目されているが、これは年間所得30万円以下の所得層を対象としたビジネスモデルであり、実は世界70億人のうち40億人がこの層にあたり、その規模は500兆円とも試算されている。『WASSHA』で考えると、アフリカだけでも6億人もの潜在的ユーザーがいる。仮にすべての人が1日10円を使ったら60億円になり、年間で2兆円以上。まだまだ発展途上のビジネスだが、その可能性は大きい。

開発途上国の問題を解決するためには、ボランティア精神やお金を落とすことだけでなく、「ビジネス」が必要

 そもそも、なぜ秋田氏はアフリカで事業を始めようと考えたのだろうか? もともと秋田氏は文系で、電力事業やテクノロジーに造詣が深かったわけでもない。聞くと、20歳のときにタンザニアに植林のボランティアで訪れたことが原点にあるそうだ。

「高校生の頃、進路で悩んでいるときに開発途上国の様々な問題を知って、開発援助など途上国支援を学べる大学に進学したんです。大学2年のときにタンザニアの植林ボランティアに参加したんですが、当時の僕はかなり頭でっかちでしたね(苦笑)。市民団体や政府機関が途上国に介入することで、逆によくない結果になるということを大学で勉強していたこともあって、僕が持続可能な支援のあり方を教えてあげよう、という驕りがあったんです。だけど、実際に行ってみると、現地で活動している日本人の方は僕なんかよりよっぽど勉強されていたし、本当に途上国の人たちが自立するにはどうすればいいかを真剣にディスカッションしていた。植林をしている村人の中に、村で唯一大学に進学したタンザニア人の若者がいて、同じ20歳ということで仲良くなったんですけど、彼は将来、会社を作って村のみんなを雇って、みんなで豊かになりたいと話していました。おまえも入れてやるって言われて、それも楽しそうだなあって思いましたね(笑)」

 ただお金を落とすだけの支援ではなく、現地の人とディスカッションしながらビジネスを興すことで開発途上国の課題をクリアしてゆく。20歳の頃の秋田氏は、漠然とそんな仕事に就きたいと思ったという。しかし、具体的にどんなビジネスをやればいいのか見当もつかなかった。

「途上国で出会う人たちは、やはり善意の人が多くて、みんなで仲良くやろうという雰囲気なんです。当時は堀江貴文さんや藤田晋さんといった起業家が話題になった第一次起業ブームみたいな時期だったこともあって、そうしたビジネス感覚をもった人がアフリカに行かないと何も変わらないんじゃないかと思いはじめました。それでビジネスや経営学を勉強したいと考え、大学院に進学することにしたんですね。多国籍企業が途上国でどのようなビジネスを展開しているかを研究していたのですが、これが今の事業のベースになっていますね」

 大学院修了後、秋田氏はIBMビジネスコンサルティングサービスに入社し、サラリーマン生活を始めた。開発途上国で起業することが目的だったはずだが?

「ひと言でいうと、起業のネタが思いつかなかった。起業したいと言いながら、何をやっていいかわからないという典型的な起業家志望でしたね(苦笑)。まず会社に入って社会経験を積むことが必要だと思いました。コンサルティングファームであれば、いろんな会社の課題と解決策を見ることができるので、将来、途上国で起業するための勉強になるんじゃないかと考えたんです」

 しかし、実際に会社勤めを始めると、それはそれで仕事の達成感や使命感があり、居心地や待遇が良かったこともあって気づけば5年が過ぎていた。そのままコンサルティング業界で生きていく道もあったわけだが、秋田氏は2011年に独立を果たす。どういった心境の変化があったのだろう?

「子どもができたことがきっかけでしたね。初めて親になって、奥さんと子どもの将来について話し合ったんです。そのとき、周囲の意見に流されず、自分のやりたいことに向かって突き進んでいくような大人に育ってほしいと思ったんですよね。だけど、自分自身を振り返ってみると、そういう生き方をしてきたとは言えない……。実はお父さんは起業したかったんだけど、家族のために会社勤めを続けてきたんだ、というのもかっこわるいですよね。やっぱり親としては自分の背中で子どもに生き方を見せたい。そんなことを考えているうちに、自分は起業するために会社に入ったことをあらためて思い出したんです」

 普通は子どもができると安定を求めるものだろう。しかし。秋田氏の場合は、痛烈に「タイムリミット」を意識したという。

「子どもが小学校に入ると、転校の問題があるので移住も難しくなってくるし、大きくなるにつれて塾代や学費が増えて経済的な余裕がなくなりますよね。子どもが小学校に入るまでの6年の間に起業しないと、自分は一生起業できないと思って、急にタイムリミットを意識しはじめたんです。それから毎日ヤバイヤバイ……と焦りだして、だからといって事業アイデアが浮かぶわけでもない。とにかくいろんな人に相談しに行ったり、怪しげなベンチャー企業に転職しそうになったり、血迷っていた時期が1年くらいありましたね(苦笑)」

 そんなとき、友人から「プロボノ(※各分野の専門家が職業上の知識やスキルを活かして社会貢献活動をすること)」に誘われたことが転機になった。さまざまな外資系コンサルティング会社の人が集まり、途上国でのビジネス開発の活動をしていたのだ。まさに秋田氏が学生時代から求めてきた活動である。

「夜集まって活動をしていたんですけど、ハーバードやMITに留学していたような優秀な人ばかりで、みんなでNPO団体を作ろうと盛り上がっていました。みんなは会社勤めをしながら、会社ではできないことをしようという考えで、その活動でお金を稼ぐつもりはかった。だけど、僕だけは会社を辞めてそれを本業にしたかった。独立すべきか思い悩んでいたとき、メンバーの中に起業経験がある人かいて、たしかに起業には失敗したけれど、その経験が活きてまた別の会社に転職できたという話をしていました。だったらとりあえず自分も起業して、失敗したらまた別の会社に就職すればいいと思えるようになったんですよね」

 たまたまメンバーがバングラデシュに人脈を持っていたことから、秋田氏はバングラデシュに保育園を作るという子育て支援事業を計画。内閣府が実施していた起業支援の補助金制度に応募したところ、1年間で500万円の補助金が受けられることになった。当面のお金の見通しがついたことで秋田氏は奥さんを説得し、ついに念願の起業を実現。ところが……。

「さっそく現地調査に行ったんですが、思っていた以上にコストがかかり、想定よりも売上が立たないことがわかったんです。それでも事業をやろうとすると数千万円の初期投資が必要になって、黒字化するのは最短でも3~5年後という見通しでした。自己資本でやるには根本的に無理な事業計画だったんですよね……」

 3カ月で事業計画がとん挫し、再就職しなければならないのかと諦めかけた時期に、友人から「コンサルティングの仕事がとれた、人手が足りないので仕事を手伝ってほしい」と声をかけられた。とりあえずフリーランスで生計を立てるようになり、一方で、前述のプロボノの集まりが設立したNPO法人の共同創業者として、営業をはじめとする日中の業務を担当するようになった。この活動が運命的な出会いにつながっていく。

電気の「量り売り」に続き、LEDランタンのレンタルサービスを開始。
未電化地域には足りていないものが山ほどある

 社名の「デジタルグリッド」とは、東京大学の阿部力也教授が発明した電気の送配電技術の名称に由来する。既存の送配電は一方通行の流れだが、デジタルグリッド技術を使えば、インターネットのように双方向の流れが可能になるという画期的な技術である。たとえば自家発電した電気を電力会社や隣の家に送ることもできるし、電圧をコントロールすることもできる。阿部教授はこの技術を社会に役立てるために一般社団法人を設立し、会員に特許技術を無償で公開することで事業化を模索していた。たまたまNPO法人の共同創業者が阿部教授の教え子だったことから、秋田氏はコンサルティングの営業をかけることになった。

「日本でデジタルグリッド技術を使おうとすると、規制が厳しすぎてできないのが現状でした。そうすると電力会社に売り込むのが順当なんですが、膨大な数の電柱にデジタルグリッド用ルーターを設置する必要があって、莫大なコストがかかります。現実的に事業化を考えた場合、それだけの投資を行なって、どうやって儲けるのか?という根本的な部分で、誰もがノーアイデアだったんです。だったら途上国の未電化地域で事業化すればいいのではないかと提案しました。そもそも未電化地域なので電力規制もないですし、まずそうした地域でデジタルグリッド技術を事業化して、その実績をもって逆輸入というかたちで先進国に売り込みましょうと口説いたんです」

 とりあえず阿部教授と秋田氏の二人でケニアに行き、現地の電力会社の人を主な対象にプレゼンを行なうことにした。前述のとおりケニアは未電化率が76%である。

「未電化地域を電化するとなると、電柱を立てて電線を引くという莫大な初期投資がかかります。だけど都市部と違って、広大な土地に人が分散して暮らしているので、事業としてペイできない。そうした状況に対して、ケニアの電力会社にヘンリーという未電化地域の電化担当の部長がいて、太陽光発電によって地域ごとに電化していくことはできないかと考えていたわけです。そうすると電気を遠隔操作して管理する技術が必要になる。そこで彼はデジタルグリッド技術を使えば、電気のオンオフを遠隔操作できるのではないかと考えたんですね。ヘンリーから相談のメールがあって、阿部先生も大いに興味を持ったわけです」

 ソーラーパネルで発電した電気をキオスクで「量り売り」するというアイデアも、モバイルマネーで料金を徴収するというアイデアも、このヘンリーというケニア人の発案だという。現地の状況に詳しい人でなければ、こうした大胆な発想はできないだろう。

「阿部先生はさっそく会社を作ろうと盛り上がっていました。だけど僕は、バングラデシュで事業に失敗した経験があったので、むしろ阿部先生を抑えにまわっていたんです。途上国で事業を立ち上げるのは、そんなに甘いものではないからもっと詳しく調査すべきだと。そしたら阿部先生から逆にたしなめられたんです。やると決めたら諦めずに、どうすればビジネスが実現できるかを考えるのが起業家の仕事だろって(笑)」

 当初は渋々協力するような気持ちだった。しかし、阿部教授が設立したコンソーシアムには優秀な技術者がたくさんいたし、さらに東京大学エッジキャピタルというベンチャーキャピタルを紹介され、出資を受けられる可能性も出てきた。秋田氏はもう一度挑戦してみようと思い直し、単身ケニアに飛び、ヘンリーと未電化地域を視察してみることにした。

「夜になると本当に真っ暗なんです。怖かったですけど、マーケティング調査だと思って街に繰り出してみたんですね。彼らからすると真っ暗が当たり前なので、普通に出かけたりしていて、暗闇の中にラジオの音や笑い声が聴こえる。ろうそくの明かりに集まってお酒を飲んでいる人たちもいましたね。ヘンリーがLEDランタンをレンタルするというアイデアを話して、実際にLEDランタンを点けてみたんですけど、そこだけすごく明るくなって、地元の人が集まってきたんですよ。現地でそうした状況を目の当たりして、すごくインパクトのあるビジネスだと実感しましたね」

 ヘンリーのアイデアはすべて事業化されたわけだが、結局のところ、デジタルグリッド技術は採用されず、社名だけが残ることになった。たしかに先端技術が必要だったが、既存の技術を組み合わせるだけで十分に可能なことだったのだ。

「最初にパイロット版としてケニアの3カ所のキオスクでサービスを開始したんですけど、機器が壊れたり、オペレーションがわかりにくかったこともあって、思ったほど反応がよくなかったんです。これを改善して新規開拓を続けたんですが、1年かけて13店舗しか広がらなかった。そこで隣国のタンザニアで試しにやってみることにしたんです。これがいきなりケニアの売上1位の店舗の2倍ほどの売上になった。理由はいくつか考えられるんですが、所有に対する価値観の違いが大きいと思います。5千円くらいのLEDランタンを1日25円で借りられるので、お得なサービスだと思うのですが、ケニア人はなけなしのお金を払っているのに自分のものにならない、ということに納得できないらしく、レンタルビジネスが流行らない。逆にタンザニア人は、25円だったらまあいいか、という感覚なので、レンタルビジネスがフィットしたんでしょうね」

 ケニアから徹底し、タンザニアで事業展開する方針に切り替えたところ、2年たらずでキオスク800店舗という急拡大となった。いよいよ事業が軌道に乗り始めたわけだが、今後のビジョンは?

「大きく2つの軸で考えています。ひとつは未電化地域を電化するというミッションです。世界にはまだまだ未電化地域がたくさんあるので、アフリカだけでなくいずれはアジアの未電化地域でも展開していきたい。一方で、出資を受けてスタートアップとしてやっている以上、収益も考えなくてはいけません。たしかに市場全体の可能性は大きいのですが、今の段階では初期投資もかかっていますし、すぐに収益が上がるものでもない。もうひとつの軸として、800店舗のキオスクのネットワークを使って、電気以外のものを販売していきたいと考えています」

 アフリカで商品を売りたいと考える企業に、キオスクを介して買いたい人をマッチングする新たなビジネスモデルを考えているという。

「未電化地域は、どの企業もリーチできていない市場でもあります。足りてないものが他にもたくさんあるので、売ろうと思えばなんでも売れるんですよね。たとえば石鹸などの日用品も売れますし、農業用の肥料や質のいい種を売ることもできますよね。それで農業の生産量が増えて所得が上がれば、ちょっと高級なビスケットを買おうとなるかもしれない(笑)。今後はキオスクのネットワークをどんどん広げていくことで、新たな収益を生み出していきたいと考えています」

秋田智司氏を知る3つのポイント

尊敬する人/阿部力也教授(デジタルグリッドの共同創業者)

「先生と教え子のような関係でもありますし、一緒に共同創業した仲間のような関係でもあります。阿部先生はちょうど両親と同じ歳で、親子ほど年齢が離れているわけですけど、上下関係に縛られずお互いに思ったことはなんでも言い合える対等な関係が築けています。とはいえ、阿部先生からはいろんな大事なことを教わりましたね。阿部先生はもともと民間企業で働かれていた方なので、ただの研究者ではなく、事業会社の感覚を持っていて、さらに起業家マインドに溢れた研究者なんです。阿部先生はデジタルグリッド技術を使った事業を新たに立ち上げるために経営からは離れましたけど、今でもメンターとして相談に乗ってもらっています」

1年半のタンザニア移住生活

「2014年8月から1年半、妻と子どもを連れてタンザニアのダルエスサラームで生活しました。大都市なので発展していますし、家から歩いて1分のところに海があって、すごく良い所でしたね。アフリカの中でもタンザニアは比較的、治安もよく、ビルもどんどん建設されていて、これから成長していく国だということが実感できます。たとえばタンザニアに来たばかりの2014年はスマホを持っている人が少なかったのですが、今では都市部のほとんどの人が持っていたり、道路が舗装されて街がきれいになったり、空き地に商店街ができていたり、短期間でダイナミックに経済が動いていることが感じられて、すごく楽しかったですね」

モットー/動き続ければ、運もついてくる

「あらためて振り返ると、あのとき動いて本当によかったと思いますね。会社を辞めて無職になるんじゃないかと不安になったり、起業に挑戦して失敗したり、いろんな紆余曲折があったわけですけど、多くの人が親身に相談に乗ってくれたり、阿部先生と出会えたり、ヘンリーがアイデアを提案してくれたり、僕はたまたまラッキーだったと思います。でも、そういう“運”は、自分が動き続けているからこそ、めぐってくるものだとも思います。悩んだり考え込んだりしながらも一歩踏み出さないと何も始まらないし、100回失敗したら1回は成功するかもしれない。もう一回、同じことをやれと言われたらイヤですけど、自分がやりたかったことが実現できているので、今は幸せだなって思いますね(笑)」

取材・文●大寺 明  写真●松隈 健

アフリカで新たな事業にチャレンジ!
デジタルグリッドが人材募集

2017年現在、デジタルグリッドは日本人10名(うちタンザニア駐在4名)、
タンザニア人約80名、セネガル人1名で事業を実施しています。
【運営資金】
これまで東京大学エッジキャピタル・日本政策投資銀行・JICA(国際協力機構)
などから合計で約12億円の出資を受けています。

●新規事業担当者を募集
キオスクのネットワークを活用して、新しい事業を複数立ち上げていきたいと思っています。
事業の計画・調査・実行を担う人材を募集中です。

※詳しくは、デジタルグリッドの採用ページをご覧ください。