ルールチェンジの時代が来ている。マンガ業界のビジネスモデルを変えていくには?㈱コルク・佐渡島庸平インタビュー

株式会社コルク代表取締役社長佐渡島庸平
株式会社コルク(http://corkagency.com/company) 代表取締役社長・佐渡島庸平(さどしま・ようへい) 1979年生まれ。幼少期を東京と関西で過ごし、中学時代は南アフリカ共和国で過ごす。灘高校から東京大学文学部に進学し、卒業後の2002年に講談社に入社。週刊『モーニング』編集部で『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)の担当を務め、『宇宙兄弟』(小山宙哉)では累計1400万部を超え、テレビアニメ化・実写映画化を実現。マンガ以外にも伊坂幸太郎『モダンタイムス』や『16歳の教科書』の編集を担当。2012年に講談社を退社し、作家エージェント会社・コルクを設立。

制度疲労を起こした出版業界の仕組みを変えるべく、世界標準の作家エージェント会社を設立

 今や日本のマンガは世界的に高く評価され、政府も「クールジャパン戦略」を打ち出すなど、日本のコンテンツ産業がより一層、海外に進出していくことが期待されている。フランスを中心とした一部の国には、日本のコミックを中心とした専門ショップがあり、日本の書店と遜色ない品ぞろえだ。しかし、株式会社コルク代表の佐渡島庸平氏によれば、「マンガの海外市場は海外出版社の注文に応えるかたちで発展してきたもの」だという。日本の出版社が世界戦略を立てて海外に売り込んでいったわけではないのだ。

 講談社の週刊『モーニング』編集部に在籍し、三田紀房の『ドラゴン桜』や小山宙哉の『宇宙兄弟』など数々のヒット作を手がけてきた佐渡島庸平氏は2012年に独立し、コルクを起業した。事業内容は「作家のエージェント」であり、マンガの海外進出を一つの柱としている。膨大なコンテンツと資金力、人材を持つ講談社という大組織の中で行動した方が目的達成への近道なのではないかと考えがちだが、佐渡島氏は即断即決のスピードを重視し、起業へと踏み切った。

140820_sab2「僕が講談社時代に持っていた問題意識が、日本ではヒットした『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』がほとんど海外で読まれていないということでした。僕の中では海外の人でも楽しめる作品として一生懸命作ったつもりだったんですが、ぜんぜん届かなかった。世間では、『日本のコンテンツは海外で読まれている』と思われていますが、実際はそれぞれの作品が日本ほど影響力を持って読まれているわけではありません。国内市場でも面白い作品を作れば自然と売れるかというとそんなことはなく、どの書店に置いてもらうかといった取り組みを一生懸命やらないと売れるわけではない。海外で日本のマンガが読まれるための仕組み作りがうまく出来ていないんです」

 もちろん大手の出版社であれば、マンガの海外展開を視野に入れているだろう。ただし、ソニーやトヨタが海外進出する際に要した努力には遠くおよばないというのが佐渡島氏の実感だ。

「海外では作家にエージェントが付く仕組みになっているのに、日本だけはそれがないんです。出版社は雑誌というメディアを持っていて、それを管理するのが編集者です。そうすると、作家のことを大切に思っていても、最終的にはメディアを優先させる行動をとるわけです。メディアにとってはいろいろな作家の人が描いてくれる方が、メディアが活発になっていい。でも、作家側からしてみれば、入れ替わりはしんどいですよね。メディアの立場で考える人と、作家側の立場で考える人、両方のサイドにビジネスマンがいる方が、業界は健全に発達すると思ったんです」

 現在の出版社と作家の関係を佐渡島氏は吉本興業と芸人の関係になぞらえて説明してくれた。出版社における「本・雑誌」は、吉本興業では「舞台」に当てはまる。

「たとえば吉本興業が舞台を最優先させていたとしたら、芸人さんのスケジュールを舞台で埋めて、ちょっと空いたときにテレビ出演を入れますよね。昔は芸人さんを舞台に出すことが一番のことだったのでそれでよかったわけですが、テレビの方が優先度が高い時代になり、吉本興業はうまく舞台からテレビへと移行していくことで芸人さんの地位を築いていったわけです。吉本興業における舞台と同様に、出版社にとっては本や雑誌が最優先すべき圧倒的なメディアでした。本を出版することが主体のため、作家を別のメディアへと連れていこうとはしないんです。しかし、今は雑誌の立場そのものが変わってきている」

 芸人の世界が舞台からより視聴者の多いテレビへと移行したのに対し、出版の世界では雑誌や本の次のステージが見つかっていない。ネット連載や電子書籍がそれに該当するのかもしれないが、「芸人にとってのテレビのような素晴らしい場所ではないかもしれない」と佐渡島氏は考えている。

「これまで出版社の仕組みがずっと安定していたので、新人を育成したり、文芸誌を出したり、文化を保つ仕組みが可能になっていました。出版社の創業者たちはあまり利益ばかりを追求する人たちではなかったので、利益を新人作家に回したり、いろんなかたちでクリエイター寄りのことをやっていました。また、そうすることでビジネスが上手くいっていたわけです。それが出来なくなってきているのは、出版社が良心的でなくなったからではなく、戦後に出来たすべての企業で起きている制度疲労の問題だと思います。家電メーカー業界が顕著ですが、だいたい50年持たずに組織は制度疲労を起こします。しかし、日本の出版業界は最初に作ったビジネスモデルが世界的に見ても優れたものだったので、様々な変化を前にしても100年近く制度疲労を起こさなかったんです」

 出版業界の構造が変わらざるをえなくなった要因が、やはりインターネットの登場だ。さまざまな出版社がネット媒体に手を付けているが、新たなビジネスモデルとして大きな収益を生み出すまでには至っていない。むしろ、出版社や書店の存在意義が問われる時代状況を感じさせるばかりだ。

「これまで出版社は、ほぼ100%のかたちで書店という出口を確保していました。作家が表現したければ、出版社を使わない限り、読者に辿り着けなかったわけです。しかし、ネットの登場によって出版社を使わなくてもそれが可能になった。まだ出版社においてネットの売上は全体の5~10%くらいですが、出版社が抱えている制度疲労の問題を顕在化させているんです」

ルールチェンジが起きようとしている。出版社側でもIT側ではなく、作家側に立って考えてゆく

 制度疲労を起こしていれば直さなければいけない。これは組織の側に立ったときの考えだ。作家のように組織の外にいる人にとっては、別のところでまったく新しい制度が出来た方がいい。この役割を担い、業界に新風を巻き起こすことがコルクの目的となっている。

140820_sab3「やはり新しいことをやろうとなると、誰が決断するかを明確にしないと、しんどいわけですよね。出版社の人間がこれまで決断する必要があったのは、すべて面白さについてだったんです。ビジネスモデルについては100年間変化がなかったので、ビジネスに関する決定権を持つ人が存在しません。だから平社員だった僕が新たなビジネスモデルを提案しても、決定するフェーズには行かず、ぐるぐるたらい回しになるだけでした。会議が多いからではなく、決定権者がいない仕組みだからです。既存の仕組みの中での決済であれば、広告費に1億円使いたいのであれば、誰の決済が必要だということはわかっているんですが、新しいビジネスモデルについての決済は取れない」

 佐渡島氏は名編集者というだけでなく、ビジネス感覚に優れたアイデアマンでもある。自らが経営者になれば、決断も行動も早く、どんどんトライ&エラーの検証をしていけるというわけだ。

「今はすごく躍動的な時代で、ルールチェンジが起きようとしている。そうした変化が起きる時代はあまりなくて、たとえば第二次世界大戦によるルールチェンジは、明治時代以降のマイナーチェンジなんです。日本で本当のルールチェンジが起きたのは、まず江戸幕府が出来た1600年、その次が明治維新の1867年であり、その後が今だと考えているんです」

 その背景となっているのがやはりインターネットだ。しかし、ネットはすでに90年代から普及しているが?

「インターネットはずっとインフラだったんです。それが完備されて、次はそれを使ってルール作りをするフェーズへと突入しました。僕はインターネットをよく道に例えるんですが、初期の頃は道が敷かれたという感じで、信号もなくすぐに渋滞した。そこへYahoo!がカテゴリ検索をやりだして便利になった。これは信号が出来たみたいのものですが、すぐにどん詰まりを起こしてしまった。このとき多くの人が『インターネットは終わった』と言っていたわけですが、Googleが新しい検索システムを発明して、今度は高速道路が出来て渋滞が起きなくなった。それによって様々なことが可能になったわけですが、『結局、ネットにはクズみたいなコンテンツしかないよね』と言われていた。そこへ今度はFacebookやtwitterが現れて、シェアが出来る仕組みが完成した。重要なコンテンツへのテレポーテーションみたいなことが可能になったわけですが、じゃあ重要なものって何があるんだっけ?と考えてみると、まだないと思っているんです」

 YouTubeや電子書籍のコンテンツがあるではないか。そう考える人もいるだろう。しかし、佐渡島氏はYouTubeはテレビの置き換えであり、電子書籍も本の置き換えであり、本来的にインターネット的なコンテンツはまだ現われていないと考えている。今はそれが作られていくフェーズにあり、それに合わせてルールも変わっていくと考えているのだ。

「たとえば出版における著者の印税はだいたい10%です。これは著者が読者と結びつくための手数料が、今の世の中では90%かかるという見方もできる。これが電子書籍になると、著者の印税は15~20%です。しかし、他方ではアップルやグーグルを経由して、ユーザーと直につながろうとすると、30%の手数料で70%が制作サイドの取り分となるわけです。コンテンツディスカバリーの問題はありますが、STORESやBASEのようなネットショップ作成サイトを使えば、3~5%の手数料で外部の人と交わることも出来てしまう。決済手数料という仕組みからすべて変わりつつあるんです」

「コルク」という社名は、ワインを世界中に運び、後世に残すためには「上質なコルクで栓をすることが必要である」という意味を込めて名づけられたものだが、起業から2年を経て、佐渡島氏はワインのそもそもの値段に目を向けている。

「ワインは“いつ誰がどこで作った”という中身によって値段が変わり、ボトルの形で決まるわけではありませんよね。しかし、マンガや小説、音楽というコンテンツは中身によって値段が変わるわけではない。たとえば音楽であれば、何分間収録されているかで値段が変わり、本であれば装丁や部数によって値段が決まってくる。新人の作品も大ベテランの作品も一緒で中身による値段の差がないわけです。コンテンツというのは中身が重要なのに、値段がすべて外側の要因でつけられている。ルールチェンジの大きな変化のとき、コンテンツの中身によって値段をつける仕組みへと変えることが出来るタイミングかもしれないと考えているんです」

 これは、なんでも値段を高くするという意味ではなく、新人の作品は逆に安く販売するなど、それぞれに適正価格をつけていこうという考えだ。

「今、ネット業界を仕切っているのは、アップルでありグーグルであり、アマゾンといったIT側の人たちです。彼らにしてみれば、IT的なことがコンテンツの値段を決める一番の条件であり、ITの仕組みを便利にして、どうやってスケールアップするかといったことだけが重要なんです。だから、どうすればリッチなコンテンツが継続的に生まれるかといったことを最優先に考えていないわけです。コルクはコンテンツによるスタートアップを試みるベンチャーと位置付けているんですが、それは世界的に見ても稀だと思ってます。それが、起業後にやりがいがあるところだと思うようになりましたね」

 優れたコンテンツを作るには、お金も時間も相応にかかるのが当然だ。商売としてただ高く売ることを目的としているのではなく、佐渡島氏は売上が確保できる仕組みを作ることで、作家の制作環境を持続的なものにしたいと考えている。

本を読む行為は、心に変化が起きる“経験”。モノとは違うコンテンツの売り方を見つけていくこと

 佐渡島氏はマンガ編集と作家エージェントだけでなく、AR三兄弟とトルクという会社を作り、テレビ朝日の番組と連動した東京上級ゲームを開発するなど、新たな取り組みに挑んでいる。そうした試みの中でも、今後、コルクの新たな柱となっていきそうな事業が、作家とファンを結びつける個人サイトの仕組み作りだ。

140820_sab1「起業した頃は、作家の個人サイトがないから作ろうか、くらいの感覚だったんです。でも今は、サイトの中でどう工夫してファンを獲得していくか、作家とファンがネット上で満足のいくコミュニケーションをとるには?といった新たな課題が出てきて、その答えを探すために努力するフェーズに来ているんです。僕らがやろうとしていることは、コンテンツを作ることだけでなく、ファンとのコミュニケーションビジネスだと考えるようになっていきましたね」

 佐渡島氏はミュージシャンを例にファンとのコミュニケーションビジネスを説明してくれた。ミュージシャンのファンには路上ライブの頃から追いかけている人もいれば、にわかファンもいる。ファンがピラミッド構造になっており、上位のファン層が成長を支える。しかし、出版社の発想にファンの濃淡はない。5千部売れたとしたら、すべてのファンが5千分の1にすぎないのだ。

「アニメ化もされた『宇宙兄弟』ですが、普通のお店ではグッズがぜんぜん売れなかったんです。でも、あるイベントを開催したときは飛ぶように売れた。集まってくれたのは『宇宙兄弟』の熱心なファンですから、グッズを買うんですよね。超有名なアーティストでも同様で、ライブ会場ではグッズが飛ぶように売れるわけですが、同じグッズをコンビニで販売しても売れないですよね。モノっていうのは、モノだけに価値があるわけではなく、“いつどこでどう売るか”が重要です。作家の個人サイトには熱心なファンが集まっているので、作家がこうしたこだわりで作ったと説明して、1カ月限定の再生産なしで売り出せば売れるかもしれない。海外にコンテンツを持っていくにしても同様で、いいコンテンツであれば自然に売れるわけではなく、“いつどこでどう売るか”という仕組み作りが重要です」

 これまで佐渡島氏が数々のヒット作を生み出してきた背景には、売り方を工夫してきたという理由がある。たとえば、落ちこぼれの高校生たちが東大進学を目指すというストーリーの『ドラゴン桜』では、教育に関心を持つ親御さんという一般的なマンガ読者とは別の層にアプローチした。こうした発想は、今ある状況をじっくり観察することから生まれるという。

「今の状況が思い通りであれば観察する必要はないんですけど、自分がこうあって欲しいと思っている状況と違っていた場合、なぜ違うのかをじっくり観察するんです。そうすると、ここが問題じゃないか、というポイントがわかってくる。それが10個くらい同時に出てきたら手のつけようもないですけど、3つか4つだったら、ここをイジれば変化が起きるかもしれないと試すことが出来る。でも、大きな会社にいる場合は、それを試そうとしても承認が必要だったりして、結果がわからないことはなかなか出来ないものなんです。世の中を変えるようなことは、成功するかどうかわからなくて挑戦しているものであって、成功することがわかっていたら、みんなすでにやってますよね(笑)」

 講談社時代の佐渡島氏は、決められた枠の中であっても常に最大限のパフォーマンスを発揮してきた。仕事で一番大事なことは“結果を出すこと”だと考えているという。そして今は、出版業界に革新をもたらすようなビジネスモデルに挑んでいる。そのモチベーションとはどういったものだろう?

「講談社時代は、その都度やりたいと思っていることの規模が違っていました。『ドラゴン桜』のときは、まだ一回もヒットを出したことがない新人編集者だったので、自分が立ち上げた作品でヒットを出したいという思いがあった。三田紀房さんはベテラン作家なので、今度は新人作家とヒットを出したいと思うようになって、次に小山宙哉さんと『宇宙兄弟』を作ったわけです。マンガの次は小説でやりたいと思うようになって、伊坂幸太郎さんと『モダンタイム』を作ったり、今度は新書でやりたいと考えて『16歳の教科書』を作っていきました。その都度、自分で課題を見つけて挑戦してきたわけですが、それらはすべて成功した前例がある中で、自分が手がけた作品の場合はどうやったらヒットを出せるだろう?という亜流をやっていただけなんですね」

 立て続けにヒット作を手がける名編集者は他にもいる。やがて佐渡島氏の課題は、前述のように「コンテンツを海外規模にすること」へと移り変わっていった。それをさらに突き詰めて考えていくうちに、「出版業界のビジネスモデルを更新すること」というより大きな課題が現れた。まだ明快な答えは見つかっていないが、方向性は見えはじめているという。

「インターネットは“早く安く便利に”を追求してきたものです。でも、普段の生活の中で自分がお金を払っているものがどういったものかというかと、3、4時間かけて食事をするレストランだったりする。フジロックに行く人も、わざわざ苗場まで行ってビールを飲みながらダラダラ音楽を聴くことに価値を見出しているわけじゃないですか。これが“早く安く便利に”という感覚だと、家の中でキンキンに冷えたビールを飲みながらヘッドフォンで音楽を聴いていた方がいいわけですよね。だけど、みんなそうじゃない行動を求める。人間の幸せというのは、“早く安く便利に”ではないんですよ。インターネットは人間をサポートするかたちで“早く安く便利に”を追求してきたけれども、それはコンテンツには不向きなんです。コンテンツは自分が好きなものであれば、それなりの値段を払った方が嬉しかったりする。だから、“遅く高く限定的に”というのも十分ありえることだと考えています」

 マンガや小説もまた然り。ネットの世界では、何万点のコンテンツを揃えたとアピールし、セールスや無料で読めるといったことで客寄せをするが、それは、コンテンツをモノとして扱う考え方だ。

「最近よく“モノからコトへ”と言われますが、僕はたしかにその通りだと思っていて、本を読むという行為は、それによって心の変化が起きるわけですから、経験を買っているということなんです。コンテンツを大きく分けると、時間潰しのものと、人の人生を変えるほどの経験を与えてくれるものがある。人の人生を変えるようなコンテンツを作っている場合は、それに相応しい価格設定と、ユーザーがその値段を払う仕組みを作っていくべきだと考えているんです。吉本興業における舞台からテレビへの移行のような変化が偶然現われてくれれば、僕が何かをしようとする必要もないのですが、別の可能性を模索しようとするベンチャーが世の中に存在しないので、僕がやろうとしているということなんです」

佐渡島庸平氏を知る3つのこと

座右の書

『儚い光』 アンマイクルズ/著 黒川敏行/翻訳(早川書房)
「文章の美しさと内容が僕の中でベストですね。大学時代に読んで、それから折あるごとに読み返して、もっとも読んでいる本です」
【内容】ナチスの殺戮を逃れた7歳の少年ヤーコプは、ギリシャ人地質学者アトスに救われ、二人はアトスの故郷の島へと逃げることに。家族を虐殺され、心に深い傷を負ったヤーコプは、アトスに授けられた学問に救いを見出すようになる。オレンジ小説賞ほか10の賞を受賞したカナダのベストセラー小説。

学生時代

「自分が会社の社長をやるなんて考えたこともなかったですね。親が普通のサラリーマンだったんですが、普通のサラリーマンになるのも嫌で、大学で文学研究者になろうと思っていたんです。税金で自分が好きな本を読んで食わせてもらえるなんて、なんていい職業なんだと(笑)。編集者になってからもやっていることは一緒だと思いますよ。作品をじっくり読む、という行為は同じで、それを観察してアウトプットする。その対象をすごく狭めると、文学研究者になるだろうし、もうちょっと広げるとマンガ編集者になるし、さらに広げると経営者になる。世の中を観察してアウトプットを出すという行為に関しては、すべて同じです」

編集者としての「ものさし」

「作品を読んでどれくらい自分の心が震えたかです。あとは、世の中の価値観と僕の価値観にギャップがあるときは、自分の時間を懸けるに値すると思ってます。世の中ですでに評価されているものに自分の人生を賭けてもあまり意味はないと思っているところがある。たとえば、三田紀房さんの『クロカン』を読んだとき、これまで読んだ野球マンガの中で一番面白いと思った。でも、売れてなかったんです。売り方が悪かったんじゃないか? タイミングや運が悪かったんじゃないか?と考えて、三田紀房さんの作品を『売りたい』と思ったんです。また、自分の中で基準が出来たのは、入社1年目で井上雄彦さんや安野モヨコさんを担当し、“100万部売れる作家”がどんな人なのかを知ることができて、自分の中でものさしが持てたことが大きい。そうした経験があったから、新人だった小山宙哉さんに同じ素質を感じることが出来た。だからこそ、100万部売れるまで僕が一緒に仕事をしたいと思ったし、それが自分の仕事だと思えたんです」

コルクが編集する話題の2作

『インベスターZ』
三田紀房
講談社モーニングKC (既刊4巻)

創立130年の超進学校「道塾学園」には、各学年の成績トップ6名のみが参加を許される「投資部」が存在した。彼らの使命は3000億円を運用して8%以上の利回りを生み出し、学園の運営資金とすること。トップで合格した財前孝史は、投資の鉄則を叩き込まれてゆく。

『テンプリズム』
曽田正人/著、瑞木奏加/企画・原案
小学館ビッグC(1巻は8月29日発売)

『capeta』『昴』の曽田正人が初のファンタジーに挑む!未知なる技術を手に入れた強国「骨の国」によって世界は恐怖に飲み込まれた。旧カラン王国復興の願いを託された王子・ツナシの右眼には、伝説の秘力が宿っているという。「光の剣士」として封印が解かれたツナシは「骨の国」打倒に立ち上がる!

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取材・文●大寺 明